米保健省、大麻治療は一部病状において「信頼できるエビデンスあり」と結論

米保健省、大麻治療は一部病状において「信頼できるエビデンスあり」と結論

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1月12日、米国保健福祉省(HHS)は大麻の規制を緩和するよう麻薬取締局(DEA)に勧告した文書を正式に公開。これによれば、大麻には一部の病状において”信頼できるエビデンスがある”ことに加え、他の規制物質と比較して”乱用や公衆衛生上のリスクが低い”と結論づけられています

アメリカは現在、規制物質法において大麻をスケジュールⅠ(乱用の危険があり、医療的価値がない)の物質に分類。一方、州レベルでは38州が医療用大麻を合法化し、24州が嗜好用大麻を合法化しています。

このような中、ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は2022年10月、大麻のスケジュールの見直しを保健福祉省と司法省に要請。これを受け、保健福祉省はFDA(食品医薬品局)を通じて、科学的・医学的文献に基づいた包括的なレビューを実施しました。

その結果、保健福祉省は2023年8月、大麻をスケジュールⅢの物質に再分類するよう麻薬取締局に勧告。スケジュールⅢの物質は「医療価値があり、乱用の可能性はスケジュールⅠやⅡの物質よりも低いが、乱用により低〜中等度の身体依存あるいは高度の精神依存を引き起こす可能性のある物質」と定義されています。

それから約4ヵ月が過ぎた今回、保健福祉省はこの結論に至った理由をまとめた文書を初めて公開。252ページにも及ぶこの文書では、乱用の可能性、現在の科学的知見、身体・精神的依存など、8つの基準に基づいたレビューの結果が記載されています。

痛み、食欲不振、悪心・嘔吐で「信頼できるエビデンスがある」

医療用大麻は様々な病状に対し有効な可能性が示されていますが、ここでは食欲不振不安てんかん炎症性腸疾患悪心・嘔吐疼痛PTSD(心的外傷後ストレス障害)の7つについて有効性の評価が行われました。

レビューを経て、保健福祉省は「有効性に関する知見は適応症によって様々であり、結論の出ない知見を示すデータから有効性を支持する十分なエビデンスまで、情報源によってまちまちであった」とし、各病状における有効性について見解を示しました。

文書によれば、「有効性に関する最大のエビデンスは、疼痛(特に神経障害性疼痛)の適応における大麻の使用で存在する」と述べられています。

特定の病状に関連した食欲不振、悪心・嘔吐、PTSDにおいて医療用大麻の使用を支持するエビデンスは「低~中程度」であるが、有効性に関するエビデンスは合成製剤やバイアスリスクの高い観察研究においてのみ得られていると説明されています。

PTSDに関しては、「大麻によるPTSD治療に関連した精神医学的有害事象の可能性は、観察研究における限定的な利益よりも大きい可能性がある」とされ、否定的な見解が示されました。

炎症性腸疾患では、疾患そのものに対しては有効性があると結論づけられないものの、疾患によって生じる「自覚症状」に関しては「何らかの有効性が見出されている」と記載されています。

てんかんと不安に関しては、今回のレビューでは「大麻の有効性を支持するものは見つからなかった」とされています。

最終的に、保健福祉省は「総合すると、支持の程度や所見の一貫性は様々であるが、利用可能なデータは痛み、特定の病状に関連した食欲不振、悪心・嘔吐(化学療法によるものなど)の治療において、大麻の使用を実証する信頼できる裏付けがあることを示している」と結論づけています。

また、FDAの分析において報告された大麻の副作用は「軽度から中等度」であり、「重篤な副作用はまれ」でした。そのため、文書では「大麻の有効性が支持されている適応症のいずれにおいても、大麻の使用を否定するような実質的な安全性の懸念を示すエビデンスはなかった」と述べられています。

他の規制物質よりも乱用の危険性が低い

FDAは大麻における乱用の危険性や公衆衛生上のリスクを評価するため、救急外来の受診、過剰摂取による死亡、入院などを記録した様々なデータベースを調査し、分析を実施。その結果、大麻におけるこれらのリスクは「他の規制物質(ヘロイン、コカイン、ベンゾジアゼピンなど)よりも低い」ことが明らかにされました。

FDAのレビューによれば、物質使用障害による入院患者の10%が大麻によるものであったが、そのリスクはヘロインやコカインのような他の規制物質よりもはるかに低いとされています。

また、精神的依存と定義される大麻使用障害は、大麻を常用する人の10〜20%で認められていましたが、これは「タバコ、アヘン、アルコールよりも低い」と説明されています。

FDAは、大麻を常用する人のうち最大40〜50%が身体的依存も経験すると報告していますが、イライラ、睡眠困難、不安、落ち着きのなさなど、その程度は軽度であると述べています。

「要因5:乱用の範囲、期間、重大性の観点」の結論部分では、最も悪影響を及ぼすと報告された物質は通常「アルコール、ヘロイン、コカイン」であり、「大麻は下位にランクされていた」と述べられています。また、死亡を含む重篤な医学的転帰に関しても、大麻は「最下位のグループであった」と記されています。

これらのことから、 「大麻の乱用により物質使用障害を含む有害な結果がもたらされるという明確な証拠はあるものの、これらは他のいくつかの比較対象となる物質と比べ、比較的一般的ではなく、有害性も低い」と結論づけられています。

FDAによるレビューの結果から、保健福祉省は最終的に「大麻には医学的価値があり、他の規制物質と比較して乱用の危険性が低い」、つまり「大麻をスケジュールⅢの物質に再分類すべき」という歴史的な見解を示しました。

なお、大麻をスケジュールⅢの物質に再分類したとしても、大麻は引き続き違法のままとなります。しかし、この規制緩和は合法大麻事業者の税負担を軽減し、大麻研究におけるハードルを下げるなど、様々なメリットをもたらします。

大麻の規制緩和を最終的に決定するのは麻薬取締局であり、同局は現在も作業に取り組んでいます。

このような中、米国の州知事6名は2023年12月、この作業を年内に完了させるよう麻薬取締局に要請

これに続く形で、米国12州の司法長官らも麻薬取締局に対し、「大麻をスケジュールⅢに再分類する最終規則を実施することを奨励する」「私たちはこれを公共の安全のために必要なことであると考えており、この政策変更を支持する」と記した書簡を送りました

Politico「Federal scientists conclude there is credible evidence for certain medical uses of marijuana」https://www.politico.com/news/2024/01/12/hhs-scientists-medical-marijuana-00135433

Marijuana Moment「Feds Release Marijuana Documents, Confirming Schedule III Recommendation Based On ‘Accepted Medical Use’」https://www.marijuanamoment.net/feds-release-marijuana-documents-confirming-schedule-iii-recommendation-based-on-accepted-medical-use/

Marijuana Moment「12 State Attorneys General Tell DEA To Reschedule Marijuana As ‘Public Safety Imperative’」https://www.marijuanamoment.net/12-state-attorneys-general-tell-dea-to-reschedule-marijuana-as-public-safety-imperative/

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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