米国保健福祉省が大麻の医療価値を認め、規制緩和を要請

米国保健福祉省が大麻の医療価値を認め、規制緩和を要請

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8月30日、米国保健福祉省(HHS)が大麻の「医療価値」を認め、連邦法における大麻の規制を緩和するよう米国麻薬取締局(DEA)に要請したことが明らかにされました。ただし、この要請に法的な拘束力はなく、最終的な決定は麻薬取締局に委ねられます。

現在、アメリカは大麻を規制物質法でスケジュールⅠ(乱用の危険があり、医療的価値が低い)の物質に分類。これは大麻がヘロインと同レベルで規制され、フェンタニル(合成オピオイド)やメタンフェタミン(覚醒剤)よりも有害な物質であることを意味します。

昨年10月、バイデン大統領は大麻関連の犯罪に恩赦を与えるとした大統領令に署名するとともに、大麻のスケジュールの見直しを保健福祉省と司法省に要請。これを受け、保健福祉省は食品医薬品局(FDA)を通じて、科学的・医学的文献に基づいた包括的なレビューを実施しました。

その結果、保健福祉省は大麻を「スケジュールⅢ」の物質に再分類すべきと判断。スケジュールⅢは「医療価値があり、乱用の可能性はスケジュールⅠやⅡの物質よりも低いが、乱用により低〜中等度の身体依存あるいは高度の精神依存を引き起こす可能性のある物質」とされています。

スケジュールⅢの物質の例としては、筋肉増強剤である「アナボリック・ステロイド」や、即効性のある抗うつ作用が示されている「ケタミン」などが挙げられます。

大麻がスケジュールⅢの物質に再分類されても、連邦法において大麻が違法であることには変わりありません。しかし、最も厳しい「スケジュールⅠ」から除外され規制が緩和されることで、様々な恩恵を享受できるようになります。

例えば、現在麻薬取締局によって厳しく制限されている大麻の研究が以前よりも容易に実施できるようになります。そうなれば大麻の医療効果に関するエビデンスがより一層蓄積され、全米あるいは世界各国において、医療用大麻が合法化される日が近づくかもしれません。

また、大麻の危険性が以前よりも低く見なされることで、大麻に対する刑事司法上の優先度が低くなり、大麻の非犯罪化が促進される可能性もあります。

大麻企業においては、現在連邦法で禁止されている税金の控除を受けられるようになるだけでなく、銀行サービスを利用できるようになる可能性が高まります。大麻がスケジュールⅠに分類されている現在、アメリカの大麻企業は基本的に銀行からサービスを受けることができず、口座を開設したり融資を受けたりすることができません。

この状況を救済するため、連邦議会では大麻企業が銀行サービスを利用することを可能にする「Secure and Fair Enforcement (SAFE) Banking Act(安全で公正な施行銀行法)」の審議が進行中ですが、もし大麻の規制が緩和されれば、この法案の成立が後押しされると考えられます。

保健福祉省の今回の決定は、2020年12月に国連が大麻の医療価値を認め、大麻を麻薬単一条約のスケジュールⅣ(最も危険で、医療価値のない薬物)から削除した歴史的な出来事に続くものと言えます。しかし、保健福祉省の勧告に法的な拘束力はなく、最終的な決定は麻薬取締局が行うことになっています。

麻薬取締局の広報担当者は米国の大麻メディアMarijuana Momentに対し、「バイデン大統領の見直し要請に従い、大麻のスケジューリングに関する調査結果と勧告を提供する保健福祉省からの書簡を麻薬取締局が受け取ったことを確認できました」

「このプロセスの一環として、保健福祉省は麻薬取締局が検討するための科学的・医学的評価を実施しました。麻薬取締局は規制物質法に基づき、薬物をスケジュールまたは再スケジュールする最終権限を持っています。麻薬取締局はこれから審査を開始します」と述べました。

なお、保健福祉省のザビエル・ベセラ(Xavier Becerra)長官もX(旧Twitter)にてこの件を報告。そのポスト時刻は大麻愛好家たちの間で象徴的な「4時20分(現地時間)」となっていました。

保健福祉省の決定を受け、連邦議会の上院院内総務であるチャック・シューマー(Chuck Schumer)氏は「保健福祉省は正しいことをしました。麻薬取締局は厳格な大麻法によって引き起こされた害を大幅に減らすために、この重要なステップを速やかに実行に移すべきです」

「これは一歩前進ではありますが、連邦政府による大麻の禁止を終わらせ、麻薬戦争を押し返すためには、法的になすべきことがまだたくさんあります。私は大麻に関する重要な法案と刑事司法改革を成立させるため、引き続き議会で尽力することを約束します」と発言。

連邦上院財政委員会のロン・ワイデン(Ron Wyden)委員長は「保健福祉省の勧告が最終的に実施されれば、大麻政策が現実とかけ離れていた国にとって、歴史的な一歩となるでしょう」

「ついに、切望されている研究に対する障壁が取り除かれ、不公平な280E税制(大麻事業者の税金控除を禁止する法律)がゴミ箱に捨てられ、州の合法的な大麻ビジネスがもはや犯罪者のように扱われず、他の中小企業と同じように事業経費を控除できるようになるでしょう」と述べました。

今回、保健福祉省は大麻に医療価値があることを正式に認めましたが、すでにアメリカでは38州とワシントンD.C.において医療用大麻が合法化されています(嗜好用大麻に関しては23州とワシントンD.C.で合法)。そのため、依然として大麻を違法とみなす保健福祉省の判断に対し、大麻の擁護団体からは厳しい声も聞かれています。

例えば、NORMLのポール・アルメンターノ(Paul Armentano)副長はMarijuana Momentに対し、「連邦政府の大麻政策改革の目標は、連邦政府の大麻政策と米国の大半の州の大麻法との間に存在するどうしようもない溝に対処することであるべきです」

「大麻を米国規制薬物法のスケジュールⅢに再スケジュールしても、この矛盾に適切に対処できません。既存の州の合法化法(嗜好用と医療用の両方)は連邦政府の規制と矛盾し続けることになり、州と連邦政府の大麻政策の間にある既存の溝を永続させることになります」と述べています。

Marijuana Moment「Top Federal Health Agency Says Marijuana Should Be Moved To Schedule III In Historic Recommendation To DEA」https://www.marijuanamoment.net/top-federal-health-agency-says-marijuana-should-be-moved-to-schedule-iii-in-historic-recommendation-to-dea/

Marijuana Moment「Lawmakers, Governor And Advocates Share Mixed Reactions To Federal Marijuana Rescheduling Recommendation From Top Health Agency」https://www.marijuanamoment.net/lawmakers-governor-and-advocates-share-mixed-reactions-to-federal-marijuana-rescheduling-recommendation-from-top-health-agency/

Marijuana Moment「Top Federal Health Official Confirms At Exactly 4:20 That His Department Is Recommending Marijuana Rescheduling」https://www.marijuanamoment.net/top-federal-health-official-confirms-at-exactly-420-that-his-department-is-recommending-marijuana-rescheduling/

MJBizDaily「‘Biggest thing, ever’: Marijuana rescheduling recommendation hailed」https://mjbizdaily.com/biden-health-officials-say-marijuana-should-be-rescheduled/

Forbes「Federal Health Agency Calls For Easing Restrictions On Marijuana」https://www.forbes.com/sites/ajherrington/2023/08/30/federal-health-agency-calls-for-easing-restrictions-on-marijuana/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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