大麻オイルが自閉症の主症状・併存症状・QOLを改善 処方薬の減薬も

大麻オイルが自閉症の主症状・併存症状・QOLを改善 処方薬の減薬も

- ブラジルの研究

8月21日、ASD(自閉症スペクトラム症)と診断された人々が大麻オイルを摂取したことでコミュニケーション、異常行動、QOLなどの改善に加え、処方薬の中止・減薬を認めていたことがブラジルの研究チームによって報告されました。論文は「Frontiers in Psychiatry」 に掲載されています。

生まれつきこだわりが強く、コミュニケーションが苦手といった特徴を持つASDは「病気」ではなく「個性」として捉えられるべきとされています。

しかし、ASDの人はその特徴から周囲の人々とうまく調和できず、生きづらさやストレスを感じやすい傾向にあります。そのため、これらが原因となることで、二次的に頭痛や腹痛などの身体症状や、うつ病不安などの精神症状を認めることが珍しくありません。

また、これら以外にも、ASDの人はてんかん注意欠如・多動性障害(ADHD)を合併しやすいことで知られています。

「21世紀病」の1つとして知られるASDは決して珍しいものではなく、2020年に青森県の国立大学である弘前大学が発表した論文によれば、5歳児におけるASDの有病率は3.22%とされています。

これまでの研究により、大麻に含まれるCBDなどのカンナビノイドはASDの中核症状や併存症状に有効な可能性を示しています。大麻にはカンナビノイド以外にもテルペンやフラボノイドなどの有効成分が含まれており、これらの組成は治療効果にも影響を及ぼします。

つまり、CBD単体よりも、THCを含むその他カンナビノイドやテルペンなども含有した「フルスペクトラム」製品のほうが治療効果が高くなる可能性があるということ。特に、多様な症状を認めやすいASDにとっては、これが大きな意味を持つかもしれません。

フルスペクトラムオイルの有効性を検証した研究

ブラジルの研究チームはASDと診断された人々を対象とし、大麻のフルスペクトラムオイル(以下、大麻オイル)の有効性を検証。

研究対象となったのは、3ヶ月以上大麻オイルで治療を行った20名(平均年齢14歳[5〜38歳]、男性18名)。

ほとんどの患者はCBD主体の大麻オイルを少量摂取から開始し、医師が個人の臨床経過に応じて用量を徐々に増加。治療効果を高めるために、THC主体の大麻オイルを少量で追加することも可能となっていました。

これらの治療は元々科学的データを収集することを目的としていなかったため、治療効果に対する臨床医の評価が統一されていませんでした。そこで研究者らは、大麻オイルの治療を受けたASDの人々あるいはその家族に対し、統一された評価を行うためのアンケートを実施しました。

アンケートでは、主症状カテゴリー(10個)と症状以外の側面(5個)、異常行動(9個)とコミュニケーション/社会的相互作用(7個)に関するサブカテゴリーについて、「当てはまらない」「かなり悪化した」「やや悪化した」「変化なし」「やや改善した」「かなり改善した」のいずれかで回答するよう求められました。

病状悪化による中断は1名のみ

CBD主体の大麻オイルのみを使用したのは15名、CBD主体の大麻オイルから開始し途中でTHC主体のオイルを追加したのは3名、始めからCBD主体のオイルとTHC主体のオイルを組み合わせて使用したのは2名。

開始時のCBDの平均用量は46.6mg/日、THCの平均用量は7.1mg/日で、研究終了時ではCBDが72.5mg/日、THCが12.7mg/日。体重あたりの平均投与量はCBDが1.9mg/kg/日、THCが0.2mg/kg/日で、CBDとTHCの平均比率は5.7:1となりました。

報告された副作用のほとんどが軽度で一時的なものであり、多かったのは興奮(6例)、睡眠困難(3例)、過度な口渇(3例)、眼の充血(2例)、食欲亢進(2例)、体重増加(2例)、食欲減退(2例)、体重減少(2例)。

症状の悪化により治療を中断したのは1名のみでした(9歳、体重26kg、CBD39.3mg/日・THC0.8mg/日摂取)。

主症状やQOLが改善し、処方薬も減薬・中止

大麻オイルによる治療の結果、主症状カテゴリーと症状以外の側面の全てにおいて、全般的に改善が認められていました。

「食物摂取の回避や制限」の改善は33%に留まりましたが、それ以外は半数以上が改善を報告。特に「てんかん発作」「異常行動」「ADHD」「睡眠の問題」「患者のQOL」「家族のQOL」では80%以上が改善を報告しました。

