統合失調症のイラスト

統合失調症

統合失調症とCBD・医療用大麻

統合失調症という病気をどこまでご存知でしょうか?

幻覚や妄想に悩まされる精神疾患と考えている人がおそらく多いのではないかと思います。もちろんそれで正解ですが、他にも様々な症状や弊害、薬の副作用などに悩まされている人も大勢います。

そんな統合失調症に対し、CBD(カンナビジオール)が有効である可能性がわかってきています。

今回は統合失調症に関する基礎知識とCBDの治療効果についてお話していきます。そして統合失調症と大麻の関係についても触れていきます。

目次

統合失調症とは

統合失調症とは、陽性症状、陰性症状、認知機能障害を主症状とした、慢性の精神疾患です。

人口の約1%に発病します。10〜30代(特に思春期)が多いですが、40代になってから発症することもあります。

統合失調症の症状

陽性症状、陰性症状、認知機能障害が主な症状となります。
これらの症状は前頭葉、側頭葉の機能障害によって起こると考えられています。

※前頭葉とは

大脳皮質にある4つのエリアのうちの1つで、運動、発語、思考、創造性、社会性といった機能にかかわる。中でも前頭前野は人が人であるために必要な部分で、障害されると意欲低下、思考力や判断力の低下、易興奮性、他者ヘの興味関心の低下、人格の変化などが認められる。

※側頭葉とは

大脳皮質にある4つのエリアのうちの1つで、主に聴覚にかかわる。音を認識し、何の音かを判断する機能を持つ。他にも、見たものが何なのかを認識したり、言葉の意味を理解したり、記憶にも関連する。障害されると幻聴がみられたり、見聞きしたもの・言葉が理解できなくなる。

陽性症状

健康な時にはないはずのものが現れる症状です。

幻聴・幻覚

現実には聞こえないはずの声や音が聞こえたり、見えないはずのものが見えたりします。自分の行動を実況中継する声や悪口が聞こえることが多く、不安や恐怖を感じ、行動にも現れてきます。周囲の人には聞こえなくても(見えなくても)、本人にとっては実在のものに感じています。

妄想

妄想とは、事実ではない誤った確信をいいます。たとえ周囲の人が誤りを指摘しても、なかなか受け入れることができません。

統合失調症にみられる妄想には様々な種類があります。

①被害妄想

他人から危害を加えられたり、嫌がらせを受けると思いこむ妄想。

・被毒妄想(飲食物や薬に毒をもられていると思いこむ)
・関係妄想(周囲から聞こえる声や音が、自分を中傷するものに聞こえる)
・注察妄想(誰かに見張られていると思いこむ)
・嫉妬妄想(夫や妻が浮気をしていると思いこむ)
・物とられ妄想(財布をとられたと思いこむ) など

②誇大妄想

自分を過大評価する妄想。

・血統妄想(天皇の血統であると思いこむ)
・恋愛妄想(特定の人に愛されていると思いこむ)
・発明妄想(世界的な発明をしたと思いこむ)
・宗教妄想(自分は神の生まれ変わりだと思いこむ) など

③被影響妄想

外から支配されたり、干渉されるという妄想。

・憑依妄想(何かにとりつかれ、操られていると思いこむ)
・変身妄想(他の何かに変身してしまうと思いこむ) など

思考障害

主に考えがまとまらないことが多いです。

外から考えが入ってくる、嫌なことを考えさせられる、自分の考えを広められてしまうと感じるといった症状もよくみられます。

陰性症状

健康な時にはあるはずの能力が低下したり、なくなったりする症状です。

意欲低下、注意力低下、喜怒哀楽がなくなる、感覚が鈍る、寝てばかりで外に出る気力がなくなる、身だしなみがだらしなくなるなどの症状がみられます。

認知機能低下

言われたことが頭に入らない、集中力が続かない、優先順位をつけられない、計画を立てられないなどの症状が認められます。

統合失調症の原因

はじめに精神病と言いましたが、統合失調症は脳神経の病気と考えられています。

統合失調症の症状が現れる原因としては、ドーパミン、セロトニン、グルタミン酸といった神経伝達物質のバランス異常が関係していると言われています。現在主力となっているのはドーパミン過剰説で、中脳辺縁系におけるドーパミンの量が過剰になることで陽性症状がみられると言われています。

