CBDとEPAの組み合わせが強力なアンチエイジング効果を発揮 化粧品として有望な可能性

CBDとEPAの組み合わせが強力なアンチエイジング効果を発揮 化粧品として有望な可能性

- イスラエルの研究

6月1日、大麻成分「CBD」とオメガ3脂肪酸「EPA」を含有したジェルが細胞株、皮膚サンプル、人において強力なアンチエイジング効果を発揮したことがイスラエルの研究者らにより報告されました。論文は「Journal of Cosmetic Dermatology」に掲載されています。

CBDは大麻に含まれる成分「カンナビノイド」の1つであり、慢性疾患における医療効果だけでなく、美容においても注目を集めています。CBDなどのカンナビノイドはCB1受容体CB2受容体に直接的あるいは間接的に働きかけることで生理活性作用をもたらすと考えられており、これらの受容体は皮膚においても存在が確認されています。その結果、CBDはにきび、紫外線対策、湿疹、アトピー性皮膚炎などにおいて有望視されています

EPA(エイコサペンタエン酸)は必須脂肪酸(体外からしか摂取できない脂肪酸)であるオメガ3脂肪酸の1つで、青魚などに多く含まれています。EPAは動脈硬化を予防することで良く知られていますが、美容においても効果が期待されています。なお、内因性カンナビノイドのいくつかはオメガ3脂肪酸に由来しています(アナンダミドや2-AGといった主要な内因性カンナビノイドは必須脂肪酸である「オメガ6脂肪酸」に由来)。

今回イスラエルの研究チームは、CBDとEPAを含有したジェルを用いてアンチエイジング効果を検証。表皮細胞、人の皮膚サンプルを用いた検証に加え、実際に中年女性に約2ヶ月間使用してもらうことで有効性が調べられました。

CBDとEPAが相乗作用し、炎症を抑制

「レジャー紫外線」と呼ばれるUVBを表皮細胞(HaCaT細胞)に照射し、炎症を誘発。これにCBDとEPAを使用することで、抗炎症作用が検証されました。評価は炎症によって産生されるプロスタグランジンE2(PGE2)とインターロイキン8(IL-8)の2つのバイオマーカーを測定することで実施。

その結果、CBD単独でもPGE2とIL-8の抑制は可能でしたが、EPAを同比率で加えることでこの抑制効果は2倍以上となり、CBDとEPAが相乗作用することが確認されました。

人の皮膚サンプルにおいても高い効果

人の皮膚サンプルにUVBを照射し、これに対するCBDとEPAの有効性を検証。

UVBは皮膚サンプルの生存率を約40%低下させましたが、CBDとEPAを組み合わせた製剤の使用により、UVBを照射していない正常な皮膚と同レベルにまで改善。

また、表皮細胞と同様、CBDとEPAの組み合わせはPGE2やIL-8を劇的に減少させました。

これらの効果はプラセボ(偽薬)と比較して明らかに有意でしたが、ポジティブコントロールである日焼け止め「サンスクリーン」と「PABA」よりは劣る結果となりました。

中年女性において、アンチエイジング効果を実証

基礎研究において有望な結果が示されたため、人に対する有効性も検証されました。

研究対象となったのは、小じわなど老化の兆候が見られ始めた45〜65歳の女性33名。参加者はCBDとEPAを配合したジェルを朝晩1回ずつ顔に塗布するよう指示されました。

様々な画像解析や超音波検査などにより、皮膚のシワ、ざらつき、潤い、弾力、ハリ、紅斑などを評価(ベースライン、使用28日目、使用56日目に実施)。また、参加者は使用28日目と56日目において、薬剤に対する満足度を0〜10の11段階(数値が大きいほど満足度が高い)で自己評価するよう求められました。

その結果、時間経過とともに目元や目尻のシワが有意に減少。超音波検査では加齢により広がるとされる領域「subepidermal low-echogenic band(SLEB)」が56日目において劇的に改善。顔の皮膚状態の画像解析「VISIA-CR」では、56日目において15%の改善が認められました。

また、皮膚の弾力性、潤い、ハリ、紅斑の減少についても時間経過とともに改善が示され、これらのことから研究者らは、CBD・EPA配合ジェルは長期使用が望まれるとしています。

参加者に対するアンケートでは、約7割が「8〜10」と高い満足度を報告しました。

これらの結果から、研究者らは「本研究の結果は、新たに開発したジェルが加齢に関連した兆候の軽減に有効であることが示しています」「開発したEPA-CBDクリームによる皮膚の潤いと弾力の増加、シワの改善は、これらの薬剤のアンチエイジングと美容上の有益な使用に関する最近の知見と相関しています」と述べています。

美容におけるCBDの有望性については、これまで様々な研究報告がなされています。

同研究チームは最近、CBD・ツボクサエキス・シリマリンの組み合わせが、細胞株と皮膚サンプルにおいて抗炎症作用を発揮したことも報告。さらに、軽度〜中等度のにきびを有する15〜40歳の男女30名に対し、これらを配合した局所製剤(各1%ずつ含有+サリチル酸0.5%)を56日間(2〜3回/日)使用した結果、にきびの重症度の低下、アクネ菌の代謝産物であるポルフィリンの顕著な減少が認められ、主に炎症性のにきびに対し有効となる可能性が示されました。

2014年の研究では、皮膚腺細胞や皮膚サンプルにCBDを使用することで、皮脂の生成抑制、皮脂腺細胞の増殖の抑制、抗炎症作用が認められ、にきび治療における有望性が示されました。

日本の星薬科大学の研究チームは2021年、ヘアレスマウスにCBD溶液を14日間塗布した結果、皮膚におけるアクアポリン3が対照群(プロピレングリコールとジメチルスルホキシドを含む溶液)よりも有意に高くなり、CBDに保湿効果があることを明らかにしました

2022年のアメリカの研究では、20〜53歳の男女10名に対し、水溶性CBD300mgにシワ・にきびの改善が期待される成分「レチノール」を0.2%を加えた局所製剤を42日間使用することで、主に毛穴、しわ、皮膚表面の粗さ、色素沈着などの改善が認められています。また、参加者のうち90%が顔の小じわの減少・肌のキメや滑らかさの改善、70%が毛穴の大きさの改善を報告するとともに、100%が顔の見た目に自信が持てるようになったと報告しています。

中国の研究者らは昨年、細胞やマウスを用いた研究において、CBDがUVBに対し保護作用を示したことを報告

2020年の研究では、軽度〜中等度の頭皮乾癬及び脂漏性皮膚炎(頭皮などで赤みやフケを伴う炎症)を有する18〜61歳の男女50名に、CBD0.075%を配合したシャンプーを14日間使用してもらった結果、赤み、フケ、かゆみ、ほてりなどが有意に改善し、高い満足度が認められたことが報告されています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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