大麻成分CBD、前頭葉てんかん患者の発作減少・QOL向上に効果

大麻成分CBD、前頭葉てんかん患者の発作減少・QOL向上に効果

- イランの臨床試験

7月3日、難治性の前頭葉てんかん患者が標準治療に加えて大麻成分CBDを使用することで、発作の減少やQOLの向上が認められたことがイランの研究者らにより報告されました。論文は「Frontiers in Neurology」に掲載されています。

てんかんとは、大脳皮質の神経細胞が過剰に興奮することにより、てんかん発作が起きる脳の病気のこと。てんかん発作は大脳の広範囲で過剰な興奮が起こる「全般発作」と、大脳の一部で過剰な興奮が起こる「部分(焦点)発作」に分けられます。

部分発作を起こすてんかんを「部分てんかん」と呼びますが、このうち最も発症頻度が高いのは「側頭葉てんかん」であり、次いで「前頭葉てんかん」となっています。

前頭葉てんかんは、人間らしさや身体の運動を司る前頭葉で過剰な興奮が起こる病気です。運動性の発作を引き起こすのが特徴的で、首を片側にねじり両腕をフェンシングの選手の構えのように強直させたり、自転車をこぐように両足をバタバタさせるなどの発作がみられます。発作の持続時間は1分以内のものが多いですが、一度起きるとその日のうちに何度も続けて発作が起こりやすくなります。

てんかんは薬物療法や手術により多くの患者で寛解あるいは良好なコントロールが得られますが、てんかん患者の約3分の1はこれらの治療で十分な効果を得ることができていません。

大麻に含まれる成分CBDは様々な医療効果が期待されていますが、特に新たな抗てんかん薬として注目を浴びています。その期待値の高さから、高濃度のCBDを含有した「エピディオレックス」という医薬品も開発されており、日本でも昨年末よりこれを用いた治験が開始されています

しかし、エピディオレックスの適応は1歳以上(ヨーロッパでは2歳以上)のドラベ症候群(乳児重症ミオクロニーてんかん)、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症に由来するてんかんとなっており、現時点で一部の難治性てんかん患者でしか処方が認められていません。

難治性の前頭葉てんかんに対する臨床試験

このような中、イラクの研究チームはエピディオレックスで適応が認められていない「前頭葉てんかん」患者を対象とし、CBDの安全性と有効性を検証する8週間の臨床試験を実施。

対象となった前頭葉てんかん患者は18歳以上で、少なくとも2種類以上の抗てんかん薬で有効性が認められなかった27名(女性18名、平均年齢28.8歳)。これらの患者はCBDを服用するグループ12名(以下、CBD群。男性6名、平均年齢24.5歳)と、プラセボ(偽薬)を服用するグループ15名(以下、プラセボ群。女性12名、平均年齢32.2歳)に振り分けられました。

今回研究で用いられたのは、CBDをリポソーム化した製剤。リポソーム化とは、有効成分(ここではCBD)を脂質の膜で閉じ込めることで、薬がより高い効果を発揮するのを助ける技術のこと。CBD(特に経口摂取)は吸収率が低いことで知られており、最近ではこのようにCBDの吸収率を高めるための技術を用いた研究が増えてきています。

CBD製剤は、1mlあたり40mgのCBDを含有。患者は1週目にCBD70mg(1.75ml)/回から服用を開始し、2週目に140mg(3.5ml)/回、3週目〜8週目に210mg(5.25ml)/回の用量で服用。

CBDの有効性をできる限り正しく評価するため、患者、治療者、評価者は誰がどの薬を服用しているのか分からないよう工夫されました。

なお、基本的に抗てんかん薬(フェノバルビタール、バルプロ酸ナトリウム、レベチラセタム、カルバマゼピン、ラモトリギン、ラコサミド、ガバペンチン、クロナゼパム、フェニトインなど)の服用は継続することができましたが、一部の抗てんかん薬(クロバザム、トピラマート、ゾニサミドなど)とワーファリンを服用している患者に関しては研究の除外対象となりました(これらの薬はCBDとの相互作用が大きいことで知られる)。

有効性の評価は発作頻度、てんかんの重症度(Chalfont Seizure Severity Scale)、QOL(てんかん患者用QOL質問票:QOLIE-31)に対し実施。これらの評価はベースライン、4週目、8週目に行われました。

CBD群で発作頻度の減少、QOLの向上を認める

ベースラインの平均発作頻度はプラセボ群で34回、CBD群で86.5回。治療開始から4週目ではプラセボ群で26.9回(ベースラインとの差:-7.1)、CBD群で55.4回(-31.1)、8週目ではプラセボ群で24.7回(-9.3)、CBD群で40.9回(-45.6)となり、いずれの時点でもCBD群において有意な発作の減少が観察されました