なぜバランスが崩れるのかは不明ですが、元々統合失調症を発症しやすい遺伝的要因(脆弱性)を持った人が、強いストレスにさらされることにより発症すると考えられています。

統合失調症とドーパミン

脳内の主要なドーパミン経路は4つあります。

ドーパミン過剰説について触れましたが、統合失調症ではこの4つの経路すべてにおいてドーパミンが過剰になっているというわけではありません。

①中脳辺縁系

ドーパミン量が過剰となり、陽性症状がみられます。

②中脳皮質系

ドーパミン量は減少し、陰性症状や認知機能低下といった症状がみられると考えられています。

③黒質線条体系

ドーパミン量に変化はみられません。ですが、抗精神病薬によりドーパミン受容体が過度に遮断されると、錐体外路症状が認められます(詳しくは後述)。

④漏斗下垂体系

ドーパミン量に変化はみられません。抗精神病薬の影響によりドーパミン受容体が過剰に遮断されると、高プロラクチン血症がみられます(詳しくは後述)。

統合失調症の経過

前兆期→急性期→休息期→回復期といった経過をたどります。

前兆期

発症や再発の前兆がみられる時期です。

物音に対して敏感になる、不眠、気分が落ち着かない、集中できない、漫然とした不安、なんとなく体調が悪い、食欲がわかないなどの症状がみられます。

急性期

症状が最も強くでる時期で、陽性症状が多くみられます。幻聴や妄想、独り言、独りで笑う、混乱、興奮といった症状や、逆に周囲の刺激にまったく反応を示さない昏迷といった症状がみられることもあります。

本人は自分が病気だと自覚することができず、周囲からおかしいと思われるような行動をとることもあります。

これらの症状に伴い、心身ともに活動エネルギーの消費が多くなります。

この時期は、休息と薬物療法による治療を行っていきます。

休息期

急性期の活動エネルギーの消費が影響し、疲れきっている時期です。陰性症状が多くみられます。

だるい、意欲がわかない、眠気が強い、喜怒哀楽がない、思考力の低下、コミュニケーションがとれないなどの症状がみられます。

薬物療法を継続しながら、十分に休息をとる必要があります。

徐々に回復してくるため、焦らないことが大切です。

本人の状況に応じて、リハビリテーションを開始することもあります。

回復期(慢性期)

徐々にゆとりがでてきて、周囲にも関心を示すようになる時期です。

社会復帰に向け、リハビリテーションやからだづくりを行っていきます。

再発予防のため、薬物療法は継続します。

20〜30%の患者で病気のコントロールは良好となりますが、40〜50%は社会復帰はするものの症状は残り、20〜30%では生活水準の低下が著しくなり、社会復帰が困難になると言われています。

統合失調症の診断

観察および問診により診断されます。診断基準として主にDSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル)、ICD-10(国際疾病分類)が用いられます。

DSM-5の一部のみ抜粋

以下のうち2つ以上の症状がほとんどいつも1ヶ月以上みられている。①〜③は必ず1つ以上存在。

①妄想
②幻覚
③まとまりのない会話
④ひどくまとまりのない行動、あるいは緊張病性行動(興奮性の症状や、逆に刺激に反応しないような状態がみられるなど)
⑤陰性症状

