米ケンタッキー州、医療用大麻を合法化へ
州都フランクフォートにあるケンタッキー州会議事堂

米ケンタッキー州、医療用大麻を合法化へ

/

2022年末、ケンタッキー州の活動家らは州会議事堂の通路を慢性疾患患者の写真で覆い、医療用大麻合法化の実現を願うアピールを実施。今年に入り、アンディ・ベシア州知事は州議会の年頭演説で、「今会期中」に医療用大麻の合法化法案を可決することを議会に要求しました

これまでケンタッキー州では、下院においては医療用大麻合法化法案が可決されてきましたが、保守的な共和党が支配する上院にて頓挫してきました。しかし、今年はその状況が大きく変化。3月16日に上院が医療用大麻合法化法案「Sanate Bill 47(SB47)」を可決し、法案の行く末は下院に委ねられる形となりました。

立法会期の終わりが迫った今週始め、ベシア州知事は州民にも訴えかける形で、今週中に法案を可決するよう下院議員らに圧力をかけていました。

そして、ついに3月30日、下院議員らは66対33の賛成多数で医療用大麻合法化法案を可決し、法案を州知事に送付。この法案に対し、州知事は署名する見込みであるとツイートしています。

法案の立案者である共和党のスティーブン・ウェスト(Stephen West)上院議員は、下院での可決を受け、「これは州にとって、そして多くの人にとって、本当に歴史的な日です」と喜びを表明。

NORMLケンタッキー支部のマシュー・ブラッチャー(Matthew Bratcher)長官は「今日はケンタッキー州にとって信じられないような勝利がありました」「長年の間、ケンタッキー州民は医療用大麻の合法化を求めてきましたが、今回の可決により、まもなくここケンタッキー州において、州民は規制された治療製品を安全に入手できる自由を得ることができます」と祝福の言葉を述べました。

ベシア州知事が署名すれば、ケンタッキー州はアメリカで医療用大麻を合法化した38番目の州となります。ただし、医療用大麻プログラムの実施は2025年1月1日以降と明記されています。

医療用大麻合法化法案「SB47」の主な内容は以下の通り。

・医師やナース・プラクティショナーにより推薦を受けた患者は、医療用大麻の使用が可能。ベイプ、オイル、チンキ剤、エディブル、外用製品の使用は可能だが、大麻の喫煙は禁止。喫煙が発覚した場合、登録カードは失効となる。

・患者は住宅に30日分の大麻製品を所持できる。住宅以外では、10日分の所持が可能。

THC含有量には上限が設けられ、花の大麻製品では35%、濃縮物では70%となる。エディブルは、1食あたりTHC10mgまで。

・個人栽培は許可されない。

・医療用大麻の販売税と物品税は免除される。

・規制の策定やビジネスライセンスの発行など、このプログラムを監督する役割を担うのは「The Cabinet for Health and Family Services」となる。

・プログラムの規制は、2024年1月1日までに確定されなければならない。

・ライセンスの種類には栽培、生産、加工、調剤薬局、検査ラボなどが含まれる。ライセンス発行数の上限はなし。

・地方自治体は医療用大麻ビジネスを許可しないことも可能だが、そのような場合、州民はビジネスを許可するよう自治体に請願することができる。

・医療用大麻登録者は、尿検査でTHCが陽性となっても、その影響下にあるとは判断されない。

・医療用大麻登録者は、他の医薬品を使用している人と同様の権利が保証される。つまり、臓器移植などの医療処置や学校への入学などにおいて、医療用大麻患者であることを理由に差別されることはない。

主な適応疾患は以下の通り。

・全てのがん(進行度は問わない)
・慢性的、重度、難治性、衰弱性の痛み
・てんかん、またはその他の難治性の発作性疾患
・多発性硬化症、筋肉のけいれん、痙縮など
・従来の治療法で改善が認められないと証明されている慢性的な吐き気
・PTSD(心的外傷後ストレス障害)
・Kentucky Center for Cannabis(ケンタッキー大学にある医療用大麻研究センター)が適切と考える病状や病気

この法案とは別に、ケンタッキー州議会は3月9日、デルタ8THCを規制のもとで合法化する法案を可決しています

Marijuana Moment「Kentucky House Passes Medical Marijuana Legalization Bill, Sending It To Pro-Reform Governor’s Desk」https://www.marijuanamoment.net/kentucky-medical-marijuana-legalization-bill-is-one-step-from-governors-desk-with-final-vote-imminent/

Marijuana Moment「Kentucky Governor Urges Voters To Pressure Lawmakers To Pass Medical Marijuana Legalization Bill This Week」https://www.marijuanamoment.net/kentucky-governor-urges-voters-to-pressure-lawmakers-to-pass-medical-marijuana-legalization-bill-this-week/

MJBizDaily「Kentucky lawmakers OK medical cannabis legalization, send bill to governor」https://mjbizdaily.com/kentucky-lawmakers-ok-medical-cannabis-legalization-send-bill-to-gov/

NORML「Kentucky: Lawmakers Approve Medical Cannabis Access Legislation」https://norml.org/blog/2023/03/30/kentucky-lawmakers-approve-medical-cannabis-access-legislation/

Lex18「Kentucky House gives final passage to medical marijuana bill」https://www.lex18.com/news/covering-kentucky/kentucky-house-panel-advances-medical-marijuana-bill

Courier-Journal「Kentucky legislature passes bill to legalize medical marijuana, sends it to Beshear」https://www.courier-journal.com/story/news/politics/2023/03/30/medical-marijuana-bill-passes-in-kentucky-heads-to-beshears-desk/70062316007/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

Recent Articles

モロッコ、合法大麻製品の公式ロゴを発表

モロッコ政府は4月発行の官報において、合法大麻製品の公式ロゴを発表しました。 大麻のシンボルをモロッコ国旗と同様の赤色で縁取り、その下に「CANNABIS」と表記したこのロゴは、国外に輸出...

イギリス、ヘンプの栽培規制を緩和

4月9日、イギリス政府は経済的・環境的可能性を最大限に引き出すため、ヘンプの栽培規制を緩和することを発表。この新たな規制は2025年の栽培シーズンより施行されます。 イギリスにおいてヘン...

マラウイが高THC大麻の栽培を承認

マラウイ共和国の議会は、認可された栽培業者が輸出を目的とし、THC濃度の高い国産大麻を栽培することを承認しました。 アフリカの南東部に位置するマラウイはタバコの主要な生産国であり、国...