THCAとは?

THCAとは?

THCA(テトラヒドロカンナビノール酸)はTHCの前駆体となる酸性カンナビノイドです。THCAを熱・高温・光などにより脱炭酸させると、中性カンナビノイドであるTHCに変換されます。

そのため、THCAを多く含む大麻であったとしても、ジョイントのように火で燃やして摂取する方法では、体内に入る時にはTHCに変換されてしまいます。

ただし、この変換は部分的であるとされており、実際に大麻使用者の血液や尿を調べた研究では、血中や尿からTHCAが検出されています。

このような不安定な性質上、THCAの有効性に関する研究はあまり行われていません。なぜならTHCAで有効性を認められたとしても、THCの影響が関与している可能性を否定できないからです。

そんな中ではありますが、THCAはいくつかの研究において医療的に有望な可能性を示しており、中にはTHCよりも高い有効性を報告した研究もあります。

THCAは”キマる”のか?

THCには精神活性作用がありますが、その前駆体であるTHCAにそのような作用はありません。

THCによる酩酊作用は「脳」のCB1受容体の活性化により生じると考えられていますが、2019年のマウスの研究では、THCAは脳に届きにくい成分であることが報告されています。

THCAの作用点

THCはCB1CB2受容体に対し高い親和性を持ち、部分的に活性化させますが、その前駆体であるTHCAに関しては矛盾した報告があり、これらの受容体に対しどのように作用するのかまだ結論がついていません。

全体の傾向としては、THCAはCB1・CB2受容体に対し親和性が低く活性作用もほとんどないとされています。

ですが、2013年のマウスの研究では、THCAにより認められた制吐作用がCB1受容体拮抗薬により消失したことが報告されています。興味深いことに、THCAは脳のCB1受容体活性化による運動量減少や体温低下を引き起こさなかったといいます。

さらに2020年のマウスの研究でも、THCAは運動量減少や体温低下を引き起こさず、用量依存的に鎮痛作用や抗不安作用を認めています。なおこの研究では、THCAがCB2受容体に対し部分的に作用したことが示されています。

CB1受容体は脳を中心に発現していますが、全身の様々な部位においても発現しています。つまりTHCAは脳には届きにくいものの、脳以外の抹消のCB1受容体に対し作用し、有効性をもたらす可能性があると考えられます。

またTHCAは、糖尿病や炎症などに関連する核内受容体PPARγを活性化することが、いくつかの研究により報告されています。

THCAの効果

これまでの研究により、THCAは抗炎症作用、神経保護作用、代謝改善、制吐作用などが報告されています。

抗炎症作用

細胞を用いた研究において、THCAはCOX(シクロオキシゲナーゼ)を阻害する作用を認めています。COXとは炎症反応を引き起こすプロスタグランジンを生成する酵素であり、この酵素を阻害する薬として有名なのが消炎鎮痛剤「ロキソニン」です。

関節炎モデルマウスにおいて、THCAは炎症を軽減して関節を保護。この作用はCB1受容体及びPPARγを介していたことが示されました。なおこの研究では、THCAがCB2受容体に対し逆作動薬として作用する可能性も報告されています。

大腸細胞に対する大麻抽出物の抗炎症作用を検証した研究では、カンナビノイドの中でも特にTHCAが抗炎症作用に寄与し、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患に対しCBDよりも有効性が高い可能性が示されました。

興味深いことに2006年の研究では、THCAの抗炎症作用はTHCとは異なるメカニズムによりもたらされる可能性も報告されています。

神経保護作用

脳に行き届きにくいとされたTHCAではありますが、神経保護作用についての報告もあります。

神経毒を用いたハンチントン病モデルマウスにおいて、THCAは線条体における炎症や神経変性を抑制し、運動障害を改善しました。

また2012年の研究では、THCAが抗酸化作用を有し、パーキンソン病関連神経毒であるMPP+からドーパミン神経細胞を保護したことが報告されています。

代謝改善

2020年の研究において、THCAはPPARγを介して、高脂肪食によって肥満となったマウスの体重・脂肪量を減少させ、糖の代謝異常やインスリンの感受性を改善し、脂肪肝も抑制したことから、メタボリックシンドロームに対し有効となる可能性が示されました。

同じように別の研究では、THCAは高脂肪食を摂取し続けたマウスの体重・脂肪量を減少させ、糖の代謝を改善し、脂肪肝や肝臓の線維化を劇的に減少させたことが報告されています。

制吐作用

2013年のマウスの研究において、THCAはTHCよりも少ない用量で制吐作用をもたらすことが示されました。この作用はCB1受容体を介していたことが明らかとなりましたが、低体温や運動量減少を引き起こさなかったことから、脳以外の場所に発現するCB1受容体に作用した可能性があるとされました。

THCより少ない量で、なおかつ脳に作用しないことから、この研究ではTHCAがTHCよりも優れた吐き気止めとして活用できる可能性があると結論づけています。

2020年のマウスの研究においても、THCAは制吐作用を認めましたが、この作用には核内受容体PPARαが関与していたことが示されました。さらにこの研究では、有効量より少ないTHCAとCBDAを組み合わせることで相乗作用し、制吐作用を示したことも報告されています。

その他

THCAは抗てんかん作用を有する可能性も示されており、2022年2月に公開された研究では、てんかん発作抑制のターゲットとして知られるT型カルシウムチャネルを阻害したことが報告されています。

しかし様々なてんかんモデルマウスにおける検証では、モデルの種類やTHC混合の有無によって有効性が異なり、作用が不安定であることから、THCA単体をてんかん治療に用いることは難しいだろうと結論づけられています。

他にもTHCAは、マウスに対し鎮痛作用や抗不安作用をもたらしたことが報告されており、これにはCB1受容体への作用が関係していたとされています。

また2020年の研究では、THCAの誘導体が膵臓がん細胞株に対し活性を示し、マウスにおける検証でも腫瘍の成長を抑制したことが報告されています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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