診断として用いられるわけではありませんが、統合失調症ではMRI(磁気共鳴画像)において前頭葉と側頭葉の灰白質の体積減少が認められます。

※灰白質とは

脳や脊髄を断面でみると、白い部分と灰色の部分がみられる。このうちの灰色の部分を灰白質という。灰白質には神経細胞(ニューロン)の細胞体が多く存在する。

統合失調症の治療

状態に応じて、薬物療法、精神療法、リハビリテーションなどを組み合わせて治療が行われます。

日本において統合失調症は入院加療になることが少なくありません。人口あたりの病床数も多く、平均在院日数も長い傾向にあります。

長期入院から社会的入院となり、社会復帰が難しくなるケースもあります。

そうならないために、急性期の治療を終えたらなるべく早く退院し、外来や社会資源でフォローアップしながら社会生活を送れるようにしていきます。

薬物療法

統合失調症治療の中心であり、陽性・陰性症状の改善、興奮や混乱の軽減、再発予防といった効果があります。

薬は抗精神病薬(統合失調症治療薬)が用いられます。

抗精神病薬はドーパミン過剰説に基づいたものがほとんどです。ドーパミン量を減らすための方法がいまだに分かっていないため、受容体がドーパミンに作用しないようにする薬しか存在しません。

つまり、抗精神病薬を使用してもドーパミンの量が多い状態は続いているので、根治とはなりません。そのため現時点で統合失調症は慢性疾患と考えられており、薬を飲み続けなければなりません。

薬を飲み忘れる心配のある人は、内服ではなく、デポ剤という選択肢もあります。デポ剤とは月に1度注射をすることで、長時間ゆっくりと作用する薬剤です。ただし、副作用がみられた際には対応が困難になるというデメリットがあります。

抗精神病薬の種類は大きく定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬に分けることができます。

定型抗精神病薬

主にドーパミン(D2)受容体を遮断する薬です。陽性症状に対し高い効果を示し、鎮静効果も高いです。

定型抗精神病薬は化学構造の違いによって、フェノチアジン系(クロルプロマジン、レボメプロマジン)、ブチロフェノン系(ハロペリドール、ブロムペリドール)、イミノジベンジル系(クロカプラミン、モサプラミン)、ベンザミド系(スルピリド)、その他(ゾテピン)に分類されます。

定形抗精神病薬はしばしば副作用が問題となります。

陽性症状の原因となっている中脳辺縁系のドーパミン受容体のみ遮断できればいいのですが、他の3つのドーパミン経路の受容体も遮断してしまうからです。

黒質線条体系のドーパミン受容体が過剰に遮断されると、錐体外路症状(EPS)が起こります。

錐体外路症状とは以下の症状を言います。

・アカシジア・・・じっとしていられず、落ち着きのない状態
・パーキンソン病様症状・・・手足のふるえ、小刻み歩行、すり足歩行、関節が固くなりスムーズに動かせない、顔の筋肉が緊張し無表情にみえるなど
・ジストニア・・・筋緊張が過剰となり固まる、奇妙な姿勢、けいれんなど
・遅発性ジスキネジア・・・数ヶ月以上内服したのちに、突如発症する。何も食べてないのに口をもぐもぐ動かす、舌を出したり戻したり繰り返すなど

漏斗下垂体系のドーパミン受容体が過剰に遮断されると、高プロラクチン血症が起こります。

プロラクチンとは、脳の下垂体という部分から放出されるホルモンです。乳汁分泌ホルモンとも呼ばれており、乳汁を産生するために分泌されます。普段はほとんど分泌されないようにブレーキをかけられていますが、妊娠すると解除されます。

このブレーキをかけているのがドーパミンです。なのでドーパミン受容体を遮断するとプロラクチンの分泌が促進され、女性では月経が起きなくなったり、男女関係なく乳汁が出たり胸がはったりします。

非定型抗精神病薬

非定型抗精神病薬はドーパミン受容体だけでなく、様々な神経伝達物資・受容体を選択的に遮断します。

特にセロトニン受容体の遮断は陰性症状や認知機能障害も改善させ、さらに錐体外路症状や高プロラクチン血症といった副作用の発生頻度を減少させました。

セロトニンはセロトニン受容体と結合すると、ドーパミンの放出を抑制するという作用があります。

つまり非定型抗精神病薬はセロトニン受容体遮断によりドーパミンの放出を増やしつつ、ドーパミン受容体を遮断するので、錐体外路症状や高プロラクチン血症がみられにくくなります。

ドーパミンが過剰となっている中脳辺縁系においては、セロトニン受容体は少ないため、セロトニンの影響はそこまで受けません。なので陽性症状の治療にも問題ないということになります。

