運動習慣のある大麻使用者の大多数が心身の回復に大麻が役立つと報告

運動習慣のある大麻使用者の大多数が心身の回復に大麻が役立つと報告

- アメリカの観察研究

8月5日、定期的に有酸素運動や筋トレをしている大麻使用者を調査した結果、大多数の人が運動後の回復に大麻が役立つと実感していたことがアメリカの研究者らにより報告されました。論文は「Journal of Cannabis Research」に掲載されています。

有酸素運動や筋トレが心身にポジティブな影響を及ぼすことは多くの人が知るところ。一方、運動後は筋肉や関節がダメージを負い、炎症反応や酸化ストレスが生じることから、過度な運動はかえって逆効果となってしまいます。

このような運動によるダメージを軽減するためには、運動量を適度に抑えることに加え、ストレッチやマッサージなどの日々のケアや、睡眠や入浴などによる休息が重要となります。そして近年、大麻が合法な国や州では、運動後のケアの選択肢として「大麻」が加わりつつあります。

これまでの研究により、大麻及び大麻に含まれるTHCCBDなどのカンナビノイドには、鎮痛作用抗炎症作用抗酸化作用などがあることが明らかとなってきています。さらには、運動後の回復に重要な「睡眠」にも有効な可能性が示されています

これらの効能から、大麻はプロアスリートからも注目を集めています。例えば、全米で最も高い人気を誇るスポーツのプロアメリカンフットボールリーグ「NFL」は、昨年から大麻やカンナビノイドの研究に資金提供を行っており、今年6月にもオピオイドの代替としてCBDの有効性を探る研究に出資しています

運動習慣のある大麻使用者を対象とした調査

米国のケント州立大学グランド・バレー州立大学の研究者らは、大麻が運動後の回復に有益かどうかを調べるために、有酸素運動や筋トレなどの運動習慣がある大麻使用者を対象としたオンライン調査を実施。

有効回答者数は111名(女性59%、平均31歳)。85%が有酸素運動、同じく85%が筋トレ、72%がその両方を定期的に行っていました。

有酸素運動を行っている人は主に週に3〜4日、31〜150分/日で中程度の運動をし、筋トレを行っている人は週に3日、31〜150分/週で強度の運動をしていました。

主にCBDを使用していた人は20名。使用歴は1〜3年(37%)が最も多く、CBD使用者の32%が毎日、50%が1日に1〜3回CBDを使用していると回答。消費形態はエディブルが最も多く(30%)、次いでベイプ(27%)、喫煙(25%)、チンキ剤(11%)、外用薬(7%)となっていました。

主にTHCを使用していた人は91名。使用歴はCBDと同様に1〜3年(44%)が最も多く、THC使用者の52%が毎日、76%が1日に1〜3回THCを使用。消費形態は喫煙が最も多く(40%)、次いでエディブル(30%)、ベイプ(26%)、チンキ剤(2%)、外用薬(1%)となっていました。

なお、行っていた運動の上位5つは両ユーザーとも共通しており、筋トレ、ランニング、ハイキング、ウォーキング、ヨガとなっていました。

大多数が大麻が運動後の回復に役立つと回答

全体で20%が有酸素運動後の回復のために、23%が筋トレ後の回復のためにCBDを使用したと報告。一方、THCではその割合が前者で61%、後者で60%となりました。

「CBDを含む大麻は回復に役立つと感じますか?」という質問に対し、93%が「YES」と回答。同じようにTHCについて質問したところ、87%が「YES」と回答しました。両者とも残りの回答は「分からない」で、「NO」と回答した人はいませんでした。また、回答者全員が大麻の使用について健康上のリスクが低いと感じていました。

CBDの使用動機について尋ねたところ、主に報告されたのは睡眠補助とリラックスであり、それ以外にも快適さや痛みの緩和といった理由が挙げられました。

THCの使用動機では主にリラックスが報告され、他にも快適さ、睡眠補助、鎮痛、抑うつや緊張の緩和、不機嫌な時に元気を出すためといった回答がみられました。

これらの結果から、研究者らは「本研究のデータは、個人が回復の一環としてCBD及び(または)THCを積極的に使用していることを示しています。さらに、参加者は有酸素運動とレジスタンス運動(筋トレ)後の両方の回復に大麻が役立つと感じていることを明らかにしました」

「データは不足しているものの、個人が大麻を使用し、大麻が運動からの回復にプラスの効果があると信じていることは明らかです本研究はより伝統的な回復方法に加え、大麻が回復のサプリメント(エルゴジェニックエイド)として定期的に運動する個人によって使用されていることを実証しました」と述べています。

一方、この研究はあくまで探索的なものであること、サンプルサイズが小さいこと、自己報告に基づいたデータによるものであることから、結論を導き出すことは難しいとし、今後もより多くのデータが必要であるとしています。

今回の研究に限らず、アスリートや運動習慣のある人にとって、大麻が有益となる可能性が示された報告は他にも存在します。

昨年公開されたアメリカの調査では、大麻と運動を組み合わせている人々の大多数が満足感、集中力、生産性といった面においてポジティブな効果を実感していると回答。他にも運動と大麻を組み合わせる理由として、集中力を高めるため(67%)、運動を楽しむため(66%)、心と身体のつながりを強めるため(65%)、ゾーンに入るため(62%)、身体への意識を高めるため(53%)といったことが挙げられました。

大麻合法州に住む605名を対象としたアメリカの調査では、81.7%が運動のために大麻を使用することを支持し、多くの人が大麻は運動をより楽しくし、回復力を高めてくれると回答。さらに、半数以上が大麻は運動の意欲を高めてくれると回答し、実際に大麻使用者は非使用者と比べ、週に行う無酸素運動・有酸素運動の時間が多いことが報告されました。

今年3月にアメリカの研究チームは、3ヶ月以上慢性疼痛を抱えるプロアスリート20名にCBDを主成分としたクリームを6週間使用してもらった結果、痛みや日常生活機能の改善が認められたことを報告

5月にはインディアナ大学の研究チームが、ヘディング後のサッカー選手において、大麻使用者では非使用者よりも脳へのダメージが少ないことを明らかにし、大麻がコンタクトスポーツにおいて有益となる可能性を報告しました

なお、バスケットボールの最高峰であるNBAは、今年7月1日より大麻を規制物質リストから除外。また、全米大学体育協会(NCAA)でも最近、大麻を禁止物質リストから除外するための動きがみられています

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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