標準化(ノーマライゼーション)とは?

ノーマライゼーションとは?

標準化

「ノーマライゼーション(標準化)」とは福祉用語の1つであり、障がいや病気のある人でも健康な人と同様に生活を営むことを当然とする考え方や、それを目指した施策のことを指します。

例えば「標準化」を具現化する方法として、バリアフリーやユニバーサルデザインなどが挙げられます。

※バリアフリーとは

障がいや病気のある人に不自由がないように、設備や環境を整えること。
例)段差のスロープ化、文字だけでなく音声案内をつけ加えるなど

※ユニバーサルデザインとは

始めから誰でも使用できるデザインにすること。
例)始めから歩道橋をスロープ付きで設計するなど

もちろん限界はありますが、これらにより障がいや病気のある人が気を使うことなく、健康な人と同じように社会生活を営むことが可能となります。

これらは「標準化」の重要な手段ではありますが、「標準化」のためには他にもある大前提が必要です。それは「心のバリアフリー」です。私たち一人ひとりが社会的に弱い立場にある人たちに対して差別的な目線を持たず、平等な目線で接しようとする思いやりの気持ちが大切になります。

大麻の「合法化」とは?

大麻の「合法化」とは文字通り、違法ではなくなり、法律の範囲内で許容されることを意味します。法律の範囲は国や州ごとに異なりますが、例えばカリフォルニア州では、使用年齢は21歳以上、乾燥大麻の所持は1オンスまで、栽培は6株までとなっています。

「医療用大麻の合法化」は法律の範囲内で治療として大麻を使用できること、「嗜好用大麻の合法化」は法律の範囲内でライフスタイルや楽しみのために大麻を使用できることを意味します。

大麻の「標準化」とは?

大麻の「標準化」とは、簡単に言えば大麻が社会の中で一般的な存在になることを意味します。

例えば頭が痛い時には「頭痛薬を飲む」、気持ち悪い時には「吐き気止めを飲む」ということに、違和感を感じる人はほとんどいないのではないでしょうか?もちろんそこに好き嫌いはあるかもしれませんが、「逸脱している」という印象はないと思います。

医療用大麻の「標準化」とは、例えば頭が痛いから「大麻を吸う」、気持ち悪い時には「大麻を吸う」ということに、違和感がない状態を言います。

嗜好用大麻の「標準化」で言えば、「仕事終わりの(大麻の)一服はおいしい」「今日は頑張ったから、自分へのご褒美に大麻ブラウニーを食べよう」というような発言を聞いて、好き嫌いはあるにしても、違和感までは感じない状態になることを言います。

つまり大麻の「標準化」とは、特に心理的負担がかかることなく、他の処方薬や嗜好品と同じように、大麻を使用できるような社会になることを言います。

大麻は「標準化」してこそ真の恩恵がある

たとえ日本で大麻が「合法化」されたとしても、「標準化」されていなければ、その恩恵を享受できる人は少なくなります。

それはなぜか。想像してみて下さい。

医師からがんの痛みのコントロールのために、医療用大麻を処方された。痛いから早速大麻を吸ってみた。周りの人が「うわぁ、本当に大麻吸ってるよ」「もともと昔から吸ってたんじゃないの?」とかヒソヒソ話してたら、どう思いますか?からだの痛みがとれたとしても、心が痛くないでしょうか?そうなるくらいなら既存の痛み止めでどうにかする、あるいは誰にも見られないところでこっそり大麻を使うという選択をする人が多くなると思います。

つまり「標準化」されていないと、医療用にも関わらず堂々と大麻を使用できず、自分を救うどころか傷つくことになりかねないということです。それでは例え医療用大麻が効果的であったとしても、使用を続けようと思う人は少なくなってしまいます。

嗜好用大麻も同様で、例え合法化されたとしても身近に「大麻吸うやつは頭おかしい」と話している人がいたら、使用しづらくなります。大麻が好きでも好きと言えず、交友関係が限定されたり、なんとなくこっそり楽しむことを強いられてしまいます。

人は一人では生きてはいけません。少なくとも、幸せになるのは難しいはずです。だからこそ周囲の人から悪く言われたり差別されたりするのは誰だって嫌なはずです。

こういった心理的負担がなくなること、つまり「標準化」して初めて、私たちは真の意味で大麻の恩恵を受け取ることができます。

「標準化」を妨げるのは、スティグマ

スティグマとは、負のレッテルや悪名、偏見のことを指します。

現在日本で「大麻」は違法なものとして扱われ、所持や栽培などが禁止されています。そしてこの法律を犯せば、当然犯罪者ということになります。

つまり現時点では「大麻を吸っている人=社会不適合者」という印象が強くなっています。

繰り返しになりますが、大麻の「標準化」は大麻が社会において一般的になることです。現在の「大麻」に対する負のレッテルが、将来大麻を合法化した時に「標準化」を妨げるというのは、想像に難くないでしょう。

大麻を「標準化」するためには?

一番効果的なのは、知識の普及です。大麻のスティグマは違法であることだけでなく、ネガティブな情報が圧倒的に先行していることが原因となっているからです。つまりネガティブな情報だけでなく、ポジティブな情報も平等に普及していくことが必要となります。

例えばモルヒネは麻薬で副作用に注意が必要ですが、強い鎮痛効果を有することで有名です。なので医療目的でモルヒネを使っているからといって、差別的な扱いを受ける人はいないでしょう。一方で大麻も鎮痛効果を有することが研究により示されていますが、それを知っている日本人はおそらく現時点で少数です。そのような状態で大麻が社会的に受け入れられるのは、当然難しいと考えられます。

また日本では、大麻を一度でも使うと人生が終わると言われたりすることがありますが、大麻の依存症への移行率は8.9%(ニコチンでは67.5%、アルコールでは22.7%)であることは科学的に証明されています

「ハイになる」ことも悪く言われがちではありますが、本来それも経験してみないと良し悪しは決められないはずです。

これら全てに共通しているのは、「ちゃんと知らないこと」です。ネガティブな情報が中心となり普及しているからこそ、スティグマが生まれるのだと思います。そのため、メディアや教育機関が大麻のポジティブな情報も一緒に普及していくことが、スティグマを拭い去るための一助となり、「標準化」に最大の効果をもたらします。

そして「標準化」のために、一番大切なこと。それは「心のバリアフリー」、つまり一人ひとりの「思いやりの心」です。

大麻を使っている人を見た時に、あなたがどう思うのかが肝心です。

「社会不適合者だな」と思うのか。
「なんで使ってるんだろう?治療のために使ってるのかな?分からないから、教えてもらおう」と思うのか。

そこの認識の仕方だけで「標準化」の進行具合は大きく変わると、筆者は思います。そもそもその認識がないと、大麻のことをちゃんと知ろうという行動には結びつかないでしょう。

大麻を「合法化」するのは国の仕事ですが、大麻を「標準化」し多くの人が恩恵を受けることができるようにするのは、国だけでなく、私たち一人ひとりの仕事です。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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