非定型抗精神病薬には様々な種類があります。

①SDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)

セロトニン受容体(2A受容体)とドーパミン受容体(D2受容体)の両方を強力に遮断します。

代表的なのがリスパダール(リスペリドン)で、統合失調症の第一選択薬となることが多く、特に幻覚・妄想といった陽性症状を抑えるのに有効です。

錐体外路症状や高プロラクチン血症は出現しにくくはなっていますが、高用量で発症するリスクはあります。

②DSA(ドーパミン・セロトニン拮抗薬)

ブロナンセリン(ロナセン)が該当します。

SDAと同様にセロトニン受容体とドーパミン受容体を遮断しますが、SDAがセロトニン受容体を有意に遮断するのに対し、DSAはドーパミン受容体を有意に遮断します。

よって陽性症状に高い治療効果をもたらしますが、非定型抗精神病のなかでは、錐体外路症状や高プロラクチン血症といった副作用が出現しやすい傾向にあります。

③MARTA(多元受容体作用抗精神病薬)

ドーパミン受容体やセロトニン受容体の遮断がメインではありますが、アドレナリン受容体・ヒスタミン受容体・ムスカリン受容体といった様々な受容体にも拮抗作用を及ぼします。

錐体外路症状や高プロラクチン血症は起きにくいですが、体重増加や血糖値上昇といった副作用がみられやすいです。なので糖尿病では服用禁忌となっています。

MARTAにはジプレキサ(オランザピン)、クエチアピン(セロクエル)などがあります。

抗精神病薬がなかなか効かない難治性の統合失調症に対しては、最も抗精神作用が強いとされるクロザリル(クロザピン)が用いられます。

④DSS(ドパミン部分刺激薬)

アリピプラゾール(エビリファイ)という薬が該当します。

ドーパミン(D2)受容体に結合し、ドーパミンの機能が亢進しているときには抑制的に働き、逆に低下しているときには機能を促進するといった二面性をもつ薬です。これによりドーパミン系の副作用が生じにくくなっています。

セロトニン2A受容体も遮断するため、錐体外路症状を起こしにくく、陰性症状も改善します。

さらにセロトニン1A受容体の部分作動薬としても作用し、抗不安・抗うつ作用もみられます。

DSSでは、体重増加や糖・脂質の代謝異常といった副作用はあまりみられません。

⑤SDAM(セロトニン・ドパミン・アクティビティ・モジュレーター)

ブレクスピプラゾール(レキサルティ)という薬が該当します。

比較的新しい抗精神病薬です。セロトニン2A受容体の遮断、セロトニン1A受容体への部分刺激、ドーパミンD2受容体遮断および部分刺激作用があります。

作用自体はDSSと同様ですが、SDAMのほうがセロトニン受容体への作用が強く、ドーパミン受容体の刺激作用が弱くなっています。

抗精神病薬の副作用

抗精神病薬による大きな副作用には、過鎮静、錐体外路症状、高プロラクチン血症があります。

重篤な副作用として、悪性症候群があります。

①過鎮静

抗精神病薬は脳に作用して精神活動を抑える薬なので、薬の量が多すぎと寝がちになってしまったり、起きていてもぼんやりとした状態になってしまいます。

特に高齢者では飲食物を誤嚥(食道ではなく、気管に飲み込んでしまう)することにより肺炎を起こしたり、転ぶことにより骨折し、寝たきり状態となってしまうリスクが高まります。

②錐体外路症状(EPS)

黒質線条体系のドーパミン受容体が過剰に遮断される(約8割以上といわれる)ことにより起こります。具体的な症状は前述した通りです。

運動は、ドーパミンによる”抑制”とアセチルコリンによる”興奮”のバランスによって調節されています。

抗精神病薬はドーパミン受容体を遮断するので、これによりアセチルコリンが優位に働く状態となり、錐体外路症状がみられます。

対処法としては、アセチルコリンの働きを抑える抗コリン薬が使用されます。

ただし抗コリン薬にも、便秘やのどの乾き、尿閉(尿がだせなくなる)などの副作用がみられ、また服薬中断のためには徐々に減薬する必要があったりします。そのため、まずは抗精神病薬の減量や変更を検討し、抗コリン薬は最終手段として用いるのが望ましいとされています。

