アイルランド国家機関が医療用大麻は神経痛に「著しく有益」と報告

アイルランド国家機関が医療用大麻は神経痛に「著しく有益」と報告

/

1月23日、アイルランドの国家機関「保健研究委員会(HRB)」は、医療用大麻の有効性と安全性を検討した報告書を公開。これによれば、悪心・嘔吐、多発性硬化症おいて医療用大麻の使用を支持するエビデンスが存在し、特に神経障害性疼痛におけるエビデンスは「有望である」と結論づけられています。

アイルランドは2019年6月に医療用大麻アクセスプログラムを立ち上げ、5年間の試験運用を開始。このプログラムでは、従来の治療で改善が認められなかった多発性硬化症痙縮化学療法による悪心・嘔吐重度のてんかん患者が医療用大麻を使用することが認められています。

2023年11月には、国内初となる医療用大麻クリニックがオープンすることも明らかにされました

今回、保健研究委員会は医療用大麻プログラムの見直しに役立てることを目的とし、医療用大麻の有効性と安全性を評価するための包括的なレビューを実施しました。

解析対象に含まれたのは47件のレビュー論文。このうち26件ではがん、HIV/AIDS、炎症性腸疾患(IBD)、メンタルヘルス、緩和ケア、リウマチ性疾患/線維筋痛症、脊髄損傷、多発性硬化症を含む特定の病状、残りの21件では様々な集団や状態において大麻やカンナビノイドの有効性が評価されました。

また、14件のレビューでは、医療用大麻の安全性と忍容性に関するエビデンスが統合されていました。

解析の結果、全体としてほとんどのエビデンス(88%)は質が低く、確実性が低いことが明らかに。そのような中、多発性硬化症による痙縮や化学療法による悪心・嘔吐などアイルランドで適応症となっている病状に関しては、医療用大麻の有効性を支持するエビデンスが認められたとされています。

注目すべきは、特に有望なエビデンスが神経障害性疼痛において確認されたことです。報告書によれば、「中〜高度の確実性を持つエビデンスは、大麻、混合カンナビノイド、THC:CBD(同比率)の顕著な有益性を示したが、中程度の確実性を持つエビデンスはTHCの顕著な有益性を示さなかった」と述べられています。

一方、がんリウマチ性疾患線維筋痛症、多発性硬化症などにおける不安痛みなど、他の病状におけるアウトカムについては報告に一貫性がなく、決定的な証拠は得られなかったとされています。

安全性に関しては、医療用大麻は一般的に重度な副作用が生じないものの、めまい、口渇、鎮静、頭痛などを認める可能性が高いことが明らかに。眠気や吐き気の発現は質の低い研究で報告され、精神疾患の発現に関しては大麻及びTHCとプラセボとの間で有意差がなかったことが質の低いエビデンスで報告されていました。

なお、このレビューは成人における医療用大麻の有効性と安全性を評価したものであり、今回明らかになった結果は未成年にそのまま当てはめるべきではないと強調されています。

以上のことから、一部の病状で医療用大麻が有効であり、忍容性が高いことが示されましたが、これらのことは今後もより質の高い臨床試験で検証する必要があります。

大麻は禁止されてきた歴史から、まだ多くの人の中で「大麻=悪」という認識が根強く残っています。しかし、世界は大麻に医療価値があることを認めてきており、その見方を徐々に変えつつあります。

国連は2020年に大麻の医療価値を認め、大麻をスケジュールⅣ(最も危険で、医療価値のないもの)から削除

米国保健福祉省(HHS)は2023年8月、大麻をスケジュールⅠからスケジュールⅢの物質へと再分類するよう麻薬取締局(DEA)に勧告。この文書は最近正式に公開され、大麻には一部の病状において”信頼できるエビデンスがある”ことに加え、他の規制物質と比較して”乱用や公衆衛生上のリスクが低い”と明記されています

なお、米国保健福祉省もアイルランドの報告と同様に、「有効性に関する最大のエビデンスは、疼痛(特に神経障害性疼痛)の適応における大麻の使用で存在する」と報告しています。

アメリカとアイルランドの報告書で共通しているのは、大麻に関して質の低いエビデンスが多いということ。大麻関連の論文は直近の3年間で毎年4,000件以上公開されており、その大多数がアメリカにおける研究となっています。

しかし、アメリカでは大麻がスケジュールⅠの物質に分類されているため、研究者らは大麻関連の研究を行う上で煩雑なプロセスとハードルを超える必要があります。

そのため、今後米国麻薬取締局が保健福祉省の勧告を受け入れ、大麻の規制緩和が実現すれば、今後質の高い研究が増えてくると予想されます。

日本でも2023年12月に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案」が可決され、大麻由来医薬品を利用する道が切り開かれました。今後世界で大麻の医療価値を認める動きが拡大していけば、日本でも質の高い臨床試験が推進されるかもしれません。

Cannabis Health News 「Ireland: HRB publishes findings on safety and efficacy of medical cannabis」https://cannabishealthnews.co.uk/2024/01/24/ireland-hrb-publishes-findings-on-safety-and-efficacy-of-medical-cannabis/

Health Research Board(HRB)「The efficacy and safety of medicinal cannabis in adult populations: An evidence review」https://www.hrb.ie/fileadmin/2._Plugin_related_files/Publications/2024_Publications/Evidence_Centre/HRB_Medicinal_cannabis_Final_Report.pdf

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

Recent Articles

米国医師会、違法薬物の非犯罪化を支持

現地時間6月12日、米国医師会(AMA)はシカゴで開催された年次総会において、違法薬物の非犯罪化を正式に支持する決議案を採択しました。 米国医師会は世界で最も権威ある医学会の1つであり、...

THC使用が終末期患者の生存期間延長と関連

ドイツの終末期患者のデータを分析した結果、THC治療を受けていた患者ではそれ以外の患者よりも生存期間が長かったことが明らかにされました。論文は「Medical Cannabis and Cannabinoids」...

南アフリカ、嗜好用大麻を合法化

現地時間5月28日、南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ(Cyril Ramaphosa)大統領は個人使用目的での大麻の所持・栽培を認める「私用目的の大麻法(Cannabis for Private Purposes Bill)」に...