鍼治療が、CB2受容体を活性化することで炎症性腸疾患の内臓痛を緩和する可能性

鍼治療が、CB2受容体を活性化することで炎症性腸疾患の内臓痛を緩和する可能性

※IBD(炎症性腸疾患)とは

腸に炎症をきたす疾患の総称で、主にクローン病と潰瘍性大腸炎のことを指す。根治治療のない自己免疫疾患であり、難病に指定されている。腹痛をはじめとした内臓痛や下痢などの症状を認め、青年期に好発する。

クローン病では消化管全体でまばらに炎症が認められるのに対し、潰瘍性大腸炎では大腸に限局した炎症が認められる。

鍼治療は肩こり、腰痛、神経痛、関節痛、頭痛などの慢性疼痛に有効性が認められており、日本でもコントロール不良例に限り、いくつかの症状・疾患で保険適応が可能です。2020年のメタ分析では、潰瘍性大腸炎に対しても鍼治療の有効性が示されています。

今回の研究では、IBDモデルのマウスに対し、鍼治療による鎮痛・抗炎症作用とCB2受容体の関与について調べています。

鍼治療により炎症性サイトカインの発現が抑制され、内臓痛も緩和されました。IBDモデルマウスでは、大腸組織におけるCB2受容体の発現レベルが低下していましたが、鍼治療によりCB2受容体のタンパク質レベルの増加が認められました。

鍼治療による抗炎症・鎮痛作用は、CB2受容体拮抗薬の使用下、あるいはCB2ノックアウトマウス(CB2受容体を除去したマウス)においては認められませんでした。これは鍼治療がCB2受容体を介して抗炎症・鎮痛作用をもたらしている可能性を示しています。

これらのことから研究者らは、CB2受容体の活性化がIBDの治療において有効な可能性があると述べています。

2020年に行われたメタ分析でも、鍼治療の鎮痛・抗炎症作用はカンナビノイド受容体に依存していることを示しています。ただしほとんどが動物を対象とした研究であり、エビデンスとしてはまだ不十分です。なお、鍼治療は内因性オピオイドを増加させることで鎮痛作用をもたらすというエビデンスがあり、これは人においても確認されています。

炎症を起こした腸では、CB1受容体CB2受容体アナンダミドの発現が増加し、一方でアナンダミドの分解酵素であるFAAHは、炎症初期において減少が認められています。これらは症状増悪の抑制や回復のためにみられている可能性があります(参考論文)。よってエンドカンナビノイドシステムに働きかける植物性カンナビノイドテルペンが、IBDの治療において注目を集めています。

2019年のイスラエルの研究では、医療用大麻を使用しているIBD患者127名を調査したところ、臨床的な改善を認め、服薬量が減り、就業率が増加していたことを報告しています。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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