大麻改正法が衆院で可決 れいわ新選組は反対声明を発表

大麻改正法が衆院で可決 れいわ新選組は反対声明を発表

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11月14日、「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案」が衆議院本会議にて賛成多数で可決。その一方、れいわ新選組は同法で新設される「大麻使用罪」に対し、反対を表明しました

日本政府は先月に同法案を閣議決定し、オンライン上で法案を公開。法案は今月10日の衆議院厚生労働委員会において原案のまま修正されず、賛成多数で承認されました

同法案は大麻草の産業利用や製剤化された大麻由来医薬品の施用を可能にするとともに、これまで存在していなかった”大麻使用罪”を創設することで、大麻の乱用を防止することを目的としています。

改正法では、これまで大麻草の茎・種以外を違法な”大麻”と定めていた「部位規制」から、精神活性成分THCの含有量を基準とした「成分規制」へと変更されます。

つまり、今後国内で違法とされる”大麻”は、一定量以上のTHCを含む大麻草やその製品となります。ただし、THCが基準値以下でも大麻草の形状を有する製品に関しては、一般的に認められません(例えば、CBDの花製品の流通は不可)。

違法とされる”大麻”は今後、「麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)」の下で”麻薬”として規制され、他の違法薬物と同様、使用・所持・譲渡・譲り受け等が発覚した場合、7年以下の懲役が課せられるようになります。

衆議院本会議では、田畑裕明厚生労働委員長が法案の趣旨と採決に至るまでの経緯を説明。採決の結果、法案は賛成多数で可決となりました。

法案は今後参議院にて審議が行なわれる予定です。

一方、れいわ新選組は同日、同法に対する反対声明を発表。

声明の中で、同政党は「医療目的での大麻の解禁は支持する」が、「『使用罪』の創設がなされ、これまで罰則のなかったものが、最長懲役7年と厳罰化される」ことに対しては、「重大な問題がある」と批判しました。

「国家が国民に対し、ある行為を犯罪行為とするとき、特に厳罰化する場合には慎重でなければならない。賛成、反対双方の意見を踏まえ、丁寧に議論することが重要である。しかし残念ながら、そのような真摯な取り組みは行われず、厳罰化を推し進めたようだ」

さらに、れいわ新選組は法案提出に至るまでに行なわれた有識者会議に対しても、”疑惑がある”と述べています。

「厚労省は、十数名の有識者から構成される会議体を2021年と2022年、2年連続で名前を変えて設置、大麻使用罪の創設について検討をおこなった。2021年の報告書では、使用罪創設に強く反対の意見を表明した委員は3名。2022年には同趣旨の新たな会議体が設けられたが、前年に反対を表明した委員はそこに1人も選ばれなかった」

「2022年の報告書では大麻使用罪について委員全員が賛成。その議論の中身をみても、政府は委員となる有識者を恣意的に選び、大麻使用罪創設ありきで議論を誘導した疑いが持たれる」

2021年の「大麻等の薬物対策のあり方検討会」では、「川崎ダルク支援会」の岡﨑重人理事長、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部で心理社会研究室室長を務める嶋根卓也氏、同じく国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所で薬物依存研究部部長を務める松本俊彦氏が、大麻使用罪に対し反対を表明。

その理由として、以下が挙げられました

・世界は薬物使用者に対するアプローチを”刑罰”ではなく”支援”へとシフトしていることから、使用罪の創設はその流れに逆行している。

・刑罰によるアプローチは大麻依存者の治療アクセスを妨げ、孤立を深め、スティグマ(偏見)を助長させる危険性がある

・使用罪の導入が大麻使用の抑制につながるというエビデンスは乏しい

・大麻検挙者の増加とともに暴力事件や交通事故、大麻使用関連の精神障害者が増加しているという事実は確認されていないことから、使用罪を創設する立法事実がない。

しかし、2022年に再度「大麻規制検討小委員会」という名前で法案の検討が行なわれた際には、これら3名が除外された新たなメンバー構成の下で、委員全員が使用罪の創設に賛成しました。

他にも、れいわ新選組は有識者会議で提出された資料についても、「恣意的な資料提供がなされていた」と批判。

例えば、2021年の検討会では、大麻合法化後における米国コロラド州の交通事故が増加したことが繰り返し言及された一方、「米国の合法化州全体を対象としたデータでは交通事故の増加は確認されないという重要な事実には、一切言及されなかった」と述べています。

また、れいわ新選組は、「ダメ。ゼッタイ。」の標語により大麻の有害性が強調されていること、大麻がその他のハードドラッグの使用の入り口となる”ゲートウェイドラッグ”とされていることに対しても、疑問を呈しています。

「世界的医学雑誌『ランセット』(2010年11月)に掲載された論文によると、薬物等の有害性の最大値を100とした場合、有害性が最も高かったのがアルコールの72。次いで、ヘロイン55、クラック・コカイン(主に結晶体)54、覚せい剤33、コカイン(主に粉末体)27、タバコ26と続く。そして、大麻の有害性はさらに低く、20である」

「この論文における有害性トップのハードドラッグ、アルコールに関して、日本では取り締まりどころか、24時間どこでも手に入れられる状態であり、多くの問題行動は、無礼講、酒の席でのこと、と免責される扱いである。業界団体の政治的影響力の大きさから規制することも難しいのであろう」

「2022年の大麻規制検討委員会報告書では『大麻がゲートウェイドラッグとなる』可能性に言及されている。そうであるなら、大麻による検挙者数の伸びに対して、他の薬物事犯の増加も見られるはずである」

「しかし、データの推移を見てみると現実には逆であり、覚せい剤の検挙人員は2012年11,842人から2022年6,289人と10年間で約半分に減少している。結果、薬物事犯全体の検挙人員も減少している」

「ちなみに、米国国立薬物乱用研究所は、『大麻はゲートウェイドラッグ』という説を否定したうえで『むしろアルコールやニコチンなどがゲートウェイドラッグとなっている可能性が高い』と指摘している」

以上の点を踏まえ、声明では以下のように述べられました。

「このような、使用罪創設先にありきでなりふり構わない議論の進め方の裏には、省内における部局の権限拡大や、予算獲得、使用罪創設による大幅な検挙実績の上積みなどの思惑が背後にあるのではないかと疑わざるを得ない。国民にとって有害な「ダメ。ゼッタイ。」なものは、もっと他にあるのではないのか」

「厳罰化を推進するならば、それに足る立法事実が必要である。しかし、それを満たさぬまま、恣意的な進め方で厳罰化を邁進することは認められない」

れいわ新選組は今後参議院の審議において修正案を提出し、大麻使用罪創設の削除を提案するとしています。

なお、れいわ新選組以外でも、日本共産党の宮本徹議員は11月10日に行なわれた衆議院厚生労働委員会において、大麻使用罪に対する反対を表明。

その理由として、「当事者や家族が相談したくても通報・逮捕を恐れて相談しづらくなり、治療につながりにくく、偏見・差別を助長し、社会復帰を妨げること」を挙げました

れいわ新選組「【声明】大麻取締法等改正案に反対する理由(れいわ新選組2023年11月14日)」https://reiwa-shinsengumi.com/comment/19391/

BuzzFeed Japan「大麻検討会とりまとめ『使用罪』創設については反対意見も明記 大麻医薬品使用にも道を開く提言」https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/cannabis-kentoukai-0611

日本共産党 衆議院議員 宮本徹のホームページ「2023年11月11日 衆院厚生労働委員会 『依存症治療に逆行』 大麻法改定案が可決 宮本徹議員反対」https://miyamototooru.info/17115/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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