「知的・認知能力」では56%で改善が報告されましたが、重度のASDではこれを改善する薬剤が他にないため、この結果は注目に値するとされています。

主症状カテゴリーと症状以外の側面

また、20名のうち16名が治療開始時に向精神薬や抗てんかん薬を服用していましたが、このうち25%(4名)が1種類以上の薬で投与量を減らし、56%(9名)が1種類以上の薬を中止し、37%(6名)が全ての薬を中止。

まとめると、16名のうち81%(13名)が大麻オイル以外の薬を減薬あるいは中止したということになります。

ASDの「異食症」が改善した初めての報告

「異常行動」のサブカテゴリーでは、9個全てにおいて少なくとも54%以上が改善を報告しました。

参加者のうち8名が異食症(食事以外のものを口の中に入れること)を有していましたが、大麻オイルの使用により50%がかなり改善、14%がやや改善したと報告。研究者らによれば、これはカンナビノイドがASDの異食症に有効性を示した初めての事例となります。

「コミュニケーション/社会的相互作用」のサブカテゴリーでは、「文章によるコミュニケーション」(36%)、「コミュニケーション機能を有する音または孤立した単語の生成」(40%)を除き、全てにおいて50%以上が改善を報告しました。

ASDに対する大麻オイルの治療ガイドライン

これらの結果について、研究者らは「保護者は評価された全ての側面において改善を報告しました。大麻オイルの治療中に観察された副作用は軽度であり、他の薬との望ましくない相互作用についても同様でした。治療が進展するにつれ、大麻オイルの治療中に他の薬のほとんどが減量または完全に中止されました。これは大麻オイル治療後の全般的な改善における主観的認識と一致しています。患者とその家族のQOLは20例中19例で改善しました」と振り返ります。

また、今回の研究ではCBD主体の大麻オイルで治療を開始した人でも、CBD主体のオイルとTHC主体のオイルを組み合わせて治療を開始した人でも良好な結果が報告されました。とはいえ、研究者らはCBD主体の大麻オイルから服用を開始するほうが安全であるとし、以下のような治療ガイドラインを提案。

ただし、このガイドラインをしっかりと検証するためには、より大規模な臨床試験が必要としています。

基本>

  1. CBD主体の大麻オイルを低〜中用量(CBD25〜50mg/日)から開始。
  2. 4〜12週間かけて徐々に増量(CBD50〜150mg/日)。
  3. 副作用がほとんどなく、良好な結果が得られれば、そのような効果が得られた最低用量で使用を続ける。

<副作用や症状の悪化が認められた場合>

  1. CBD主体の大麻オイルの用量を副作用が生じる前の量に戻す。
  2. CBD主体の大麻オイルの用量をそのまま維持し、THC主体の大麻オイルを有効性が認められるまで徐々に追加する(THC3〜20mg/日)。
  3. 効果が認められた最低用量で投与を継続する。

大麻オイルがASDに有効性を示した報告は他にも存在します。

ブラジルの研究チームはASDの子ども60名においてCBD:THC=9:1の大麻オイルの有効性を検証した結果、プラセボと比較して特にコミュニケーション能力が改善し、他にも精神運動興奮性、食事の摂取量、不安、集中力において有意な改善が認められたことを報告

カナダの研究者らは昨年、ASDの子どもがCBD主体の大麻オイルを使用したことにより、セルフケア能力、気分、集中力、暴力・自傷行為、コニュニケーション、睡眠、生活リズムが劇的に改善した症例を報告しています

イスラエルの研究者らは、ASDと診断された110名にCBDを主体とした大麻オイルを使用してもらい、その有効性を客観的なスケールを用いて評価。その結果、いずれのスケールにおいても総スコアが改善し、特にそれはASDの中核症状と関連する「社会性」において認められ、ASDの重症度が高い人ほど有効性が高くなっていました。

イタリアでは、濃縮テルペンオイルを追加したCBDオイルがASDの子どもに著効した症例が報告されています。この治療結果に対し、この子どもの父親は「CBDとテルペンのおかげで、息子を施設に入れることなく、家で一緒に過ごすことができるようになった。こんなに幸せなことはない」と語っています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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