マリノールとは?

マリノールとは?

この記事では、大麻由来医薬品であるマリノール(ドロナビノール)についてお話していきます。

現時点で日本では承認されておらず、治験の予定もありません。

この記事は主にFDA(アメリカ食品医薬品局)の文書を参照しています。

マリノールとは?

マリノールとは、THC(テトラヒドロカンナビノール)を模倣した合成カンナビノイドであるドロナビノールを含有した経口用カプセルで、Unimed Pharmaceuticals社により開発されました。

1985年にFDA(アメリカ食品医薬品局)で承認され、他にもドイツ、フランスなどにおいて承認されています。

合成カンナビノイドが脂溶性であることを考慮し、マリノールにはゴマ油も配合されています。さらにゼラチン、グリセリン、メチルパラベンやプロピルパラベンといった防腐剤も含まれています。

マリノールの適応症は?

化学療法による難治性の悪心・嘔吐と、AIDS(後天性免疫不全症候群)による体重減少・食欲低下です。

フランスでは、多発性硬化症や神経障害性疼痛などの慢性疼痛においても処方されているようです。

適応とはなっていませんが、睡眠時無呼吸症候群アルツハイマー型認知症の行動障害などにおいて、有効である可能性も報告されています。

マリノールの有効性は?

1995年の研究では、2.3kg以上の体重減少が認められたAIDS患者139名をドロナビノール群とプラセボ群に割り当て、それぞれ3日間使用してもらった結果、ドロナビノール群において食欲増加(ドロナビノール38%、プラセボ8%)、吐き気の減少(ドロナビノール20%、プラセボ7%)、気分の改善(ドロナビノール10%、プラセボ-2%)が有意に認められました。2kg以上の体重増加はドロナビノール群では22%に、プラセボ群では10.5%に認められました。全体としてドロナビノール群において体重は安定していましたが、プラセボ群では平均して0.4kg減少していたことが報告されました。

2007年の研究では、化学療法により遅発性の悪心・嘔吐が生じた64名の患者にドロナビノール、オンダンセトロン(制吐剤)、プラセボ、またはドロナビノールとオンダンセトロンの両方を使用してもらった結果、吐き気の強さの評価尺度がプラセボで20%、ドロナビノールで54%、オンダンセトロンで58%、ドロナビノールとオンダンセトロンの併用で47%の改善が認められました。つまり、この研究においてドロナビノールとオンダンセトロンはほぼ同等の効果を有していたということになります。

オンダンセトロンとの併用では化学療法による悪心・嘔吐に対し相加・相乗作用は認められませんでしたが、統合失調症治療薬であり制吐作用も有するプロクロルペラジンとの併用においては、それぞれ単独で使用するよりも高い効果がみられたことが報告されています。

マリノールの副作用は?

よくみられる副作用(3%以上の発症)は多幸感、めまい、眠気、不安、悪心などです。

他にも動悸、血圧低下、健忘などがみられることがあります。

マリノールの依存性は?

マリノールはCB1受容体に作用することにより「ハイ」になる作用がみられますが、1998年の研究では乱用の危険性は極めて低いことが示されています。そのため、当初マリノールはスケジュールⅡ(乱用の危険性あり)に分類されていましたが、後にスケジュールⅢ(乱用の危険はあるが、Ⅱほどではない)へと変更されました。

マリノール以外のドロナビノール

マリノールはドロナビノールの経口用カプセルですが、2016年にはドロナビノールの内用液である「シンドロス」が登場し、FDAからも承認されています。

さらにカナダでは、Tetra Bio-Pharma社が新技術によりドロナビノールのジェルカプセル「REDUVO」や錠剤「Adversa」を開発し、現在承認申請中です。なお、カナダでは一度マリノールを承認していましたが、現在は市場から撤退しています。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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