骨盤痛を有する女性、大麻の使用で痛みやQOLが改善 鎮痛薬の減薬も

骨盤痛を有する女性、大麻の使用で痛みやQOLが改善 鎮痛薬の減薬も

- カナダの観察研究

3月30日、慢性骨盤痛を有する女性が大麻の使用により、痛み、精神面、QOLなど様々な面でポジティブな効果を得ていたことがカナダの研究者らにより報告されました。この論文は医学雑誌「European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biology:X」に掲載されています

慢性骨盤痛とは、一般的に6ヶ月以上持続する骨盤内の痛みのことで、女性の2~24%に認められると言われています。子宮内膜症、子宮腺筋症、性感染症など原因が明らかなものもありますが、多くは明らかな器質的疾患を伴わない原因不明のものとなっています。慢性骨盤痛は痛みだけでなく、精神面やQOLにも悪影響を及ぼします。

今回研究を行ったのは、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学(University of British Columbia)の研究チーム。骨盤痛センターに通院中の女性を対象に調査が行われました。

調査は大麻使用者と非使用者の回答者数がほぼ同じ割合になるように実施。大麻使用者では大麻の有効性や安全性、大麻の使用パターンなどが、非使用者では大麻使用に対する意思などの回答が求められました。

なお、この研究で大麻使用者は、医療または嗜好目的で現在大麻を使用する習慣がある人と定義されています。

有効回答者数は135名(平均年齢38.2歳)。骨盤痛に関連する疾患として最も多かったのは子宮内膜症(71.9%)で、次いで過敏性腸症候群(26.7%)、その他(15.6%)、子宮腺筋症(11.1%)。50%が膣表層の性交時痛、72.6%が膣深部の性交時痛を有していました。

大麻使用者は回答者の57%で、使用目的として多く挙げられたのは、骨盤痛の緩和(79.2%)、その他医療目的(49.4%)、嗜好目的(55.8%)でした。

骨盤痛の緩和目的で大麻を使用した女性の多く(77%)が、従来の治療法で十分な効果が得られなかったために大麻を使用し始めたと回答。それ以外にも、自然療法を好む(63.9%)、骨盤痛に大麻を試した人からの推薦(32.8%)といった理由が挙げられました。

大麻使用者の48.1%が毎日、18.3%が週1回以下の頻度で大麻を使用。大麻にかける平均月費用は126.3カナダドル(約12,600円)。ほとんどの女性(82%)が夕方以降(19〜23時)に大麻を使用していました。

最も使用された大麻製品は、乾燥大麻(68.9%)、エディブル(60.7%)、局所使用(54.1%)。ほとんど(86.9%)がCBDTHCを両方含む製品を使用し、CBDのみ(8.2%)、THCのみ(1.6%)の製品を使用した女性は少数でした。

骨盤痛に対する大麻の鎮痛効果を0(全く効果がない)〜10(最も効果がある)の11段階で評価してもらった結果、大麻使用者の68.9%が7以上であると回答。さらに、73.8%が大麻の使用により鎮痛薬の使用を減らしたと回答しました。

それ以外にも、気分(75.4%)、睡眠(91.8%)、身体的健康(62.3%)、身体の可動性(70.5%)、メンタルヘルス(77%)、家庭生活(67.2%)、QOL(96.7%)において改善が報告されました。

大麻使用者の31.1%が大麻の使用により副作用を経験。具体的には、望まない高揚感(36.7%)、注意力の低下(36.8%)、めまい(26.3%)、不安(26.3%)が挙げられました。

続いて、大麻の非使用者(43%)に対する調査。

非使用者のうち63.8%が、骨盤痛に対し大麻を使用する意思があると回答。大麻を使用する意思がない理由としては、情報不足(47.6%)、望まない副作用(42.9%)などが挙げられました。

なお、非使用者のうち56.9%が過去に何らかの理由で大麻を使用していましたが、大麻に対する興味の喪失(54.5%)、望まない副作用(30.3%)、有効性の欠如(18.2%)などを理由に使用を止めていました。

大麻使用者、非使用者ともに、婦人科用の大麻製品があれば使用したいと回答。膣錠では大麻使用者の88.3%、非使用者の72.9%が、膣内用クリームでは大麻使用者の75.4%、非使用者の75.6%が、外陰部用クリームでは大麻使用者の82.9%、非使用者の83.4%が使用に前向きな回答をしました。なお、このような製品は現時点でカナダでは販売されていません。

これらの結果から研究者らは、骨盤痛を有する女性の多くが大麻による自己治療を行っているとし、今後科学的な研究のもとで効果を裏付ける必要があると述べています。

慢性骨盤痛を有する女性89名を対象としたアメリカの調査では、17名が骨盤痛の緩和目的で過去あるいは現在に大麻を使用したと回答し、17名全員が「役に立った」と報告しています。

子宮内膜症の女性を対象としたカナダの調査では、大麻の使用により骨盤痛、胃腸障害、けいれん、吐き気、抑うつなどの症状が改善されたことが報告されています。

2023年3月8日の国際女性デーに公開されたアメリカの調査では、回答者1,021名のうち37%が大麻の使用を報告。使用理由として、不安の解消(60%)、睡眠の補助(58%)、痛みの緩和(53%)などが挙げられました。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

Recent Articles

カナダの大麻取締法見直し

2018年に施行され、大麻を禁止する事から規制するという方向に舵を切ったカナダの大麻法は3年ごとに見直しが義務付けられています。しかし、合法化から3年目となった2021年は世界中でcovid-1...

ドイツ、2024年4月1日から嗜好用大麻を合法化

現地時間3月21日、ドイツの連邦参議院は連邦議会が2月に可決した嗜好用大麻合法化法案を承認。これにより、ドイツでは2024年4月1日より嗜好用大麻が合法化されることが確定しました。 嗜好用大...