大麻成分CBD、てんかんの種類や年齢に関係なく抗てんかん作用を認める

大麻成分CBD、てんかんの種類や年齢に関係なく抗てんかん作用を認める

- ドイツの後ろ向き研究

大麻に含まれる成分CBD抗てんかん作用を有することで知られており、日本でも高濃度のCBDを含有する大麻由来医薬品「エピディオレックス」による治験が開始されています

これまでのエビデンスに基づき、エピディオレックスの適応は、1歳以上(ヨーロッパでは2歳以上)のドラベ症候群(乳児重症ミオクロニーてんかん)、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症に由来するてんかんとなっており、他の種類のてんかんや1歳(ヨーロッパでは2歳)未満の子どもに対しては適応となりません。

またヨーロッパでは、ドラベ症候群とレノックス・ガストー症候群に対しエピディオレックスを使用するには、クロバザム(ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬)を併用する必要があります。

ここでいくつか疑問が生まれてきます。CBDは他のてんかんに対しては効果がないのか?特定の抗てんかん薬を併用しなければならないのか?1〜2歳未満の子どもに使用してはいけないのか?

これらの疑問に対し1月24日、ドイツの研究者らは1つのエビデンスを提供しました。

彼らによれば、ドイツの各所に存在するてんかんセンターにおいて、CBDによる治療を受けていた患者の治療記録を検証した結果、てんかんの種類、併用薬、年齢に関係なく、CBDがてんかんの発作頻度を減少させ、かつ安全性を示していたことが明らかになったとのこと。

この報告は「Epilepsia Open」に掲載されています

CBD加療前の基礎情報

今回研究の対象となったのは、2015〜2021年の間、ドイツにある16箇所のてんかんセンターでCBDによる治療を受けていたてんかん患者311名(子ども235名[2歳未満:28名]、大人76名)。これらの患者の治療記録を振り返ることで、CBDの有効性と安全性が評価されました。

てんかんの種類はドラベ症候群が9%、レノックス・ガストー症候群が20.9%、結節性硬化症が3.9%であり、エピディオレックスの適応外のてんかん患者が大部分(66.2%)を占めていました。

てんかんの病因別では、遺伝性のもの(ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、アンジェルマン症候群、レット症候群など)が35.7%、器質性のもの(低酸素脳症、感染による二次性の障害、限局性皮質異形成、海馬回旋遅滞など)が33.8%で多く、それ以外は遺伝性及び器質性のもの(結節性硬化症や滑脳症など)が11.9%、原因不明のものが18.6%。

服用していた抗てんかん薬の種類の中央値は5(0〜16)種類であり、74.9%の患者が難治性(2種類以上の抗てんかん薬で十分に効果が認められない状態と定義)でした。

また、19名が大脳半球離断術や選択的海馬扁桃体切除術などの手術を受けていました。

CBDと併用薬の服用状況

CBDによる治療開始年齢の中央値は11.3歳(2ヶ月〜72歳)。

CBDと併用された抗てんかん薬の種類の中央値は3(0〜6)種類。このうちクロバザムを服用していたのは46.3%で、半数以上がクロバザムを服用していませんでした

それ以外の併用薬はバルプロ酸ナトリウム(43.1%)、ラモトリギン(25.4%)、レベチラセタム(15.8%)など。なお、3.5%がCBDのみで加療していました。

311名のうち、70.7%はエピディオレックスを使用し、29.3%はドイツで標準化されたCBD(100mg/ml含有)オイルを使用。

服用開始量の中央値は3.2mg/kg/日(0.08〜20mg/kg/日)で、子どもでは3.3mg/kg/日(0.08〜20mg/kg/日)、大人では2.8mg/kg/日(0.77〜5.7mg/kg/日)でした。

CBDの増量は中央値2.8mg/kg/週(0.08〜10.6mg/kg/週)で行われ、最大投与量の中央値は全体で17.8mg/kg/日(2.5〜45mg/kg/日)。子どもの最大投与量の中央値は19mg/kg/日(最大45mg/kg/日)、大人は13.3mg/kg/日(最大32mg/kg/日)で、子供のほうがより高用量で使用されていました

エピディオレックスの添付文書によれば、最大投与量はドラベ症候群とレノックス・ガストー症候群に対しては20mg/kg/日、結節性硬化症に対しては25mg/kg/日となっていることから、一部の患者ではこれらを上回る量でCBDが使用されていたことが分かります。

