「無動機症候群」とは、意欲ややる気が湧かず、一日中家でゴロゴロするといった状態のことを指します。
大麻の使用はこの無動機症候群を引き起こす原因となると言われることがありますが、果たしてそれは本当なのでしょうか?
実はこれに関しては研究によって一貫性がなく、まだ結論が出ていません。
そんな中で今月24日、週4日程度の大麻使用が無動機症候群の発症に結びつかなかったことがイギリスの研究者らにより報告されました。
この研究では、成人(26〜29歳)と未成年(16〜17歳)のグループそれぞれにおいて大麻使用群と対照群に該当する参加者を募集し、大麻使用が無動機症候群と関連するのか、その影響は未成年と大人で異なるのかが検証されました。
「大麻使用群」は過去3ヶ月間週に1〜7回大麻を使用している人、「対照群」は大麻またはタバコを少なくとも1回使用したことはあるが今までの使用回数が10回未満である人と定義され、募集されました。
参加者は「大麻使用群」では未成年76名、成人71名、「対照群」では未成年63名、成人64名となり、大麻使用群における大麻の使用頻度は平均4日となっていました。
大麻使用と無動機症候群との関連を調べるために、参加者は意欲や報酬に対する感受性を評価されました。これはアンケートによりSHAPS、AESといったスケールを用いて評価することに加え、課題に対する行動を評価することによっても行われました。
SHAPS(Snaith-Hamilton Pleasure Scale)
アンヘドニアを評価するスケール。アンヘドニアとは、ポジティブな感情や喜びの感情を失い、報酬に対する感受性が低下した状態を指し、うつ病を中心とした精神疾患において認められる。高得点であるほどアンヘドニアであると判定される。
AES(Apathy Evaluation Scale)
アパシーを評価するスケール。アパシーとは、意欲や興味関心が失われた状態を指し、うつ病や認知症患者などにおいて認められる。スコアが高いほど、アパシーの度合いが高いことを意味する。
SHAPS、AESによる評価では、大麻使用群と対照群との間でスコアに有意差はなく、大麻の使用頻度と意欲低下・報酬に対する感受性の低下との間に関連が認められませんでした。なお、大麻の使用の有無に関わらず、未成年は成人と比較してこれらのスコアが高くなっていました。
行動による評価においても、大麻使用群と対照群で報酬に対する行動や意欲に有意差が認められませんでした。この評価では未成年と成人との間でも有意差が認められませんでした。
研究者らは「今回の研究において、週4日程度の大麻使用は無動機症候群とは関連しなかった。大麻使用者は『怠け者』という偏見を持たれることがあるが、今回の結果はこういったスティグマを払拭するのにも役立つだろう」と述べています。
一方、より長期の使用や毎日の使用、多量あるいは高濃度の使用では結果が異なる可能性があるため、今後も様々な研究により検証していく必要があります。