治療による発作頻度の変化

また、患者に発作が改善したかどうかを尋ねた結果、「改善した」と回答した割合が4週目ではプラセボ群で20%であったのに対し、CBD群では66.7%となりました。ただし、8週目では両群で有意差がありませんでした。

てんかんの重症度に関しては、全体としてプラセボ群とCBD群で有意差が認められず。

ベースラインのQOLスコア(QOLIE-31:値が大きいほど良好な状態を示す)は、プラセボ群で53.2点、CBD群で48.8点。治療4週目ではプラセボ群(55.1点)でもCBD群(48.6点)でも有意な変化が認められませんでしたが、8週目ではプラセボ群で55.7点(ベースラインとの差:+2.5)、CBD群で58.9点(+10.1)となり、CBD群で有意な改善が認められました

分析の結果、興味深いことに、CBDによるQOLの改善はてんかん発作の減少とは関連していませんでした。これに対し研究者らは、不安抑うつなど精神面の改善が関連している可能性があると考察しています。

副作用として眠気、頭痛、不安、吐き気、便秘、下痢、腹痛、めまい、振戦、イライラ、心拍数や血圧の変化、食欲の変化、疲労、口渇などが報告されましたが、いずれもプラセボ群とCBD群で報告数に差がありませんでした。

これらの結果から、研究者らは「本研究は、薬剤抵抗性の前頭葉てんかんに対するCBDの適切な盲検化及びランダム化比較試験という形で、質の高いエビデンスを提供するものです。CBDは発作頻度を減少させ、QOLを改善させることができました。さらに、追加療法(抗てんかん薬との併用療法)としてCBDを使用することは安全であると判明しました。他の難治性てんかんサブタイプに関する(CBDの)研究が奨励されます。今後の研究では、より効果的なCBD製剤を用いて、より長期間の追跡調査を行うべきです」と結論づけています。

今回の研究以外でも最近、エピディオレックスの適応症(ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症)以外の難治性てんかんに対し、CBDが有効性を示した報告がいくつかなされています。

今年始めにドイツの研究チームは、国内のてんかんセンターでCBDによる治療を受けていたてんかん患者311名(子ども235名[2歳未満:28名]、大人76名)の治療記録を振り返った結果、年齢やてんかんの種類に関係なく発作の減少が認められていたことを明らかにしています。この研究において有効性に差が認められたのはCBDの服用量のみであったことから(高用量であるほど高い効果)、研究者らは論文の結論部分でCBDの適応を拡大するための臨床試験の必要性を訴えました。

アメリカの研究チームは最近、2014年1月から2019年1月にかけて「CBD拡大アクセスプログラム」に参加した難治性てんかん患者892名(年齢中央値:12歳[0〜75歳]、抗てんかん薬服用数の中央値:3種類[0〜10])における前向き研究の結果を報告。このプログラムでは、様々な難治性てんかん患者がエピディオレックスによる治療を受けることが可能となっていました。

144週間に渡る治療の間、様々なタイプのてんかん発作が減少。具体的には、間代発作で58〜100%、強直発作で54〜73%、強直間代発作で47〜72%、脱力発作で77〜96%、部分発作で60〜76%、欠神発作で95〜100%、ミオクロニー発作で63〜89%の減少が認められ、総合して少なくとも49%の患者が50%以上の発作減少を報告しました(てんかん発作の種類については、こちらの記事をご参照下さい)。

他にもフランスの研究チームは最近、レット症候群の難治性てんかんにエピディオレックスが奏功した研究結果を報告。レット症候群は女性にのみ発症する極めてまれな発達障害で、重度の知的障害、てんかん、自閉症、運動障害、自律神経障害など多彩な症状を認めます。

この研究では、てんかんを合併したレット症候群患者26名のうち10名がエピディオレックスによる治療を受け、1名で発作の消失、2名で75%以上の発作減少、4名で50%以上の発作減少が認められています(治療期間の中央値:13ヶ月[1〜32ヶ月]、CBD投与量の中央値:15mg/kg/日)。

これらは全てCBDのみを用いた研究ですが、少量のTHCが加わることでさらに良好な結果が得られる可能性もあります。

イギリスの研究チームは、国内で医療用大麻による治療を受けていた難治性てんかんの子ども35名(65.7%がドラベ症候群とレノックス・ガストー症候群以外のてんかん)の臨床経過を分析した結果、65.7%で50%以上の発作減少、37.1%で90%以上の発作減少、11.4%で完全寛解が認められていたことを報告

さらに、研究者らは製品別に効果を分析した結果、50%以上の発作減少が認められたのはCBD単体で31.6%、CBDブロードスペクトラムで17.6%であったのに対し、少量のTHCを含んだCBDフルスペクトラムでは94.1%で、明らかな有意差があったことを発見しています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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