2022年5月19日、大麻使用者の社会性や道徳性を評価した論文がアメリカの研究者らにより公開されました。
この研究は、18〜24歳の大学生146名に対し質問表を中心とした心理テストを受けてもらうことによって行われました。大学生146名のうち大麻使用者は68名、非使用者は78名でした。
心理テストでは、向社会性(他者を助けたいという気持ち)、共感性、道徳性、攻撃性などが評価されました。
その結果、大麻使用者は非使用者と比べ、「向社会性」と「共感性」のレベルが有意に高いことが報告されました。道徳性においても、大麻使用者は「無害さ」「公正さ」のスコアが有意に高く、さらに「内集団バイアス(内集団びいき)」のスコアが低いことも示されました。
※内集団バイアス(内集団びいき)とは?
自分が所属する集団に対し好意的・肯定的な心理的傾向を指す。他の集団よりも自分の集団を高く評価したり、優遇したりすること。
攻撃性については、男性においては大麻使用者・非使用者間で有意差は認められませんでしたが、女性においては大麻使用者で攻撃性が有意に高いことが示されました。しかしこのスコアは大麻の使用頻度と相関性がみられなかったことから、この研究においては大麻が攻撃性を増加させるというよりは、もともと攻撃性が高い女性が大麻を使用していた可能性が高いと研究者らは述べています。
この研究結果から、健康な若年成人における大麻の使用が心理・社会面においてポジティブに作用していることが示されました。ただし、道徳性や社会性といった部分は思春期に形成されることが多いとも言われています。よって今後は、各年齢層あるいは疾患を持つ人を対象とした研究も実施する必要があると研究者らは述べています。
また、もし大麻が向社会性を促進するのであれば、行為障害(凶悪犯罪を犯すような精神状態などを指す)の補助的な治療として活用できるかもしれないとも述べています。
2018年のカナダの論文では、CB1、CB2受容体を欠損させたマウスでは攻撃性が増加することや、エンドカンナビノイドシステムの活性化が攻撃性を低下させることについて述べられています。
2018年のアメリカの論文では、医療用大麻使用者2830名を調査したところ、ポジティブな副作用としてリラックス(64%)、平和的になる(54%)、くつろぎ(38%)が報告されています。