THCVとは?

THCVとは?

THCV(テトラヒドロカンナビバリン)は精神活性作用を持つTHCと似た構造を持つカンナビノイドであり、1970年代初頭に発見されました。

天然の大麻草に存在しますが、その量はわずかとなっているため、マイナーカンナビノイドに該当します。

THCVには大麻草に含まれている「Δ9THCV」と、その異性体(分子は同じで構造が異なるもの)である「Δ8THCV」があります。

THCVは「Diet Weed(ダイエット用の大麻)」とも呼ばれており、主に肥満や糖尿病に対し期待が寄せられています。

THCVはキマるのか?

THCと似た構造を持ちますが、基本的に酩酊作用はありません。ただし口コミでは、脳に作用することで集中力を高める効果があると言われていたりします。

THCによる酩酊作用はCB1受容体の活性化により生じると考えられていますが、THCVはCB1受容体と親和性が高く、多くの研究が拮抗作用したことを報告しています。

一方、いくつかの研究ではCB1受容体の活性化も報告されており、例えば2007年のマウスの研究では、THCほどではないものの、高用量のTHCVでCB1受容体が活性化されたことが示されています。

これらのことから、THCVはCB1受容体に対し「低用量で拮抗作用し、高用量で活性化する」と認識されている傾向にあります。つまりはそれなりに量をとれば、THCVも多少精神活性をもたらす可能性があり、おそらくこれが集中力の向上と関連していると考えられます。

なお、THCVはCBDと同じように、THCによる不利益な作用を抑制したことも報告されています。

THCVの作用点

前述したように、THCVは基本的にCB1受容体に対し拮抗作用すると考えられていますが、その特性はCB1受容体の働きを弱める薬剤である「リモナバント」とは異なるようです。

リモナバントは一時期肥満治療において期待されていましたが、うつ病・不安や自殺企図など精神面において重度な副作用をもたらすことが明らかとなり、現在では市場から撤退しています。

2013年のマウスの研究では、リモナバントでは誘発された不安が、THCVでは認められませんでした。また、リモナバントはてんかんの発作時間を延長させましたが、一方でTHCVは抗てんかん作用を示しました

つまり、THCVはリモナバントと同じような効果を持ちながらも、精神面での副作用がなく、別の効果ももたらす可能性があるということです。

CB2受容体に対しては、活性化拮抗作用の両方が報告されていますが、基本的には部分的に作用すると考えられています。

他にもTHCVは、CB1受容体と密接に関連するTRPV1、不安やうつ病、痛みなどに関連するセロトニン1A受容体、代謝異常やがんなど様々な疾患に関連するGPR55などに対し作用したことが報告されています。

THCVの効果

CB1受容体に拮抗作用、CB2受容体に部分作用するとされているTHCVは、特に糖尿病や肥満、パーキンソン病において注目されています。

THCVにおける研究はほとんどが動物を対象としたものであり、人を対象とした研究はまだほとんど行われていません。

糖尿病・肥満

インスリン治療を行っていない2型糖尿病患者62名(THCVを単独で摂取したのは12名)を対象とした臨床試験では、THCVはプラセボ(偽薬)と比較して善玉コレステロール値を改善しなかったものの、空腹時血糖を低下させ、膵臓β細胞(インスリンの合成と分泌を行う細胞)の機能を改善させました。

2013年の研究では、THCVは肥満モデルマウスの食事摂取量や体重に影響を与えなかったものの、インスリンへの感受性を向上させ、耐糖能(血糖値を正常に維持しようとする能力)を改善させたことが報告されています。

この2つの研究では体重や食欲、コレステロール値に影響が認められませんでしたが、別の研究ではTHCVはマウスの食欲を低下させ、高脂肪食による体重増加を抑制したことが報告され、肥満治療においても有効である可能性が示されています。

2015年の研究では、肝炎・脂肪肝モデルマウスにおいて、THCVは脂質代謝やミトコンドリアの活性を向上し、脂質のレベルを低下させたことが報告されています。

パーキンソン病

パーキンソン病を誘発させる神経毒を用いた研究において、THCVはCB2受容体の活性化や抗酸化作用により、神経毒による神経変性を減弱させ、運動障害の発症を抑制し、パーキンソン病の進行や症状緩和に有効である可能性を示しました。

パーキンソン病の治療に用いられるレボドパは、長期使用によりジスキネジア(自分の意思とは関係なく体が動く症状)を引き起こすことで知られていますが、THCVはマウスの研究において、レボドパ誘発性のジスキネジアの発症を遅らせ、なおかつその程度を減弱させました。

これらのことは、THCVがレボドパによる副作用を抑えながら、パーキンソン病に対し有効となる可能性を示しています。

痛み・炎症

マウスの研究において、Δ8及びΔ9THCVは、低用量でTHCによる鎮痛作用を減弱させましたが、高用量では逆に単独で鎮痛作用をもたらしました。

炎症モデルマウスでは、THCVは抗炎症作用を示し、痛みを緩和しましたが、この作用はCB1およびCB2受容体への作用によりもたらされた可能性があるとされています。

その他

マウスや試験管内の研究において、てんかんにきび吐き気ニコチン依存統合失調症に対し有効である可能性が報告されています。

また、2021年の研究では、中国産ヘンプの抽出物が抗菌・抗酸化作用を示しましたが、この抽出物にはTHCVとCBDVが多く含まれていたことが報告されています。

THCVの安全性

人を対象とした研究がほとんどないため断定はできませんが、基本的に安全であると考えられます。

2型糖尿病患者を対象とした臨床試験では、12名が13週間、朝食と夕食の30分前にTHCV5mg(10mg/日)を服用した結果、ほとんどの人が食欲低下、2名のみ下痢を報告しました。

この結果に対し研究者らは、THCVは多少副作用はみられるかもしれないが、基本的には安全であると結論づけています。食欲低下に関しては、肥満治療で注目されていることを考慮すると、見方によれば適切な作用と捉えることも可能でしょう。

それ以外にも、健康な人10名がTHCVを10mg/日で5日間摂取した結果、主観的な副作用は認められず、プラセボと区別がつかないほどであったことが報告されています。

これら2つの研究において特に大切なのは、リモナバントでみられる不安や抑うつなどの精神的副作用が認められなかったことでしょう。

またこれらの研究では、THCVの摂取量が10mg/日までの範囲となっているためこれ以上の服用における安全性は不明です

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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