「大麻使用者=怠け者」は誤り 固定観念を覆す研究結果

「大麻使用者=怠け者」は誤り 固定観念を覆す研究結果

- アメリカの観察研究

大麻の乱用は「無動機症候群」を引き起こすと言われています。無動機症候群とは、意欲ややる気が湧かず、毎日ずっと家でゴロゴロするといった状態のことを指します。

この背景から、多くの人は「大麻使用者=怠け者」という固定観念を持っているかもしれません。しかし、「Preventive Medicine Reports」に掲載された研究結果は、この固定観念を覆すものとなりそうです。

その理由は、大麻使用者が非使用者と同等、あるいはそれ以上に”活動的”であることが示されたからです。

この研究では、米国で2016〜2018年にかけ「Add Health」で収集された調査データを用いて、大麻使用者、電子タバコ使用者、その両方の使用者、非使用者との間で運動習慣に違いがあるのかが分析されました。

Add Healthで収集されたデータには、大麻や電子タバコの使用やその頻度に関する情報、運動に関する詳細な情報(運動の種類や頻度)などが含まれています。

対象年齢は33〜42歳で、解析対象に含まれたのは2,591名(非使用者1,684名、大麻使用者676名、電子タバコ使用者147名、大麻・電子タバコ使用者84名)。

大麻使用者は「過去30日以内に大麻の使用を報告した人」と定義され、それぞれライトユーザー(10日未満/月)、ミドルユーザー(10〜20日/月)、ヘビーユーザー(20日以上/月)に分類されました。

分析の結果、全体として大麻使用者、電子タバコ使用者、大麻・電子タバコ使用者、非使用者との間で、過去1週間の運動状況に差がないことが明らかに。

さらに、「運動のためのウォーキング」に関しては、大麻使用者で最も頻度が高いことが示されました(大麻使用者:平均2.51回/週、非使用者:2.26回/週、電子タバコ使用者:1.99回/週、大麻・電子タバコ使用者:1.93回/週)。

また、過去1週間の運動状況は大麻のライトユーザー、ミドルユーザー、ヘビーユーザーとの間でも有意差が認められませんでした。

大麻使用者でウォーキングの頻度が多かった理由について、著者は「運動への意欲や楽しみを高めるために大麻を使用する成人がいることや、大麻使用者が都市部に集中していることによるものかもしれない」と考察しています。

しかし、この調査は都市部の居住者のみを対象に実施されたものではなく、都市部と農村部のデータも特に区別されていません。

いずれにせよ、著者はこれらの結果について「成人の大麻使用者が非使用者に比べて運動量が少ないという固定観念を覆すものである」と述べています。

ただし、研究に用いられたデータには運動の強度や時間、1日の大麻の使用回数や使用タイミング、大麻の使用用途(嗜好または医療)や種類(THCCBD含有量)などの情報が含まれていないため、今回の結果は単純に解釈されるべきではありません。

運動という一つの側面ではありますが、今回の結果を聞いて、「大麻使用者=怠け者」と言うことは難しいでしょう。そして、このような知見は、大麻の使用が単純に無動機症候群を引き起こすわけではないことも示しています。

実際、ロンドン大学とケンブリッジ大学の研究チームは、週4日程度の大麻使用が無動機症候群の発症と関連しなかったことを報告しています

他にも、シドニー大学の研究者らによって公開されたシステマティックレビューでは、大麻使用が翌日のパフォーマンスに悪影響を及ぼすとするエビデンスは非常に限られており、アルコールと比べてもその可能性が低いことが示されています

また、全米経済研究所(NBER)は2022年末、嗜好用大麻の合法化が雇用や収入の低下と関連せず、むしろ部分的にこれらを増加させていたことを明らかにしています

なお、著者が考察したように、一部の大麻使用者は運動のために大麻を有効活用しています。

ケント州立大学とグランド・バレー州立大学の研究では、定期的に有酸素運動や筋トレを行っている大麻使用者を調査した結果、約9割が運動後の回復に大麻が役立つと回答

別のアメリカの研究では、運動により筋肉痛を誘発させた成人に大麻成分を含有した製剤を使用した結果、痛み、不快感、生活機能が有意に改善されたことが報告されています

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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