NFLが大麻成分CBDの研究に出資 オピオイドの代替として期待

NFLが大麻成分CBDの研究に出資 オピオイドの代替として期待

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6月22日、全米で最も高い人気を誇るプロスポーツであるプロアメリカンフットボールリーグのNFLとNFL選手会(NFLPA)は、オピオイドに替わる革新的な鎮痛方法を検証する2つの研究のために、総額52万6,525ドル(約7,500万円)の資金提供を行ったことを発表。この中には、大麻成分CBDがオピオイドの代替として有効なのかを検証する研究が含まれています。

NFLの選手によくみられる「外傷後頭痛(PTH)」は、脳震盪や外傷性脳損傷(TBI)後に生じる最も一般的な後遺症の1つであり、薬物療法やその他の治療ではあまり有効性が認められないとされています。

このような中、大麻に含まれる成分CBDはこれまでの研究により、鎮痛作用神経保護作用を有することが明らかにされてきています。

「難治性脳震盪後頭痛の非侵襲的治療に関する予備調査(A Pilot Study Assessing Non-Invasive Treatment of Refractory Post-Concussion Headache Pain)」と題された研究では、外傷後頭痛を有するコンタクトスポーツ選手に対し、CBDと非侵襲的迷走神経刺激法(nVNS)がオピオイドの代替として有効なのかが検証されます。

この研究のためにNFLから資金提供を受けた米国疼痛神経科学学会(ASPN)によれば、この研究は外傷性頭痛に対するCBDの有効性を検証する初のランダム化比較試験となります。ランダム化比較試験とは、対象者をランダムに2つのグループに振り分け、一方のグループで効果を検証したい治療を、もう片方のグループでプラセボ(偽薬)などを用いたその他の治療を行い、グループ間で治療効果を比較することで有効性を検証する臨床試験のことです。

NFLの主席医務官であるアレン・シルズ(Allen Sills)医師はプレスリリースで、「NFLの選手たちが最善の治療を受けられるよう、私たちは常に新しい知識、技術、ツールを求めています」「CBDやその他の代替手段の使用が選手の疼痛管理にどのようにプラスの影響を与えるかについて、率先して調査することを誇りに思います」「選手の健康と安全という広い範囲内において、私たちが自由に使えるあらゆる治療法が、より広く使用されるための適切な医学基準をクリアしていることを確認したいと考えています」とコメント。

NFL-NFLPA疼痛管理委員会の共同委員長であるジェフリー・リング(Geoffrey Ling)氏は「これらの研究への資金提供は、最終的にフィールド外でのNFL選手の助けとなる進歩につながります」「選手の健康と安全はNFL選手会にとって常に最優先事項であり、NFLとの共同疼痛管理委員会の活動は、この使命を果たすための重要な部分です」と述べています。

同じく共同委員長であるケビン・ヒル(Kevin Hill)医師も「これらの研究が、プロフットボールにつきものの痛みを選手が管理するのに役立つことを願っています」と想いを表出しています。

なお、NFLは昨年にもカンナビノイドの研究のために、カリフォルニア大学サンディエゴ校レジャイナ大学に100万ドル(約1億4,300万円)の資金提供を行っています

カリフォルニア大学サンディエゴ校は、プロアスリートにおける競技後の軟部組織損傷による痛みに対し、THC、CBD、THCとCBDの併用がそれぞれ有効で安全なのかを検証。レジャイナ大学は、脳震盪後の諸症状に対するCBDやTHCなどのカンナビノイドの鎮痛作用と神経保護作用を評価する研究を実施しています。

これまでの研究により、大麻やCBDなどのカンナビノイドは、スポーツの中でも特にコンタクトスポーツにおいて有益となる可能性が示されています。

今年3月にアメリカの研究チームは、3ヶ月以上慢性疼痛を抱えるプロアスリート20名にCBDを主成分としたクリームを6週間使用してもらった結果、痛みや日常生活機能の改善が認められたことを報告

5月にはインディアナ大学の研究チームが、ヘディング後のサッカー選手において、大麻使用者では非使用者よりも脳へのダメージが少ないことを明らかにし、大麻がコンタクトスポーツにおいて有益となる可能性を報告しました

このようなポジティブな報告がなされる中、プロスポーツ界では大麻に関する規則が緩和されてきています。例えば、NFLの選手は2020年より、大麻に限らず全ての薬物で陽性反応が出ても、試合出場停止処分を受けることがなくなっています

世界最強のファイターが集うアメリカの総合格闘技団体UFCは2021年、薬物検査で大麻の陽性反応が出たことを理由にファイターを罰しないことを発表

他にも、メジャーリーグベースボール(MLB)が2020年に大麻を禁止物質リストから除外し、この決定は最近NBAにおいてもなされました

さらに今月半ばには、大学スポーツ競技を統括する組織である全米大学体育協会(NCAA)が、大麻を禁止物質リストから除外することを支持し、規則の変更に向け動き出すことを明らかにしています

※為替は記事公開時点のレートで計算しており、リンク先の記事と日本円の数字が異なることがあります。最新の米ドル・円の相場はこちら

Official Site of the National Football League「NFL, NFLPA commit additional half-million dollars to fund studies of innovative pain management solutions, including CBD」https://www.nfl.com/news/nfl-nflpa-commit-additional-half-million-dollars-to-fund-studies-of-innovative-p

Marijuana Moment「NFL Is Putting More Money Into Research On CBD As An Opioid Alternative For Players With Concussions」https://www.marijuanamoment.net/nfl-is-putting-more-money-into-research-on-cbd-as-an-opioid-alternative-for-players-with-concussions/

Official Site of the National Football League「NFL Awards $1 Million to Study Impact of Cannabis and CBD on Pain Management」https://www.nfl.com/news/nfl-awards-1-million-to-study-impact-of-cannabis-and-cbd-on-pain-management

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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