大麻抽出物が不眠症患者のメラトニンを増加させ睡眠を改善

大麻抽出物が不眠症患者のメラトニンを増加させ睡眠を改善

- オーストラリアの臨床試験

12月20日、大麻抽出物が不眠症患者のメラトニンを増加させ、睡眠の改善をもたらしたことがオーストラリアの研究チームにより報告されました

メラトニンは脳の松果体という部位から分泌されるホルモン。日中は分泌量が少なく、夜になるにつれ分泌が増え自然な眠りを誘うことから「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、夜中のメラトニン量の多さは睡眠の質の高さと関連するとされています。

今回の研究は、医療用大麻の開発などを行うヘルスケア企業Entoura社によって提供された大麻抽出物の不眠に対する有効性と安全性を検証した臨床試験。

対象となったのは、ISI(不眠重症度質問票)で14点以上の不眠症成人患者29名(女性76%、平均年齢47歳)。ISIは質問表の回答から不眠の重症度を評価するスケールで、8〜14点が不眠前段階、15〜21点が中等度不眠、22〜28点が重度不眠に該当します。

参加者は大麻抽出物群あるいはプラセボ(偽薬:ペパーミントフレーバーのオイル)群に振り分けられ、2週間治療を実施。その後1週間のウォッシュアウト期間(使用薬を中止し、薬の影響を体内からなくす期間)を経て、大麻抽出物群とプラセボ群の振り分けを交代し、再度2週間治療が行われました。

使用された大麻抽出物はTHC10mg/ml、CBD15mg/ml、少量のTHC・CBD以外のカンナビノイドテルペンを含有。参加者は夕食時に0.2ml(THC2mg、CBD3mg)から摂取を開始し、1日に0.1mlずつ増加し、強い副作用が出た場合を除き、最大で1.5ml(THC15mg、CBD22.5mg)まで増加するように指示されました。

主な評価は夜中(0〜2時)のメラトニンの量、前述した不眠の重症度スケールISIによって行われました。

また、手首に装着することで睡眠状態を解析できる簡易デバイスを使用し、睡眠時間や睡眠パターンを評価。それ以外にも睡眠の質を評価するPSQI(ピッツバーグ睡眠質問表)やSSS(スタンフォード眠気尺度)、気分を評価するBond-Ladder Mood Scaleが用いられました。

できる限り公平に正しい評価を行うために、患者・治療者は共に誰が何を使用しているのか分からないよう盲検化されました(二重盲検化)。

検証の結果、夜間のメラトニン量は大麻抽出物群で30%増加、プラセボ群では20%減少し、この差は統計的にも有意となりました。

ISIによる評価では、大麻抽出物の使用により65%が「不眠症なし」「不眠前段階」といった臨床的に不眠症とされない状態となり、プラセボ群と比較して有意に不眠が改善していたことが明らかに。大麻抽出物群では早く眠れる、夜中に起きる回数が少ない、長く眠れるといった回答が増え、睡眠の満足度が有意に向上し、日常生活機能においては最大で80%の改善が報告されました。

睡眠の質を評価するスケールであるPSQI、SSSは両群で有意差が認められませんでした。

Bond-Ladder Mood Scaleによる気分の評価は、「頭の中がすっきり」「穏やかな気分」と感じた人が大麻抽出物群で有意に多くなっていました。

手首式デバイスによる睡眠状態の解析では、1晩あたりの総睡眠時間がプラセボ群では9分増えたのに対し、大麻抽出物群では30分増加。浅いノンレム睡眠はプラセボ群で0.2分増加、大麻抽出物群で21分増加。深いノンレム睡眠は両群で差がなく、またレム睡眠は大麻抽出物群で増加傾向でしたが、プラセボ群との有意差は認められませんでした。

※レム睡眠とノンレム睡眠

レム睡眠とは、身体は眠る一方、脳は起きている浅い眠り。夢をみたり、記憶の整理や定着などが行われる。

ノンレム睡眠は脳も眠る深い眠りで、睡眠の80%前後を占める。ノンレム睡眠は眠りの深さによりさらにN1(浅い)〜N3あるいは4(深い)に分類される。

通常、入眠すると浅いノンレム睡眠から開始し徐々に深くなり、その後短時間レム睡眠へと切り替わる。この周期は1サイクル90〜120分程度で睡眠中に繰り返されるが、明け方に近づくにつれノンレム睡眠の時間は短くなる。

大麻抽出物による副作用は83%で報告されましたが、ほとんどが口渇(52%)、下痢(27%)、吐き気(24%)、めまい(17%)など軽度なものであり、口渇以外の副作用は1、2日のみの出現となっていました。また、大麻抽出物使用後の離脱症状の報告もありませんでした。

参加者の55%が大麻抽出物の使用量を最大量である1.5mlまで増加。めまいなどの副作用の出現により25%が0.8〜1.2ml、20%が0.4〜0.6mlで使用を継続しましたが、これらの参加者においても睡眠の改善が報告されました。1名において1.4mlの用量で急性の頻脈が認められましたが、翌日に使用量を0.4mlまで減らすことにより、その症状は出現しなくなりました。

治験終了後、1名を除き、頻脈を認めた人を含め96%の参加者が大麻抽出物による不眠治療は受け入れられるものであると回答し、79%が大麻抽出物による治療の継続を希望。継続を希望しなかった参加者は、その理由として仕事や車の運転への支障を挙げました。

これらの結果から研究者らは、THC:CBD=10:15を含んだフルスペクトラムの大麻抽出物は忍容性が高く、不眠症成人患者の睡眠の質、睡眠時間、メラトニン量、生活の質、気分を2週間以内に改善する可能性があるとしています。

また、今後は幅広い人に適応できるようにTHCを含まない大麻抽出物の有効性や、体内時計への影響についての長期的な研究が必要だろうと述べています。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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