③高プロラクチン血症

漏斗下垂体系のドーパミン受容体が過剰に遮断されることによって生じます。

特に定型抗精神病薬のスルピリド(ドグマチール)でみられることが多いと言われています。

症状は前述の通りです。

④悪性症候群

抗精神病薬だけでなく、精神薬全般において発症しうる最も重篤な副作用です。

精神薬の開始、増量、中断により、脳内のドーパミンの動態が急激に変化することによって起こると考えられています。他にもドーパミン(体温下降作用)とセロトニン(体温上昇作用)のバランスが崩れることにより発症するとも考えられています。

症状としては、40℃を超える発熱、筋緊張が過剰となり固まる、頻脈、発汗、震えなどがみられ、対処が遅くなると危険な状態になります。

悪性症候群がみられた際にはただちに全ての精神薬の服用を中止し、輸液管理となります。治療薬としてはダントロレンナトリウム(ダントリウム)が用いられます。

抗精神病薬は他にも便秘、ふらつき、体重増加、糖の代謝異常、起立性低血圧、のどの乾き、性機能障害といった副作用もみられることがあります。

精神療法

精神療法とは、援助者と言葉を交わしたり、関係性を構築したりすることにより、心理社会的に好ましい方向へと導く治療法です。

認知行動療法(CBT)

うつ病でよく行われる精神療法ですが、統合失調症でも有効とされています。

統合失調症においては、妄想や幻覚による思考や行動パターンの修正を目指します。

妄想や幻覚そのものは否定することなく、色んな角度から考えてみるようにします。そうすることで幻覚や妄想を自覚し、それらに左右されないように対処方法を見つけていきます。

個人精神療法

治療者(主に医師)とのカウンセリングです。統合失調症の人は様々な不安を抱えていることが多いです。治療者がその不安を受け入れ、支持的に関わっていくことで、症状の安定を図っていきます。

医師と患者間の信頼関係の構築にもつながり、積極的な治療にも大きく結びついてきます。

集団精神療法

同じ統合失調症の人が集まり、自分の悩みを話したり、他の人の悩みを聞いたりして、話し合いをします。

問題への対処方法を身につけるだけでなく、自分の心の問題を客観的に捉えたり、悩みを共有することで孤独感を和らげることができます。

リハビリテーション

急性期治療を終えた後、本人の意欲に応じて実施します。

日常生活、就労・就学、結婚など、本人の目標に応じて様々なリハビリテーションを組み合わせて行っていきます。

周囲の人は、本人の目標やペースを尊重し、自信を持って取り組めるようにサポートすることが大切です。

①生活指導

身の回りのこと(入浴、洗濯、食事など)がうまくできなくなっている場合に行われます。

②生活技能訓練(SST)

人とのコミュニケーションや日常生活において問題となりうることを想定し、事前に練習することで対応方法を身につけていく訓練です。

③作業療法

からだや手先を動かし、症状の安定、生活能力や就労のための能力、社会生活における適応力を高める治療です。

絵を書いたり、手芸をしたりなどの個人的なものから、農業や創作などみんなで共同で行うものもあります。

④心理教育

本人や家族が医療職者とともに、病気や治療についての情報を共有したり、生活上の問題への対処方法を考えていくためのプログラムです。

他にもデイケアや就労移行施設などを活用することもできます。

電気けいれん療法(ECT)

頭部に通電して全身にけいれんを引き起こし、精神症状を改善する治療です。

静脈麻酔や筋弛緩薬を使用して行われます。

薬物療法で効果がみられない人に対し、適応となることがあります。

統合失調症とCBD

統合失調症のイラスト

CBDにはTHC(テトラヒドロカンナビノール)による精神作用を抑制する力があることから、CBDは抗精神病薬としても力を発揮するのではないかと注目されるようになりました。

