厚労省、大麻成分CBDを用いた医薬品「エピディオレックス」を希少疾病用医薬品に指定

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4月26日、厚生労働省の専門部会がCBD医薬品「エピディオレックス」を希少疾病用医薬品に指定したと日本経済新聞が報じました。大麻草由来の医薬品が承認されるのは、これが国内初となります。

1mlあたり100mgのCBDを含むエピディオレックスは現在、欧米諸国などで抗てんかん薬として用いられています。その適応は一部の難治性てんかんのみに限られており、具体的には、乳児重症ミオクロニーてんかん(ドラベ症候群)、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症に起因するてんかんの3種類のみに施用されています。

希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)とは、対象患者が5万人未満であり、医療上必要性が高いと判断された医薬品のこと。希少疾病用医薬品の指定はただちに製造販売承認に結びつけるものではありませんが、開発のために助成金の交付を得られたり、医薬品医療機器総合機構(PMDA)から優先的に承認審査を受けられるなど、様々な優遇措置を受けることを可能にします。

日本ではすでに2022年末より、エピディオレックスを用いた治験が開始されています。これについて、聖マリアンナ医科大学病院の脳外科医であり、日本臨床カンナビノイド学会の理事長も務める太組一朗氏は2023年11月の衆議院厚生労働委員会で、「順調に進んでおります」とコメントしています。

今回の厚生労働省の動きは、2023年12月に可決された「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案」に基づいたものとなります。同法では、大麻草の成分を抽出して製造された医薬品を医療用麻薬として施用することが認められています。

同法の施行は法律の公布から1年以内とされており、まだ施行に至っていません。同法が施行されれば、薬事承認が得られ次第、日本でもエピディオレックスの施用が可能となります。

CBD医薬品「エピディオレックス」は抗てんかん薬だけではなく、他にも様々な医療効果が期待されており、今後適応症が拡大される可能性があります。

例えば、エピディオレックスは「抗精神病薬」としての可能性も有しており、現在イギリスのオックスフォード大学主導のもとで、1000名の患者を対象とした国際的な治験が行われています

また、アメリカの研究チームは最近、エピディオレックスが急性歯痛に対しオピオイドと同等の鎮痛効果を示したことを報告しています

なお、大麻草由来の医薬品には他にも精神活性成分THCを含有するサティベックス(ナビキシモルス)や、合成THC製剤であるセサメット(ナビロン)、マリノール(ドロナビノール)なども存在します。

2023年11月に開催されたイベント「CBDジャーニー&カナコン」のシンポジウムにおいて、公明党の秋野浩三参議院議員を始めとした有識者らは、このようなTHCを含有した大麻医薬品に関しても、今後治験を経て利用できるようになる可能性があると述べています。

日本経済新聞「CBDを希少病医薬品に指定 大麻草由来で国内初」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA263TH0W4A420C2000000/

厚生労働省「希少疾病用医薬品・希少疾病用医療機器・希少疾病用再生医療等製品の指定制度の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000068484.html

朝日新聞デジタル「大麻由来のてんかん薬、治験で国内初投与 解禁へ法改正の動きも」https://www.asahi.com/articles/ASQDH3V93QDHUTFL00K.html

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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