2022年6月10日、CBD(カンナビジオール)を主成分とした全草抽出物(フルスペクトラムオイル)が電位依存性ナトリウムチャネルを強力に阻害したことがオーストラリアの研究者らにより報告されました。
てんかんは脳の神経細胞が過剰に興奮することにより発作が起こる病気であり、この興奮の一部を媒介するのが電位依存性ナトリウムチャネルです。よって電位依存性ナトリウムチャネルの阻害作用は神経細胞の興奮を鎮め、てんかん発作を抑制することを意味します。
欧米を始めとした一部の国々では、難治性てんかんに対し「エピディオレックス」と呼ばれる高濃度のCBDを含有した大麻由来医薬品が使用されており、有効性も示されています。CBDによる抗てんかん作用のメカニズムはまだ明らかになっていませんが、その1つとして電位依存性ナトリウムチャネルの阻害作用が挙げられています。
今回の研究は、電位依存性ナトリウムチャネルの遺伝子を発現する細胞株に対しCBDを主成分としたAnanda Hemp社のフルスペクトラムオイルを使用することにより行われました。この製品1gあたりに含まれていたカンナビノイド、テルペンは以下の通りです。
カンナビノイド
CBD18.3mg、THC(テトラヒドロカンナビノール)3mg、CBDA(カンナビジオール酸)1.4mg、CBN(カンナビノール)0.3mg
テルペン
αピネン1.6mg、Dリモネン0.6mg、βリナノール2.1mg、βカリオフィレン3.1mg
その結果、CBDを主成分としたフルスペクトラムオイルは強力に電位依存性ナトリウムチャネルを阻害し、その効果は少なくともCBD単体の10倍以上であることが示されました。
これまでの研究において、電位依存性ナトリウムチャネルの阻害作用はTHCやリナノールにおいても示されています。
よって今回のフルスペクトラムオイルによる強力な阻害作用は、CBDだけでなく大麻に含まれる様々な成分による相乗効果(アントラージュ効果)により認められた可能性があります。
今回の結果を受け研究者らは、CBDを主成分としたフルスペクトラムオイルはCBD単体よりもてんかんに対し高い治療効果をもたらす可能性があり、一方で副作用を引き起こすリスクも上昇させるかもしれないと述べています。そして今後はこのオイルに含まれるCBD以外のカンナビノイドやテルペンそれぞれの作用や相互作用について解析していく必要があるとしています。
難治性てんかんに有効性が示されているエピディオレックスに含まれる大麻の有効成分はCBDのみであることから、今後の研究に期待が高まります。