まだ数こそ少ないものの、統合失調症とCBDの研究は臨床試験まで行われています。

CBDによる臨床試験

初めて行われた臨床試験は2006年で、抗精神病薬で治療効果がみられない統合失調症患者3名に対し、なんとCBD単剤のみで治療を試みています。

40mg/日から開始し、30日間に渡り最高1280mg/日まで増量し投与したところ、1名の患者のみ軽度の改善が認められました。CBD単剤では効果がいまひとつであることが示されましたが、一方で誰にも副作用が認められませんでした。

2012年の研究では、急性期の統合失調症患者42名をアミスルピリド(日本では未承認の抗精神病薬。D2,D3受容体拮抗作用を有する)群とCBD群でそれぞれ1:1に振り分け、治療を行いました。

ともに200mg/日から開始し、一週間ごとに200mg/日ずつ増量し、最大800mg/日まで投与されました。3名は治療上好ましくないと判断され、600mg/日までの投与となりました。

CBDもアミスルピリドもともに治療効果が認められ、このことからCBDはアミスルピリドと同等の治療効果があることが判明しました。CBD群ではアミスルピリド群に比べ血液中のアナンダミド濃度が上昇しており、これは精神症状の改善と相関していました。さらにCBDはアミスルピリドよりも錐体外路症状やプロラクチンの上昇が少なく、肝臓や心臓にも影響を与えませんでした。

同サンプルにて2021年に発表された論文では、CBDもアミスルピリドも同様に認知機能を改善することも示されました。これに関しては特にアナンダミドは関係せず、セロトニン1A受容体が関与している可能性があると述べられています。

一方2018年の研究では、抗精神病薬で治療中の慢性期の統合失調症患者36名を対象に、CBD600mg/日を追加して治療を行ったところ、特に改善は認められませんでした。

これらのことからCBDは急性期治療に有効であり、量としては800〜1000mg/日程度は必要なのかもしれないと考えられます。

CBDが統合失調症に効くメカニズム

CBDはこれまでの抗精神病薬とは異なったメカニズムで治療効果をもたらすと言われています。まだCBDがはっきりと統合失調症に効くとは断言できませんが、そのメカニズムについて研究を参考にしながら考えてみたいと思います。

アナンダミドの活性化

CBDはアナンダミドの分解酵素(FAAH)を阻害することで、アナンダミドを増やす働きがあります。

2008年の研究では、急性期の統合失調症患者は健常者に比べ、脳脊髄液におけるアナンダミドの量が8倍にまで上昇しており、精神症状と負の相関があることが明らかになりました。つまり、乱れた神経伝達システムに対しアナンダミドが活性化し、症状を緩和しようとする働きがみられているということです。

それを証明するかのように、2009年の研究では、アナンダミドの低い前兆期の患者さんでは早期に精神病に移行することが認められました。

以上のことからアナンダミドに抗精神病作用があることが予測されます。

これは前述した2012年のアミスルピリドとCBDの研究で、CBDは血中のアナンダミド濃度を上昇させ、これに伴い精神症状を改善したという結果からも納得できると思います。

神経伝達物質の調整

統合失調症ではドーパミン調節障害が生じており、現在使用されている抗精神病薬がD2受容体をターゲットとしていることは、前述した通りです。

2016年のラットを用いた研究では、CBDは非定型抗精神病アリピプラゾール(DSS)と同様に、D2受容体に対し部分作動薬として作用する可能性が示されました。

つまりCBDはD2受容体に結合し、ドーパミン機能が亢進しているときは抑制的に働き、逆に低下している時には機能を促進するという二面性を有するということです。

この研究では、CBDがアリピプラゾールと同様に作用するためには550〜1100mg/日の投与量が必要だろうと述べています。

ドーパミンだけでなく、統合失調症はグルタミン酸の低下も原因として考えれており、実際にNMDA受容体というグルタミン酸受容体を遮断すると、陽性症状、陰性症状、認知機能障害が出現することが分かっています。

