ケンタッキー州、サイケデリクス研究に4200万ドル以上の資金提供へ

ケンタッキー州、サイケデリクス研究に4200万ドル以上の資金提供へ

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5月31日、米国のケンタッキー州オピオイド削減諮問委員会(Kentucky Opioid Abatement Advisory Commission)は、まん延するオピオイド危機に対応するため、イボガインの研究に4,200万ドル(約58億8,000万円)以上の資金提供を行うことを発表しました。

イボガインとは、西アフリカ原産のイボガと呼ばれる低木から抽出されるサイケデリクス(幻覚剤)成分のこと。その精神活性作用から、この成分は長い間、西アフリカ先住民の宗教的儀式において用いられてきました。

近年、サイケデリクスは特に精神疾患に対する画期的治療薬として注目を浴びています。イボガインの医療的特性についてはまだ研究が不足していますが、オピオイド使用障害に対する有効性に関しては、その可能性が実証されつつあります

アメリカではオピオイドの過剰摂取による死亡(オピオイド危機)が大きな社会問題となっており、ケンタッキー州ではこの死亡率が全米で2位となっています。

ケンタッキー州会議事堂前で行われた記者会見で発表された今回のプログラムでは、オピオイド使用障害に対するイボガインの研究を促進するために、少なくとも4,200万ドルの資金提供が行われます。この資金は、オピオイド危機の一因となった大手医薬品会社に対し、ケンタッキー州が訴訟を起こした際に得られた和解金から賄われます。

記者会見に参加していた司法長官ダニエル・キャメロン(Daniel Cameron)氏は「毎年2,000人以上のケンタッキー州民を(オピオイド中毒で)失い続けることはできません」「私たちは新たな可能性を想像しなければなりません。明日のために、潜在的な解決策やプログラムに投資しなければならないのです」と発言。

オピオイド削減諮問委員会のブライアン・ハバード(Bryan Hubbard)委員長は「山のように高く、数十年に渡る逸話的証拠は、イボガインが安全で臨床的に管理された条件下で、投与後48~72時間以内にオピオイド離脱症候群を解消することを示しています」

「(食品医薬品局の)承認プロセスを経るまで、イボガインの開発を生み出し、支援し、推進できる官民パートナーシップを構築するために、今後6年間で最低でも4,200万ドルを投じる可能性を探ります」

「ケンタッキー州は、この地における複数施設で臨床試験を実施することで、イボガイン回復プロトコルのプラチナスタンダードモデルの開発を目指します」と述べました。

なお、3月末に医療用大麻を合法化したケンタッキー州では最近、ケンタッキー大学大麻センター(University of Kentucky Cannabis Center)が大麻の研究プロジェクトを支援するために、州から提供された資金から最大40万ドル(約5,600万円)の助成金を授与することを発表しています

メンタルヘルスの問題が深刻になりつつある中、世界ではサイケデリクス治療における可能性を切り開くために、様々な動きがみられています。

連邦政府機関である米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)は最近、物質使用障害に対するサイケデリクス治療の研究に150万ドル(約2億1,000万円)の資金提供を行うことを発表

米国麻薬取締局(DEA)は先月、様々な分野で世界トップレベルの研究実績を有するオハイオ州立大学に対し、研究目的でマジックマッシュルームの栽培を認めるライセンスを発行しています

米国医師会(AMA)はシロシビン製剤とMDMA補助療法に対し、医療コード(CPTコード)を承認。コードは5年間有効であり、この間にFDAから承認されれば、今後これらのサイケデリクス治療が医療従事者に広く使用され、保険適用となる可能性があります。

欧州議会議員らは最近、EU(欧州連合)でサイケデリクス治療を推進するための新たなグループを発足。同グループはサイケデリクス治療を通して、EU内におけるメンタルヘルス治療の変革を目指すとしています。

オーストラリアでは7月1日より、治療目的でシロシビンとMDMAの使用が可能となります。蓄積された既存のエビデンスに基づき、MDMAはPTSDに、シロシビンは難治性のうつ病に処方される予定です。

※為替は記事公開時点のレートで計算しており、リンク先の記事と日本円の数字が異なることがあります。最新の米ドル・円の相場はこちら

Marijuana Moment「Kentucky Looks To Fund Psychedelics Research With ‘No Less Than’ $42 Million In Opioid Settlement Funds」https://www.marijuanamoment.net/gop-kentucky-attorney-general-launches-psychedelics-research-effort-supported-by-42-million-in-opioid-settlement-funds/

Psychedelic Alpha「State of Kentucky Sets aside $42 Million for Psychedelic Research, with Focus on Ibogaine」https://psychedelicalpha.com/news/breaking-state-of-kentucky-sets-aside-42-million-for-psychedelic-research

WKYT「African plant could be part of Kentucky’s solution to opioid epidemic」https://www.wkyt.com/2023/05/31/african-plant-could-be-part-solution-kentuckys-opioid-epidemic/

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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