回答者の7割以上が更年期症状の緩和に大麻が「役立っている」と報告

回答者の7割以上が更年期症状の緩和に大麻が「役立っている」と報告

- カナダの観察研究

6月21日、カナダ在住の女性が更年期症状の緩和に大麻を役立てていたことがカナダの研究者らにより報告されました。論文は「BMJ Open」に掲載されています。

更年期障害とは、加齢に伴い女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が減少し、ホットフラッシュ(のぼせやほてり感、発汗など)や手足の冷え、動悸などの自律神経症状や、イライラ、抑うつ不安睡眠障害などの精神症状、それ以外にも関節痛疲労感など多様な症状が認められる症候群です。

このうちのいくつかの症状は大麻で緩和されることがあり、そのことから大麻が合法となっている地域では、更年期障害に対するセルフメディケーションとして大麻を活用する女性が増えつつあります。

しかし、2021年に公開されたシステマティックレビューカナダ産婦人科学会のガイドラインでも述べられているように、更年期障害に対する大麻の有効性は現時点でほとんどエビデンスがありません。

カナダ・アルバータ州で行われた横断的研究

そこでカナダのアルバータ大学(University of Alberta)の研究チームは、今後の研究につなげることを目的とし、アルバータ州に住む35歳以上の女性を対象としたオンライン調査を実施。

有効回答者数は1,485名(年齢中央値:49歳)で、18.3%が閉経前期(閉経以前の時期)、35.2%が閉経後期(閉経以後の時期)、32.7%が閉経周辺期(閉経前後の数年間)となっていました(それ以外はその他)。

最も多く報告された更年期症状は睡眠障害(65.3%)で、次いで集中困難・ブレインフォグ(49.2%)、不安(48.8%)、性欲低下(46.5%)、イライラ(46.2%)、筋肉や関節の痛み(43%)、寝汗(41.1%)、ホットフラッシュ(38.2%)など。

9.6%がホルモン補充療法、7.1%が混合ホルモン剤(ピル)、20.2%が抗うつ薬による治療を受けていました。

7割以上が更年期症状に大麻が「役立っている」と回答

1,485名のうち、33.6%が現在の大麻使用(過去30日以内の使用)、32.3%が過去の大麻使用を報告。

現在の大麻使用者は非使用者と比べ、たばこの喫煙歴があり、健康状態が悪く、より多くの更年期症状を経験し、自然健康製品を使用し、認知行動療法や瞑想・マインドフルネスに参加している傾向がありました。

現在の大麻使用者のうち、23.8%が嗜好目的、33.9%が医療目的、41.1%が嗜好・医療両方の目的で大麻を使用しており、医療従事者から処方されたのは22.6%のみ。

1年以上大麻を使用している人の割合は60%を越えており、42.6%が毎日、33.1%が必要時にのみ大麻を使用。大麻の摂取方法はエディブルが最も多く(51.7%)、次いでオイル(47.3%)、喫煙(41.1%)となっていました。

最も好まれた大麻製品はTHCCBDが同比率の製品(57.9%)で、36.1%がTHC主体の製品、34.7%がCBD主体の製品を使用していました。

大麻の使用により管理しようとした更年期症状として最も多かったのは睡眠障害(65.1%)で、他にも不安(45.3%)、筋肉や関節の痛み(33.3%)、イライラ(28.5%)、抑うつ(24.8%)などが挙げられ、73.5%がこれらの症状の緩和に大麻が「役立っている」と回答しました。

医療目的での大麻使用に対する関心

カナダで大麻が合法となっている今、今後医療目的で大麻を使用すると回答したのは全体の37.6%で、38.7%が更年期症状のために大麻を使用することに関心があると回答。

更年期症状に対する大麻使用について学びたいと考えている人は51.4%で、具体的に知りたい内容として適応症(65.1%)、カンナビノイドの比率や大麻の品種(47%)、薬との相互作用(41.8%)、使用量(41%)、副作用(37.3%)などが挙げられました。

大麻に関する情報源としてはインターネット(46.3%)、友達や家族(34.1%)などが多く挙げられましたが、ほとんどの人が内科医(50.2%)、医療用大麻クリニック(48.6%)、薬剤師(40.2%)などの医療従事者から情報を得たいと考えていました。

研究者らはこの研究について「私たちの知る限り、これは35歳以上の一般女性集団における大麻の使用と認識を直接調査した最大の研究」と述べています。そして研究の結果、多くの女性が更年期障害のために大麻を使用し、効果を実感していたことが明らかにされました。

しかし、今回の結果は予備的なものであり、医療従事者が医療目的での大麻使用を希望する女性に十分な情報を提供し、意思決定できるよう支援するために、今後もさらなる研究が必要であるとしています。

閉経前後の時期にある女性258名を調査したアメリカの研究では、92%が大麻の使用経験を報告し、このうち78.7%が更年期障害の症状緩和のために大麻を使用していたと回答。具体的な症状として多かったのは睡眠障害(67.4%)、抑うつ・不安(46.1%)、性欲低下(30.4%)であり、「更年期障害に対する大麻やカンナビノイドの今後の研究に関心があるか?」という問いに対し、78.5%が「YES」と回答しています。

更年期障害に限らず、女性の大麻使用率は近年上昇傾向にあり、様々な用途で活用されています。

カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の研究チームは、慢性骨盤痛を有する女性135名を調査した結果、57%が大麻を使用しており、痛み、精神面、QOLなど様々な面でポジティブな効果を得ていたことを報告

子宮内膜症の女性を対象としたカナダの調査では、大麻の使用により骨盤痛、胃腸障害、けいれん、吐き気、抑うつなどの症状が改善されたことが報告されています。

今年の国際女性デーに公開されたアメリカの調査では、回答者1,021名のうち37%が大麻の使用を報告。使用理由として、不安の解消(60%)、睡眠の補助(58%)、痛みの緩和(53%)などが挙げられました。

またアメリカには、母親の大麻使用に対する偏見をなくそうと奮闘している「大麻ママ」たちが存在しており、彼女たちは「大麻を吸うママは、アルコールと同様に普通であるべき」と主張しています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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