NMDA受容体を遮断し統合失調症様症状を引き起こしたマウスに対しCBDを用いた研究は数多くあり、そのほとんどで有効性が認められています。

2020年の研究でも、NMDA拮抗薬を使用したマウスにCBDを使用したところ、陰性症状・認知機能障害の改善を認めました。また、このCBDの作用はセロトニン1A受容体拮抗薬による前処置にて起こらなかったことが分かりました。このことから、CBDの抗精神作用はセロトニン1A受容体を介している可能性も考えられます。

抗炎症作用・神経保護作用

統合失調症では脳内で炎症性サイトカインやマクロファージ(免疫細胞)の増加が確認されていることから、脳の炎症が精神症状と関連しているのではないかとも考えられています。

この考えに基づき、2015年の研究では、統合失調症患者24名に補助療法としてミノサイクリンという抗生物質を1年間内服してもらったところ、プラセボと比較して有意に陽性・陰性症状が改善し、脳の灰白質の体積減少も防ぐことが示されました。

うつ病のコンテンツでもお話したように、CBDはバニロイド受容体、PPARγ受容体、GPR受容体、アデノシン受容体といったさまざまな受容体への作用および拮抗作用を通して、抗炎症作用をもたらすことが分かっています。

また、エンドカンナビノイドの活性化を介してミクログリアを抑制し、炎症性サイトカインの放出を減少させることも研究により示されています。

※ミクログリア

ニューロン(神経細胞)を守るために存在する神経膠細胞(グリア細胞)の1つ。変性したニューロンを取りこんだり、サイトカインの放出や抗原を掲示する機能をもつ。

2015年の研究では、マウスにNMDA受容体拮抗薬を投与したところ、認知障害・陰性症状が引き起こされるとともに、ミクログリアの活性化も認めました。

このモデルに対しCBDを使用することにより、症状の改善とともにミクログリアの働きも減弱されました。よってこの研究では、CBDは抗炎症・神経保護作用により抗精神作用をもたらしている可能性があると結論づけています。

以上のことを図にまとめると、以下のようになります。

※研究に基づいているとはいえ、あくまで推測です。治療は必ず医師の指示に従って下さい。

統合失調症と医療用大麻

残念ながら、統合失調症に対する治療効果は医療用大麻には認められていません。

統計上、統合失調症で大麻を使用している人が多いのは事実です。自己治療として大麻を使用しているという仮説もありますが、これに対してはどちらかというと否定的な論文が多いです。

2008年の研究では、統合失調症患者36名に対し、なぜ大麻を吸っているのかをアンケートしたところ、退屈しのぎやコミュニケーションの助けとして使用していると回答しており、症状や薬の副作用に対して使用しているわけではないことが示されました。

大麻を使用することで、統合失調症が増悪あるいは予後が悪くなると指摘する論文もあります。

2004年の研究では、精神疾患患者119名を4年間追跡調査したところ、大麻を使用している患者は使用していない患者に比べて、陽性症状が多く、症状も持続的であることが分かりました。

2005年の研究では、抗精神病薬により安定した統合失調症患者13名にTHCを投与したところ、健康な人よりも影響を受けやすく、陽性・陰性症状、認知機能障害を一過性に増悪させる可能性があることが示されました。

これらはいずれも小規模の研究であるため確定的ではありませんが、統合失調症という病気自体にとって、大麻はあまり好ましくなさそうです。

一方で2011年の研究では、統合失調症患者において大麻を使用している人のほうが、使用していない人よりも認知機能が優れていることが示されました。これはおそらく大麻の神経保護作用と抗炎症作用が関連していると考えられます。

以上のことから考えると、統合失調症の治療目的として大麻を使用することは、筆者としてはおすすめできません。

大麻は統合失調症を引き起こすのか?

