CBD軟膏の使用により口内炎が改善 ステロイドの代替となる可能性も

CBD軟膏の使用により口内炎が改善 ステロイドの代替となる可能性も

2月20日、大麻成分CBDを含有した軟膏が再発性アフタ性口内炎(RAU:Recurrent Aphthous Ulceration)に有効性を示した報告が「BMC Complementary Medicine and Therapies」に掲載されました

アフタ性口内炎は口唇、頬の内側、舌などの口腔粘膜に「アフタ」と呼ばれる潰瘍かいようを繰り返し発症する疾患で、小児期や20〜30代の女性に好発。アフタとは、直径数ミリ〜1cm程度の円形あるいは楕円形の浅い潰瘍(まれに1cmを超えるものもあります)のこと。潰瘍部分は灰白色〜黄白色の膜状のもので覆われ、潰瘍周囲は炎症により紅斑を認め、少し触れるだけで強い痛みを伴います。

明らかな原因は不明で、遺伝、喫煙、過労、胃腸障害、食生活の乱れ、ビタミン不足、細菌やウイルス感染、アレルギー性疾患や免疫異常などが複雑に絡み合っているとされ、炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)やベーチェット病などの全身性疾患でも認められます。

アフタ性口内炎に根治治療はなく、主にステロイド軟膏、噴霧薬、うがい薬などを用いた対症療法が行われます。状況に応じて鎮痛剤、ビタミン剤、抗アレルギー薬なども使用されます。これらの治療をしなくてもアフタ性口内炎は1〜2週間で自然治癒しますが、その間痛みと闘う必要性が生じ、食事にも大きな影響が出るため、大幅なQOL低下を招きます。

ステロイド軟膏は免疫抑制作用があるため、口腔カンジタ症やその他の感染症を引き起こすリスクがあり、別の代替療法が求められています。そんな中で注目されているのが、抗炎症作用や鎮痛作用を有する「CBD」です。

今回の研究は、タイで最も古い歴史を有する国立大学チュラロンコン大学の研究者らにより実施された臨床試験です。0.1%のCBDを含む軟膏の安全性とアフタ性口内炎に対する有効性評価のため、以下の3つの試験が実施されました。

  1. 健康な人の皮膚におけるCBDのパッチテスト
  2. 健康な人の口腔粘膜におけるCBDの安全性評価
  3. RAUに対するCBDの有効性検証

健康な人の皮膚におけるCBDのパッチテスト

パッチテストは使用する物質や薬剤が皮膚にアレルギー症状を引き起こすかどうかを調べるもので、髪のカラーリング剤などで経験した人もいるかと思います。

ここでは、CBD軟膏のアレルギー反応を調査するため、健康な参加者100名(男性50名、女性50名、18~65歳)の背中でパッチテストを実施。

その結果、CBD塗布部位においてアレルギー反応や皮膚炎を起こした被験者は誰もいませんでした。

健康な人の口腔粘膜におけるCBDの安全性評価

50名の被験者(男性25人、女性25人、18~65歳)に対し、CBD軟膏を1日に3回(毎食後)、専用スプーンを用いて下唇粘膜に7日間塗布。CBD軟膏の使用前後に口腔内検査、バイタルサイン測定、血液検査を実施することで、安全性が評価されました。

全ての被験者で口腔粘膜における異常所見・報告はなく、バイタルサインや血液検査データも7日間安定経過し、肝機能障害の兆候も認められませんでした。

アフタ性口内炎に対するCBDの有効性評価

アフタ性口内炎を有する患者72名が参加。48時間以内に形成された直径2〜10mm程度の軽度のアフタ性口内炎が対象となり、ベーチェット病やクローン病など、全身性疾患の症状として出現した潰瘍は除外されました。

患者は24名ずつ、CBD軟膏群(以下、CBD群と表記)、トリアムシノロンアセトニド群(以下、ステロイド群と表記)、プラセボ(偽薬)群の3群に割り当てられました(CBD群で1名、ステロイド群で2名が途中で試験を離脱)。CBDの有効性を正しく評価するため、治療者と患者は、どの薬剤を使用しているのか把握できないよう盲検化されました。

軟膏は1日3回(毎食後)7日間、目盛り付きの専用スプーンを用いて患部に塗布されました。

有効性は潰瘍の大きさ(0日目、2日目、5日目、7日目に測定)、痛みの程度(VASスケール)、主観的満足度(0〜10で評価、数値が高いほど高評価)、QOLの程度(口腔関連のQOLを評価するOHIP-14、スコアが高いほどQOLが低いことを示す)により評価されました。

その結果、プラセボ群では潰瘍の大きさがベースの状態から5日目に約175%、7日目には約140%(5日目より35%減少し、自然治癒し始めたことを意味)増大したのに対し、CBD群とステロイド群では2日目以降から縮小が認められました。CBD群ではプラセボ群と比べ、5日目に潰瘍の大きさが100%近く縮小し、潰瘍周囲の紅斑範囲(炎症の程度を示す指標)も2日目に40%縮小していました。

統計分析の結果、CBDとステロイドは、全ての時点でプラセボよりも潰瘍の大きさを有意に縮小させていたことが明らかに。潰瘍周囲の紅斑範囲に関しては、CBDはプラセボと比べ2日目のみ大幅な縮小を認め、ステロイドは全ての時点で縮小を認めていました。CBDはステロイドに比べ、潰瘍および潰瘍周囲の紅斑範囲を縮小させていましたが、統計的に有意な差は認められませんでした

全体として、プラセボ群では7日目、投与前より潰瘍及び潰瘍周囲の紅斑範囲が増大していましたが、CBDとステロイドは全ての時点でこれらを縮小させ、自然治癒よりも優れていることが明らかとなりました。

痛みに関しては、プラセボ群では1〜2日目に著しく増強し、3日目から徐々に減少。一方、CBD群とステロイド群では1日目より痛みの減少が認められました。統計分析ではプラセボ群と比べ、ステロイド群では4、5、7日目において、CBD群では5日目において有意に痛みが減少。CBD群とステロイド群との間で、痛みの減少の程度に有意差は認められませんでした

治療による満足度も、CBD群(7.48)とステロイド群(8.32)は共にプラセボ群(平均6.17)より高くなっており、CBD群とステロイド群で有意差は認められませんでした。

口腔関連QOLはプラセボ群(-17.71)、ステロイド群(-19.59)、CBD群(-19.83)で3群とも改善が認められ、3群間でほとんど差がありませんでした。

まとめ

今回の研究では、まず2つの試験により、皮膚と口腔粘膜においてCBD0.1%を含む軟膏が安全であることが確認されました。

メインとなるアフタ性口内炎患者を対象とした臨床試験においては、CBDは潰瘍の治癒を促進し(潰瘍の大きさの縮小)、炎症を軽減し(潰瘍周囲の紅斑範囲の縮小)、さらには痛みの緩和、高い満足度、QOLの改善を示しました

これらの結果から研究者らは、ステロイド外用薬の使用を拒む患者や副作用が認められた患者では、アレルギーなどCBDが禁忌となる場合を除いて、CBD軟膏を使用することが適切となる可能性があると結論づけています。

2022年末には、指定難病となっている膠原病「全身性強皮症」患者の潰瘍において、CBDの局所使用が有効性を示したことがイタリアの研究者らにより報告されています

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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