日本政府が大麻法改正法案を閣議決定し、法案を公開

日本政府が大麻法改正法案を閣議決定し、法案を公開

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10月24日、日本政府は「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案」を閣議決定。同日、法案の内容が厚生労働省のウェブページにて公開されました。

現行の大麻取締法は1948年に施行されており、改正に向けた動きは75年ぶり。改正法案は現在行なわれている臨時国会の中で成立される予定です。

改正法案の趣旨は、「大麻草の医療や産業における適正な利用を図るとともに、その濫用による保健衛生上の危害の発生を防止すること」とされています。

具体的には、産業用大麻(ヘンプ)の栽培・利用を拡大し、大麻草由来の医薬品の利用を可能にするとともに、これまで犯罪とされていなかった大麻の使用を有罪とすることで、嗜好目的での大麻使用に抑制をかけるといった内容が含まれています。

現行の大麻取締法の第4条には、大麻から製造された医薬品を禁止する規定が存在していましたが、改正法ではこの項目を全て削除。これにより、現在すでに国内で治験が行なわれているエピディオレックスなど、国が承認した大麻由来の”医薬品のみ”が合法的に利用可能となります。

ジョイントベイプエディブルオイルなど、欧米の合法国で消費されているような多様な医療用大麻製品に関しては認められていません。

改正法では、”大麻草”はこれまで通り「カンナビス・サティバ・リンネ(L)」と定義され、”大麻”は「大麻草(その種子及び成熟した茎を除く)及びその製品(大麻草としての形状を有しないものを除く)」と定義されています。

これまで大麻に関連する活動(所持、栽培、販売、譲渡など)は「大麻取締法」の下で取締りが行なわれてきましたが、今後大麻の使用を含むこれらの活動は他の規制薬物と同様、「麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)」の下で取締りが行なわれることになります(※なお、化学合成由来のTHCに関しては、すでに麻向法で指定薬物とされている)。

このことは「大麻使用罪」の新設を意味しており、麻向法における麻薬の取締りに従い、大麻の使用・所持・譲渡・譲り受けには7年以下の懲役が課せられます。

一方、現行の大麻取締法は「大麻草の栽培の規制に関する法律」という名前に改められ、名前の通り大麻草の栽培に関する規則について規定されます。

つまり、今回の大麻改正法案では、”大麻”は「麻向法」、”大麻草”は「大麻草の栽培の規制に関する法律」により規制が行なわれることになります。

大麻草の栽培は、大麻草の種子・繊維及び医薬品原料(CBDを始めとしたカンナビノイド等)を採取する「大麻草採取栽培者」と、大麻草の研究を目的とした「大麻草研究栽培者」のみ可能となります。

大麻草採取栽培者はさらに、大麻草の種子・繊維の採取を目的とした「第一種大麻草採取栽培者免許」、医薬品原料の採取を目的とした「第二種大麻草採取栽培者免許」に分けられます。前者は栽培地のある都道府県知事、後者及び大麻草研究栽培者は厚生労働大臣から免許を受ける必要があります。

栽培される大麻草にはTHC含有量の制限値が設けられますが、現時点でまだ明確な数値は決められていません。

大麻由来医薬品や大麻使用罪の創設などは法律の公布から1年以内、大麻草採取栽培者に関する規定に関しては法律の公布から2年以内に施行される見込みです。

なお、改正法案では上記以外にも、主に以下のようなことが規定されています。

  • 天然由来か化学合成由来かを問わず、デルタ9THC及びその塩類、デルタ8THC及びその塩類は、明確に麻薬と定義される。科学的変化(代謝を除く)により容易に麻向法の別表第一に掲げる物(要は精神活性作用のある物質)を生成する物も麻薬と定義されるが、具体的に何を指すのかは不明。

  • 保健衛生上の危害が発生しない量として今後政令が定める量よりも少ないTHC(具体的な含有量は不明)を含む物、またはTHCを含まないものは麻薬から除外される。

  • 大麻草栽培者以外の人が個人使用目的で大麻草を栽培した場合、1年以上10年以下の懲役が課せられる(現行法では7年以下の懲役)。営利目的の場合では、1年以上の有期懲役及び情状により500万円以下の罰金が課せられる。

  • 大麻草採取栽培者免許を受けられない人として、麻薬中毒者、禁錮刑以上の刑に処せられた人、未成年、心身の障害により適正に業務を実施できない者として厚生労働省令に定められている者、暴力団員あるいは暴力団員でなくなってから5年以内の者などが挙げられている。

  • 大麻草採取栽培者は毎年1月31日までに、大麻草の作付面積、採取した大麻草の繊維の数量、当該年の初め及び前年の末日に所持した大麻草の品名・数量、前年に採取または譲り受けた大麻草の品名及び数量、発芽可能な種子の品名及び数量等を、都道府県知事に報告しなければならない。

  • 大麻草の廃棄、栽培地外への持ち出し、盗難があった際にも、都道府県知事への報告が必須となる。

  • 大麻草研究栽培者に関しても、同上の内容を厚生労働大臣に報告しなければならない。

  • 大麻草採取栽培者免許の有効期限は発行日から翌々年の12月31日、大麻草研究栽培者免許では発行した年の12月31日であり、随時更新が必要となる。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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