12月6日、参議院本会議において「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案」が賛成多数で可決されました。
同法案は11月14日に衆議院を通過。法案の舞台は参議院と移され、12月4日には参議院厚生労働委員会において承認されました。
参議院厚生労働委員長である比嘉奈津美議員(自由民主党)は、同法の趣旨と委員会での審議について簡単に説明。原案のまま修正されることなく、賛成多数で承認されたと述べました。
採決の結果、「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案」はほぼ満場一致で可決。これにて同法は正式に成立となりました。
同法では、大麻草の成分を抽出して製造された”大麻由来医薬品”の施用が可能となります。海外の合法国・地域とは異なり、嗜好用途でも用いられるようなジョイント、エディブル、ベイプ等の医療用大麻製品は利用できません。
すでに国内では一部の難治性てんかん患者に対する高濃度CBD製剤「エピディオレックス」の治験が開始されており、2024年後半には医薬品承認される見込みです。他にも国内でニーズがあれば、サティベックスやマリノールといった精神活性成分THCを含有した医薬品についても今後利用が可能になります。
大麻由来医薬品は”医療用麻薬”として施用させることから、大麻及び自然由来のTHCは麻薬及び向精神薬取締法[麻向法]の下で規制されます(化学合成由来のTHCはすでに麻向法で規制されている)。
これにより、これまで犯罪とされていなかった大麻の使用も刑罰の対象となり、大麻の使用・所持・譲渡・譲り受け等には7年以下の懲役が課せられます。
厚生労働省は大麻の使用に新たに罰則を設けることについて、若者の間で大麻検挙者が増加しているため、一次予防を強化することが必要であるとも強調しています。
なお、委員会審議ではハームリダクションに基づいた薬物政策についても提案されましたが、日本の薬物生涯経験率が欧米諸国と比較して極めて低いことを理由に、採用に至りませんでした。
大麻使用罪は尿中から検出されるTHC-COOH(THCの代謝産物)の濃度を証拠に運用されますが、この具体的な濃度については明かされていません。
衆議院厚生労働委員会での質疑によれば、この尿検査は任意であり、法執行機関が検査を行うためには逮捕令状が必要となります。また、海外で大麻を使用した場合でも、大麻を所持しておらず、直近で海外への渡航歴があり、国内での使用を裏付ける証拠がなければ、起訴されることはありません。
これまで違法な大麻は「大麻草の茎・種以外の部位」とされていましたが、今後は「THCを一定量以上含んだ大麻草やその製品」が違法な大麻として定義づけられます。ただし、THCが制限値以下でも大麻草の形状を有する製品に関しては、一般的に認められません(例えば、CBDの花製品の流通は不可)。
なお、THC制限値については現時点で規定されておらず、同法施行から1年以内に制定される政令により決定される予定。0に近い値に設定される見込みですが、海外の基準を参考にするだけでなく、パブリックコメントにてCBD事業者からも広く意見を募る予定とされています。
大麻の規制がTHC含有量を基準としたものに変更されることで、これまで実質不可能であったCBDの国内生産が可能となり、今後産業が拡大されることが見込まれます。
CBDを取り扱う事業者は各々責任を持って検査を行い、販売するCBD製品に含まれるTHC濃度が制限値以下であることを証明する必要があります。CBD製品に含まれるTHC残留値の検査方法については、今後国が統一的な方法を決定する予定です。
これに加え、行政は買上げ調査を通して、CBD製品の流通において規制が遵守されているかどうかを評価していく方針となっています。
現行の大麻取締法は「大麻草の栽培の規制に関する法律」という名称に改名されます。ここでは大麻草の栽培にあたり、目的別に応じた免許制度や規制についての規定がなされています。
大麻草の種子・繊維の採取を目的とした栽培は、栽培地のある都道府県知事から免許を取得することで可能となります(第一種大麻草採取栽培者免許)。THC含有量が制限値以内であれば、栽培する大麻草の品種に制限はありません。
現役の大麻農家ではすでに一定量のTHCを含んだ大麻草を栽培している可能性があるため、低THCの大麻栽培に切り替えるための移行期間が設けられる予定です。
大麻草の栽培に関しては、医薬品原料(CBDを始めとしたカンナビノイド等)の採取を目的とした「第二種大麻草採取栽培者免許」、大麻草の研究を目的とした「大麻草研究栽培者免許」もあり、これらの免許は厚生労働大臣から取得する必要があります。
大麻由来医薬品や大麻使用罪に関する規定は法律の公布から1年以内、大麻草栽培に関する規定は法律の公布から2年以内に施行される見込みです。
なお、法律の施行から5年後には、同法の再検討を行うことが規定されています。