大麻を吸い、運動する人たち

大麻の使用は運動にポジティブな影響を与える

大麻で「ハイ」パフォーマンスを得る

2022年5月18日、運動に大麻を組み合わせている人々を調査した論文が、アメリカの研究者らにより公開されました。

大麻の作用標的であるエンドカンナビノイドシステムは、運動と密接な関係にあります。

「ランナーズハイ」という言葉をご存知でしょうか?長距離ランナーによくみられる現象で、運動後や運動中に幸福感や高揚感を感じ、エネルギーが溢れてくるような感覚になることをいいます。さらにこの状態では痛みも軽減されることが知られています。

かつてこの「ランナーズハイ」は鎮痛作用や幸福感をもたらすβエンドルフィン(内因性オピオイド)によるものであると考えられてきました。ですがβエンドルフィンだけでは説明がつかず、矛盾する部分も存在しました。

2003年の研究において、中強度の運動負荷でエンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)が劇的に上昇することが明らかとなりました。エンドカンナビノイドは鎮痛作用をもたらすだけでなく、抗不安作用やリラックス作用、幸福感をもたらします。これらの作用はまさにランナーズハイと類似しており、この一連のことから現在ではランナーズハイにはエンドカンナビノイドシステムが関与していると考えられるようになっています

実際に大麻が運動にポジティブな影響を及ぼすという声は、海外のプロスポーツ選手からも聞かれています。このような背景も関係しているのか、大麻が合法化された国や州において、運動に大麻を組み合わせる人が増えてきているといいます。

今回の研究ではオンラインアンケートを通じて、一般の人々がどのように大麻と運動を組み合わせ、なぜ使用しているのかが調査されました。

有効回答者数は101名で、79%が18〜34歳、21%が35〜55歳でした。5年以上大麻を使用している人が多数を占め(74%)、多くの人(79%)が毎日大麻を使用していると回答しました。

運動と大麻を組み合わせる頻度について100%と回答した人は41%、75%と回答した人は23%でした。使用するタイミングは運動の少し前が87%で最も多く、55%が運動後少ししてから、43%が運動の数時間後、26%が運動中と回答しました(※複数回答可であり、合計が100%を超えています)。

大麻の使用方法として最も多かったのは喫煙(53%)で、次いでベポライザー(38%) でした。使用する大麻株として多かったのは、サティバ株(64%)、ハイブリッド株(46%)でした。

大麻を使用して行う運動として報告された上位5つの運動は、ハイキング(60%)、ヨガ(58%)、エアロビクス(51%)、ウエイトリフティング(44%)、ウォーキング(43%)でした。これらの運動においては特にサティバ株を使用していると報告した人が多くみられました。なお、これらの運動に対する熟練度については、大半が中級者(41%)または上級者(50%)と答え、初心者は4%にとどまりました。

運動に大麻を組み合わせる理由として多かったのは、集中力を高めるため(67%)、運動を楽しむため(66%)、心と身体のつながりを強めるため(65%)、ゾーンに入るため(62%)、身体への意識を高めるため(53%)でした。多数の人が運動に大麻を使用することで満足感、集中力、生産性といった面においてポジティブな効果を得られていると回答しました。

一方、予期せぬ症状や望んでいない症状がみられたと報告した人は25%で、具体的症状として多かったのは「ハイになりすぎて運動できなかった」「心臓がドキドキした」でした。

今回の研究では、一部で予期せぬ症状が報告されたものの、全体として運動に大麻を組み合わせることによりベネフィットを報告する人が多い結果となりました。この調査結果をもとに、今後大麻が運動に与える影響について調査を進め、ベネフィットとリスクを明らかにしていく必要があると研究者らは述べています。

運動のために大麻を使用している人105名に対しオンライン調査を行った2019年のアメリカの研究では、92%が運動前に大麻を使用し、77%がポジティブな効果を実感したと回答しました。大麻を併用した運動として多かったのは、ハイキング、ランニング、ヨガ、サイクリング、筋力トレーニングでした。使用理由として多かったのは、痛みの緩和、リラックス、集中力の向上などでした。

2019年のアメリカの別の研究では、605名にオンライン調査を行った結果、81.7%が運動のために大麻を使用することを支持し、多くの人が大麻は運動をより楽しくし、回復力を高めてくれると回答しました。さらに半数以上が大麻は運動の意欲を高めてくれると回答し、実際に大麻使用者は非使用者と比べ、週に行う無酸素運動・有酸素運動の時間が多いことも報告されました。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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