日本のカンナビノイド市場:2023年の売上高240億円

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4月18日、イギリスに本社を置くグローバル市場調査会社「ユーロモニターインターナショナル」は、「日本のカンナビス市場最新トレンド」デジタルブックを公開しました

これによれば、日本のCBDを始めとした非精神活性カンナビノイド市場の売上高は、2023年に前年から49%増加し、240憶円に到達。国内ユーザーは約58万8,000人に上ると推定されています。

さらに、同社は日本の市場規模が世界と同様、「向こう5年間で売上が伸びる」と予想。日本のカンナビノイド市場の売上は2024年に約370億円となり、2028年には約1,130億円に達すると試算しています。

日本のカンナビノイド市場の売上高
出典:ユーロモニターインターナショナル

なお、矢野経済研究所のレポートでは、日本のCBD市場の規模は2021年で185億円に達し、2025年には830億円にまで成長すると予測されています。

ユーロモニターインターナショナルが市場の成長を予測した主な理由は、昨年末に大麻取締法の改正法案が可決されたことにあります。同法ではCBD市場に関する規制が明確化される見通しとなっていることから、UHA味覚糖チェリオコーポレーションに続き、今後様々な業界の大手企業が市場に参入すると予想されています。

また、「日本国内における健康・ウェルネス製品、特に睡眠の改善と鎮痛効果に対する需要の高まり」も、市場の成長に寄与すると同社は述べています。

日本で最も人気のあるカンナビノイド製品は「ベイプ製品」であり、市場の37%を占めています。ベイプ製品に次いで多く使用されていたのは、チンキ・スプレー製品(34%)、カプセル(15%)など。

「これらの製品は、睡眠の質を向上させたい消費者や、リラクゼーションを求めている消費者から特に人気を集めている」とレポートでは述べられています。

出典:ユーロモニターインターナショナル

また、日本では映画やNetflix、テレビの視聴時におけるCBDの使用が人気であると報告されています。

昨年の国会審議によれば、日本では2024年後半に高濃度CBD製剤「エピディオレックス」が医薬品承認される見込み。一方、市販のCBD製品(食品やサプリメントなど)も医薬品としての効能・効果を主張せず、今後国によって決定されるTHC制限値を遵守している限り、流通が認められる方針です。

CBDを含む化粧品に関しては、エピディオレックスが医薬品として認められた場合、「化粧品基準」に違反する可能性があります。ただし、厚生労働省の城医薬品局長は昨年、化粧品のCBD含有量に制限を設け、ポジティブリスト(原則として禁止されるが、例外として許されるもの)に位置づけることで、その流通を許可することを検討していると発言しています

なお、ユーロモニターインターナショナルのレポートでは、「CBDの化粧品への使用には承認に4,000~5,000万円のコストを必要とするため、CBDを含む化粧品の商品開発はハードルが高い」と述べられています。

また、このレポートでは、大量購入を可能とする大手企業と、細々と原料輸入を行う中小企業及び個人事業主との間に格差があることも指摘されています。そのため、成長を続ける企業がある一方で、最近では「市場から撤退する小企業も増えている」と述べられています。

カンナビノイド製品の流通チャネルとしては、ネット販売が重要な位置を占めており、2022年5月にはAmazon JapanがCBD製品の販売を開始したことにも言及されています。

CBD製品はセレクトショップやデパート、美容専門店などの実店舗でも販売されており、これらの製品を積極的に取り扱っている小売業者の例としては、ビープルやドン・キホーテが挙げられています。

レポートによれば、新たな顧客との直接的な交流を狙ったCBD専門店やCBDカフェも、東京を中心に増加しています。

このような中、改正法が施行されCBD製品の安全基準が明確化されれば、「コンビニエンスストアといった身近なチャネルでも、手軽に購入できるCBDドリンクなどの製品が販売されることで、CBDやその他非中毒性カンナビノイド製品販売の急速な拡大につながる可能性がある」とユーロモニターインターナショナルは述べています。

日本では「『ダメ。ゼッタイ。』普及運動」が浸透しており、大麻に対する否定的な見方が根強く残っています。

実際、ユーロモニターインターナショナルの2022年の調査では、日本の消費者の41%が大麻は非合法であるべきだと回答しており、「次に割合が高かったのはブラジルの15%とフランスの14%だった」と報告されています。

このような中、日本においてカンナビノイド市場が拡大しつつあることは、注目に値すると言えるでしょう。

PR TIMES「ユーロモニター「日本のカンナビス市場最新トレンド」を発表」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000131316.html

Euromonitor International「日本のカンナビス市場​最新トレンド」https://lp.euromonitor.com/white-paper/cannabis-in-japan/

矢野経済研究所「CBD製品市場に関する調査を実施(2022年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3013

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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