クリスタル・マティス(Krystal Mattis)ちゃんの写真
クリスタル・マティスちゃん(出典:WCCO)

ミネソタ州の小学生、学校内での医療用大麻使用が認められる

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2014年に医療用大麻を合法化し、今年8月から嗜好用大麻も合法化した米国ミネソタ州

大麻に対するスティグマ(偏見)が未だに根強く存在する中、ミネソタ州に住むある小学生が学校内で医療用大麻を使用する権利を勝ち取りました

医療用大麻は「必要不可欠」

9歳の女の子クリスタル・マティス(Krystal Mattis)ちゃんは、自閉症スペクトラム症(ASD)とてんかんを抱えています。

彼女は言語療法、理学療法、作業療法といった様々な治療に多くの時間を取られていたため、何年も前から半日登校が続いていました。

このような中、クリスタルちゃんは医療用大麻を摂取し始めることで大きな変化が見られるように。彼女の両親であるサブリナ(Sabrina)とティム(Tim) は、彼女が学校生活で成長していくために「医療用大麻が必要不可欠」と語ります。

学内で医療用大麻の使用は認められないとの返答

マティス夫妻は、クリスタルちゃんが医療用大麻を摂取することで、秋以降フルタイムで学校に通うことを望んでいました。しかし、クリスタルちゃんが通う小学校の学区当局は、彼女が学校の敷地内で医療用大麻を摂取することは認められないと返答。

クリスタルちゃんはTHCCBDを含む大麻オイルをジュースに混ぜて摂取していました。学区当局は、これを摂取するためにクリスタルちゃんは学校の敷地外に出る必要があるとし、摂取した後は再び学校に戻ることが可能であると説明しました。

サブリナは「不公平だと思います。理にかなってません。彼女は一日中学校にいて、他の子供と同じように薬を摂取する権利があるのです」と述べ、落胆を示しました。

マティス夫妻はクリスタルちゃんの半日登校を継続することを選択。学区当局が提案した中途半端な対応は、言葉を発せず、意思疎通のために装置を使用しているクリスタルちゃんにとって、多大なストレスと混乱をもたらすリスクがあったからです。

ただし、マティス夫妻はただ黙っていたわけではありません。まず、彼らはミネソタ州における嗜好用大麻合法化法案の立案者の一人であるザック・スティーブンソン(Zack Stephenson)議員に明確な説明を求めました。

これに対しスティーブンソン議員は、学校敷地内における大麻の使用、所持、輸送は禁止されているが、医療用大麻に関しては喫煙及び気化摂取でなければ例外が認められていると説明。

これを受け、マティス夫妻は学区当局と争うことを決断。学区当局が対応を変えなかった場合に備え、訴訟を無償で引き受けてくれる弁護士を雇うことにも成功しました。

学内での医療用大麻使用の権利を勝ち取る

学区当局が学内で医療用大麻を摂取できないと述べてから数週間が経った9月29日。

学区当局は一転して、クリスタルちゃんが学校内で医療用大麻を摂取できるようになるとの通知をマティス夫妻に送りました。

WCCOのインタビューに対し、サブリナは「クリスタルがフルタイムで学校に通えるようになって、私たちはとても感激しています。これは彼女にとって大きな功績です」と語り、喜びを表出。自身の娘と医療用大麻を使用する他の子供たちの勝利として、学校側の対応を賞賛しました。

学区当局とマティス夫妻は今後、クリスタルちゃんが学校にいる間、医療用大麻を摂取させる方法や時間について計画を立てる予定。

サブリナは「私は彼女の擁護者のように感じました。変化を起こすためには、親は子供を擁護する必要があります。クリスタルやミネソタ州で医療用大麻を使用している他の生徒たちのために、私は擁護を続けていきたいと思います」と述べました。

州議会に法改正を求める

マティス夫妻は学校側の対応に感謝はしているものの、彼らには他に幼い子供が2人おり、クリスタルちゃんに医療用大麻を与えるために学校に行く時間を日々確保するのが難しいとしています。

そのため、マティス夫妻は現在、これらの障壁を取り除くよう州議会に働きかけることに焦点を当てています。

「学校の敷地内で医療用大麻の摂取を許可するのであれば、生徒の安全や、共働きの親もしくは他の責任を負う親にとって不便になることを考慮して、学校が管理できるようにする法律が必要です」

マティス夫妻はミネソタ州に対し、コロラド州と同様の法律を制定することを求めています。コロラド州では、医師から医療用大麻の処方を受けた生徒のために、学校職員が医療用大麻を保管・所持・投与することが認められています。

マティス夫妻はこの考えに賛同する人々を集め、来年2月に州議会が法改正を検討してくれることを望み、請願活動を開始しています。

ミネソタ州のデータによれば、同州で医療用大麻プログラムに登録した患者は4万人を超えており、このうち450名は18歳未満の子供となっています。

他州では、ミシガン州の議員が最近、幼稚園から高校卒業までの子供が学校の敷地内やスクールバスの中で、低用量の医療用大麻やCBDを使用することを可能にする法案を提出

これによれば、医療用大麻を摂取する子供は大麻製品をいつ摂取し、誰が投与を行うのかを明記した許可証を所持している必要があります。

今年8月にブラジルの研究者らは、ASDと診断された人々が大麻オイルの摂取によりコミュニケーション、異常行動、QOLなどの改善に加え、処方薬の中止・減薬を認めていたことを報告

イランの研究チームは7月、難治性の前頭葉てんかん患者が標準治療にCBDを併用することで、発作の減少やQOLの向上が認められたことを報告しています

2月にドイツの研究者らは、CBDの抗てんかん作用が年齢やてんかんの種類に関係なく認められていたことを明らかにしています

WCCO「Elk River family celebrates daughter’s access to medical cannabis at school after initial resistance」https://www.cbsnews.com/minnesota/news/elk-river-family-celebrates-daughters-access-to-medical-cannabis-at-school-after-initial-resistance/

WCCO「Family fights for daughter to have access to her medical cannabis at school」https://www.cbsnews.com/minnesota/news/medical-cannabis-minnesota-schools/

Colorado General Assembly「Expand Cannabis-based Medicine At Schools」https://leg.colorado.gov/bills/sb21-056

FOX 2 Detroit「Michigan K-12 students could take medical marijuana on school premises under new bill」https://www.fox2detroit.com/news/michigan-k-12-students-could-take-medical-marijuana-on-school-premises-under-new-bill/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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