CBDフルスペクトラムの使用は重症度の高い自閉症に大幅改善をもたらす

CBDフルスペクトラムの使用は重症度の高い自閉症に大幅改善をもたらす

- イスラエルのオープン試験

これまで様々な研究において、CBD(カンナビジオール)を主成分とした大麻抽出物がASD(自閉症スペクトラム症)に有効性を示しており、先月も日常生活が著しく改善した9歳の子どもの症例が報告されました。

そして今月9日にも、CBDを主成分とした大麻抽出物の6ヶ月間の使用がASDに対し有効性を示したことが、イスラエルにて新たに報告されました。

この前向き研究に参加したのは、ASDの診断を受け、過去6ヶ月間に攻撃的な問題行動が認められた110名。平均年齢は9.2歳(最高年齢25歳)で、男性が65名を占めました。このうち28名は定期的に投薬できなかった(8名)、有効性がみられなかった(8名)、副作用(12名)などの理由により試験を中断。よって6ヶ月間の治験を完了したのは82名となりました。

使用された大麻抽出物にはCBD:THC(テトラヒドロカンナビノール)=20:1のカンナビノイドが含まれており、1日1滴(THC0.3mg・CBD5.7mg/滴)から使用を開始。投与のタイミングは参加者の症状に応じて保護者の判断で行われました。行動に改善が認められるまで徐々に増量するよう指示され(最高使用量はCBD10mg/kg/日あるいは400mg/日、THC0.5mg/kg/日あるいは20mg/日とされた)、2週間ごとに電話で状況報告とともにフォローアップが行われました。なお、内服中の薬はそのまま継続するように指示されました(110名のうち42名が処方薬あり)。

これまでの臨床試験は、ASDの子どもの保護者による主観的報告のみで評価されたものがほとんどでしたが、今回の研究では標準化されたスケール(ATOS-2、SRS-2、Vineland-3)により評価が行われました。また、治療前後における認知機能の評価も行われました。

ATOS-2による評価

ATOS-2(Autism Diagnostic Observation Schedule:自閉症診断観察検査)とは、ASD疑いのある生後12ヶ月以降の人を対象とし、意思伝達、相互的対人関係、遊び/想像力、常同行動/限定的興味、その他の異常行動の5領域を評価するスケールです。全てを合計したスコアでASDの重症度を測るだけでなく、「社会的感情」または「常同行動と限定的興味」の2つの側面からみることでASDの表現型を探ることも可能。この評価は検査用具や質問表を用いて、専門家による行動観察や面談により行われます。

ATOS−2による評価を完了したのは、82名中75名。治療前と6ヶ月後のスコアを比較した結果、総スコアに有意な改善が認められました。この改善は「社会的感情」で大きく、「常同行動と限定的興味」では小さくなっていました。ただし注意しなければならないのは、この「社会的感情」のスコアにおける変化の中央値が0だったということ。これは約半数において改善が認められず、残りの人において顕著な改善が認められたことを意味しています。

投与量や年齢において有効性に差はありませんでしたが、治療前にASDの重症度が高い参加者ほど大きな改善がみられたことが示されました。

SRS-2による評価

SRS-2(Social Responsiveness Scale:対人応答性尺度)とは、対象の行動に焦点を当て、社会的気づき、社会的認知、社会的コミュニケーション、社会的動機づけ、常同行動と限定的興味の5項目を評価するスケールです。評価は65個の質問に保護者が回答することにより行われます。ATOS-2と同様にこのスケールも、「社会性」と「常同行動と限定的興味」に分類して評価することが可能となっています。

SRS-2による評価を完了したのは82名中61名で、治療前と比べ総スコアは有意に改善。このスケールでは「社会性」と「常同行動と限定的興味」どちらも同程度の改善が認められました。

この評価でも投与量や年齢において有効性に差はみられず、治療開始前に重症度が高かった人ほど改善が大きくなっていました

Vineland-3による評価

Vineland-3(Vineland adaptive behaviors scale:ヴァインランド適応行動尺度)はASDの適応行動をみる尺度です。評価は専門家が対象者の保護者と面談することにより行われ、コミュニケーション、日常生活技能、社会性の3つの領域が評価されます。

Vineland-3による評価を完了したのは、82名中76名。6ヶ月間の治療により総スコアは有意に改善。その改善は全てのサブスコア(コミュニケーション、日常生活技能、社会性)において顕著となっていました。

投与量や年齢によって有効性に差はなく、治療開始前に「社会性」のサブスコアが低い人ほど大きな改善が認められました。

ATOS-2、SRS-2、Vineland-3の統合

続いてこれらの異なるスケールによる評価を、類似項目同士で比較。Vineland-3とSRS−2の「社会性」のスコアの改善自体は有意に相関していましたが、治療前後の変化の差に相関関係が認められませんでした。

同様にATOS-2の「社会的感情」とVineland-3の「社会性」のスコアの改善は有意に関連していましたが、両スケールの治療前後の変化の程度には相関関係が認められず、保護者と専門家との間で評価にずれがあることが示されました(親のほうが大きな改善を報告していた)。

※ATOS-2が「専門家の目」からみた評価であるのに対し、SRS-2やVineland-3は「保護者の目」からみた評価

認知機能評価

82名中76名において、ウェクスラー式知能検査(IQテスト)による評価が行われましたが、治療前後で改善もなければ悪化もなく、有意な影響は認められませんでした。

まとめ

6ヶ月間のCBDフルスペクトラムオイルの使用により、ATOS-2、SRS-2、Vineland-3のいずれにおいても総スコアが改善し、特にそれはASDの中核症状と関連する「社会性」において認められました。この改善は年齢やオイルの使用量に関わらず、ASDの重症度が高い人ほど大きい結果に。またこの治療により認知機能に悪影響をもたらさないことも示されました。

3つのスケールを統合し分析した結果においては安定した一貫性が認められませんでしたが、研究者らは「CBD主体の大麻抽出物による治療は、一部のASDの子ども、特に重症度が高い子どもの社会性に大幅な改善をもたらす可能性がある」と述べています。

ただし今回の研究はオープン試験であり、プラセボ効果(有効成分がないにも関わらず、思いこみだけで症状が改善すること)の可能性も否定できないため、この有効性は今後二重盲検のランダム化比較試験により、標準評価に基づいて検証する必要があるとしています。

※ランダム化比較試験(RCT)・オープン試験とは?

ランダム化比較試験(RCT)とは、特定の研究対象を2つ以上のグループにランダムに分け、治療薬や治療法の有効性を検証する臨床試験のこと。1つのグループでは効果を検証したい薬を、別のグループ(対照群)ではプラセボ(偽薬)や既存薬を使用し、それらの結果を比較することにより有効性を検証する。被験者が何の薬を飲んでいるのか分からないようにする試験を「単盲検」、被験者だけでなく研究者(治療者)もそれを把握できないようにする試験を「二重盲検」と呼び、後者のほうがバイアス(偏り)がかかりにくく信憑性が高い。

一方オープン試験とは、被験者と治療者がともに治療内容を把握している臨床試験のこと。被験者にとってはプラセボ効果、治療者にはバイアスがかかるリスクがあり、RCTと比べ信頼度は低いとされる。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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