2022年5月26日、自閉症スペクトラム(ASD)の子どもを対象にCBD(カンナビジオール)を主成分とした大麻抽出物を用いた無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験を実施した結果がブラジルの研究者らにより報告されました。
今回対象となったのはASDと診断された5〜11歳の子ども60名(CBDオイル投与群31名、プラセボ投与群29名)で、試験は12週間実施されました。
プラセボとは?
偽薬のこと。効果があると言われると効果が皆無のはずの薬を服用しても患者自身が効き目があると思い込むことで病気の症状が改善することがあります。これをプラセボ効果と呼びます。
薬の効果を検証する臨床試験ではプラセボ効果を差し引いて、本当の意味での薬の有効性を科学的に明らかにする必要があります。プラセボは見た目、重さ、味覚など本当の薬と区別がつかないように作られ、誰がプラゼボを服用しているかを患者、担当医師、薬剤師、看護師などに分からないように実施されます。
使用された大麻抽出物のカンナビノイドの比率はCBD:THC(テトラヒドロカンナビノール)=9:1。濃度は0.5%(5mg/ml)でした(※以下、CBDオイルと表記)。
CBDオイルの量は1日6滴から開始し、状況に応じて週に2回まで2滴の増量を行いました(ですが、最大で1日70滴使用した被験者もいたようです)。
評価はCARS(ASDの重症度スケール)とATEC(ASDに対する治療効果を多角的に評価するチェックリスト)のスコアを分析することにより行われました。
その結果、プラセボ投与群と比較してCBDオイル投与群では、社会的相互作用(対人関係やコミュニケーションなど)において最も顕著で有意な改善が報告されました。精神運動興奮性、食事の摂取量、不安といった併存症状の有意な改善も認められました。また、重症度が軽度であるASDの子どもにおいてのみですが、集中力においても有意な改善が報告されました。
社会的相互作用の障害はASDにおける中核症状の1つです。ASDでは二次的な障害により不安や精神運動興奮性が認められることが多く、さらにストレスなども影響し、十分に食事をとることができなかったりすることも多いです。
これらのことを考慮すると、今回用いられたCBDオイルはASDの子どもにとって有効性が高いと言えそうです。
続いて気になる安全面ですが、CBDオイル使用による副作用を報告したのは3名で、具体的な症状はめまい、不眠、腹痛、体重増加でした。血液検査による評価では、肝臓や腎臓の機能などのあらゆるパラメーターにおいて全ての子どもで正常範囲内であることが確認されました。この結果を受け研究者らは、少なくとも短期的(12週間)には安全に使用できると述べています。
そして今回用いられたCBDオイルに少量のTHCも含まれていたことは、注目されるべきことでしょう。