CBDの有効性

フォローアップ期間の中央値は全体で15.8ヶ月(3日〜5.9年)。

研究期間中に治療を中断したのは30.5%。これらの患者の治療期間の中央値は6.2ヶ月(3日〜41.7ヶ月)で、18名の患者が3ヶ月以内に治療を中断していました。治療を中断した理由は十分な効果がみられない(19.6%)、副作用(9.3%)の他、服薬を遵守できない、健康保険の適用外、妊娠など。

期間中に治療を中断しなかったのは69.5%で、フォローアップ期間の中央値は21.4ヶ月(8日〜5.9年)。

311名のうち、61.7%が発作頻度の減少を報告。30.5%が50%以上の発作頻度の減少、6.4%が発作の完全消失を認めていました。なお、発作の完全消失を認めた患者の観察期間の中央値は、21ヶ月(3.1ヶ月〜5.7年)でした。

一方、23.2%では発作頻度に変化がみられず、8.7%で発作頻度の増加が認められていました。

有効性が認められなかった患者と比較して、CBDで発作頻度の減少が認められた患者では、有意にCBDの服用量が多かったことが明らかに。年齢やクロバザムの服用の有無で、治療効果に有意差は認められていませんでした。

てんかんの種類別でみても、発作の完全消失あるいは50%以上の発作頻度の減少は、エピディオレックスの適応症(ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症)では40.8%、それ以外のてんかんでは36.9%であり、両群間で有意差が認められていませんでした

なお、この研究では、抗てんかん薬で一般的に認められやすいハネムーン効果(服用開始時は有効性を認めるが、時間経過とともに効果が徐々に減少していくこと)についても検証されています。

3ヶ月以上CBDで加療した患者(209名)において、治療開始時と治療開始3ヶ月後で効果の程度に変化がみられたのかを評価したところ、41.6%では安定して治療効果が認められていましたが、21.5%では治療効果が減少していたことが分かりました(36.8%はデータ得られず)。

つまり、CBDも他の抗てんかん薬と同様に、ハネムーン効果が認められる可能性があるということになります。

CBDの副作用

半数近く(46.9%)がCBDによる副作用を報告。多かったのは注意力低下や疲労感(24.1%)、下痢などの胃腸障害(25.1%)で、重篤な副作用は認められていませんでした。

エピディオレックスにおいて起こり得る副作用である肝酵素の上昇は5名でのみ認められ、このうち4名はバルプロ酸ナトリウムを併用していました。

全体として、副作用の発症頻度とCBDの服用量との間で、相関関係は認められていませんでした

子どものほうが高用量で服用していた患者が多かったこと、2歳未満の子どもが含まれていたことを考慮すると、心強い結果と言えます。

上記以外に認められたCBDの効果

気分の改善(30.9%)、夜間の睡眠改善(24.1%)、発育や集中力の改善(12.5%)、食欲増加(11.3%)、痙縮の減少(34.8%:69名中24名)など。

まとめ

以上のように、ドイツにある16箇所のてんかんセンターでは、2歳未満の子ども、クロバザムを併用していない患者、様々な種類のてんかん患者に対してCBDが使用されており、ほとんどの患者(91.3%)がエピディオレックスの適応外となっていました。

そして適応外であったとしても、エピディオレックスの適応条件を満たす患者と比較して、CBDの抗てんかん作用に有意差が認められていませんでした。

つまり、今回の研究においてCBDの有効性に差が認められていたのは、CBDの使用量のみ(高用量であるほど効果が高い)ということになります。

また、子どもは大人よりも高用量で服用している患者が多くなっていましたが、CBDの使用量と副作用の発症頻度に有意差はなく、忍容性が良好であることも示されました。

これらの結果から、研究者らは以下のように結論付けています。

「薬剤抵抗性てんかんに対するCBDの抗てんかん作用は、他の多くの抗てんかん薬と同等であり、安全性も示された。クロバザムの併用はより良い結果とは関連せず、特に子どもにおいては、発作頻度の減少を達成するために必要なのは高用量のCBDであった。このことは、様々な種類のてんかんを有する子どもや大人にも当てはまる」

「私たちのデータは、他の種類(ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症以外)のてんかんや2歳未満の子どものために、CBDの適応を拡大することを目指す臨床試験の必要性を訴えるものである」。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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