統合失調症と大麻のイラスト

大麻(THC)はその精神作用から、統合失調症を引き起こす誘因になるのではないかと考えられ、これについては数多くの論文が存在します。

筆者の確認する限りでは、約30件もの論文が「大麻は統合失調症を引き起こす原因になりうる」と結論づけています。印象としては、引き起こすというよりも、発症を早めると示す論文が多いように感じました。

逆に少数ながら、そうではないと主張する論文もありました。

2013年の論文では、過去40年もの間に大麻の使用率は上昇しているが、それと並行して統合失調症の新規入院患者が増加していないことを指摘しています。

2014年の論文でも同様のことを指摘していますが、大麻は統合失調症発症のリスクとなりうることは認めています。ただし、たばこが肺がんを引き起こすリスクよりは著しく低く、大麻が単体で統合失調症のリスクファクターになるとは考えにくいと結論づけています。

つまり、大麻そのものが統合失調症を引き起こすのではなく、他の要因も重なることにより、統合失調症を発症するリスクが生まれるということです。

例えば2007年の論文では、1990年代スイスにおいて、若年層の精神病の初回入院率に増加が認められました。同時期に若者の間で大麻の使用が増加していたことから、この因果関係は一致すると指摘しています。このことから、未成年というのがリスクの1つとして考えられるということになります。

様々な論文を読んだ結果、大麻が統合失調症を引き起こすリスクを高める要因として、以下のものがあると考えられます。

①未成年の使用
②高濃度のTHCの頻繁摂取
③統合失調症を発症しやすい遺伝的変異がある(COMT,AKT1,NRG1,DRD2など)
④幼少期のトラウマ(虐待など)

統合失調症を引き起こしやすい人が大麻を吸うと、発症あるいは発症を早めるリスクがあるという色合いが強いように思います。

ここで少し①②について考えてみます。

精神作用をもつTHCは脳にあるCB1受容体に部分的ながら直接作用し、ドーパミン調節に影響を与えます。この作用はもともと体内にあるエンドカンナビノイドによっても行われているものです。つまり、脳の発達が未熟な段階で外部から下手にこのコントロール機構に刺激を与える、あるいは過度に強い刺激を与えてしまうと、何らかの悪影響があるかもしれないと予測できるということです。

筆者は現在精神病院に勤めており、数多くの統合失調症の患者さんをみてきましたが、特に大麻の使用歴があるとは聞いたことありません。ですがこれまでの研究を考慮すると、特別な理由がない限りは未成年での使用は避け、THC濃度や使用量を気にすることは大切だと思います。

※大前提として、現在日本では大麻の所持・栽培等は違法ですので、使用しないようにして下さい。

まとめ

統合失調症とCBDの治療効果、そして大麻との関係性についてみてきました。

・統合失調症は陽性症状、陰性症状、認知機能障害を主症状とした、慢性の脳神経の病気
・根治治療はまだ確立しておらず、既存の抗精神病薬は副作用がしばしば問題となる
・CBDは他の抗精神病薬とは異なるメカニズムの治療薬となる可能性があり、副作用も少ない
・統合失調症の治療として大麻を使用するのはあまり勧められない
・高濃度のTHCを含む大麻の頻繁摂取や未成年での使用は、人により統合失調症を引き起こすリスクがある

統合失調症の人がみている世界は理解するのがなかなか難しく、その症状が原因となりみられる行動は、周囲の人からするとおかしく感じることが多いと思います。ですが患者さんたちも好きでこのような病気になったわけではなく、苦しんでいるのです。

現時点で統合失調症は根治治療ができないものの、薬である程度は症状をコントロールできるようにはなっています。ですがそれでも患者さんの3/4は生活のしにくさが残るといいます。筆者の勤めている精神病院でも社会復帰できず、何年も社会的入院をしている人がたくさんいます。

苦しみながら病気と戦っている人がいるということはぜひ知ってもらいたいですし、だからこそ病気を理解しようとする気持ちを持つことは大切だと思います。

統合失調症の人を理解するのに、みなさんにおすすめの映画があります。
2001年に公開されたラッセル・クロウ主演の「ビューティフル・マインド」です。

主人公がどのように統合失調症を発症し、受け止め、付き合っていくのか。そして何よりいかに周囲の人のサポートが大切かというのがよく分かります。お時間があれば、ぜひ御覧ください。

優しさは、まず理解するところから。

大麻合法化後のカナダ、急性精神症状による受診率に影響与えず

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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