米国医師会がサイケデリクス(幻覚剤)治療の医療コードを承認

米国医師会がサイケデリクス(幻覚剤)治療の医療コードを承認

- 今後保険適用となる可能性も

/

5月2日、「COMPASS Pathways plc」と「MAPS Public Benefit Corporation」の2法人は、米国医師会(AMA)がサイケデリクス(幻覚剤)治療の医療コードを承認したことをプレスリリースで発表しました。

今後、サイケデリクス治療がFDA(アメリカ食品医薬品局)に承認された場合、これらが保険適用となる可能性があります。

この医療コードとは「CPT(Current Procedural Terminology)コード」のことを指します。CPTコードとは、米国医師会によって開発されたもので医師、医療保険会社、認定機関などに対して、医療、外科、診断の手順やサービスを報告するために使用されるコードです。

CPTコードにはⅠ〜Ⅲの3つのカテゴリーがあり、今回承認されたのはカテゴリーⅢのコード。このコードは、新しい医療技術、手順、およびサービスを追跡するために使用されます。コードは5年間有効であり、この間にFDAから承認されれば、広く医療従事者によって活用されるカテゴリーⅠに分類されます。

COMPASS Pathwaysはイギリスのロンドンに本社を置くメンタルヘルスケア企業で、アメリカではニューヨークとサンフランシスコにオフィスを構えています。同社が開発した合成シロシビン製剤「COMP360」は、難治性のうつ病患者を対象とした第2相試験(少数患者に対する臨床試験)で成功を収め、現在は第3相試験(実際の治療現場を想定した、大規模な患者を対象とした臨床試験)を実施中。「COMP360」はFDAにより画期的治療薬(Breakthrough Therapy)にも指定されています。

MAPS PBCは、精神疾患患者を対象としたサイケデリクスの処方薬の開発・商業化に注力している公益法人で、非営利団体「幻覚剤学際研究学会(Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies)」の子法人です。MAPS PBCのMDMA補助療法は、PTSD患者に対する2つの第3相試験で良好な治療成績を収めています。

今回、COMPASS Pathwaysの「COMP360」とMAPS PBCの「MDMA補助療法」は、カテゴリーⅢのCPTコードが承認となりました。今後、FDAがこれらの治療を承認した場合、医療機関で広く用いられ、保険適用となる可能性があります。

コードの全容は2023年7月に米国医師会から発表され、2024年1月から有効となる予定です。

COMPASS PathwaysのCEOカビール・ナス(Kabir Nath)氏は「これは、サイケデリクス治療への広範かつ公平なアクセスを可能にするための大きな前進です」「新たなCPTコードを開発するためのMAPS PBCとの協力は、(FDAから)承認され次第、サイケデリクス治療が医療システムに組み込まれ、支払者によって払い戻され、必要とする人々が利用できるようにすることを目的としています」とコメント。

MAPS PBCのCEOエイミー・エマーソン(Amy Emerson)氏は「サイケデリクス補助療法は、精神疾患の治療における新たなフロンティアとなる可能性を秘めています。FDAが承認した場合に、それらを医療システムに統合するための道筋を確保することが私たちの最優先事項です」「今回のような強力なコラボレーションは、共に協力することで、既存の治療法で十分な効果を得られていない精神疾患の人々を助けるという私たちの共通目標に近づけることを示しています」と述べています。

サイケデリクス治療に対する注目は、世界で高まり続けています。

オーストラリアでは2023年7月1日より、医療機関による厳格な管理のもと、治療目的でシロシビンとMDMAの使用が可能となる予定。蓄積された既存のエビデンスに基づき、MDMAはPTSDに、シロシビンは難治性のうつ病に処方が許可されます。

イギリスで優良大学上位10位に常にランクインする国立大学「エクセター大学(University of Exeter)」は4月、世界で広がるサイケデリクスの動きに対応するため、世界初となるサイケデリクスの大学院課程を創設することを発表しています。

オランダ政府は3月、MDMAの特性、社会におけるリスクとメリット、治療の潜在的価値などを評価するための国家委員会を設立したことを発表しています。

カナダのブリティッシュコロンビア州に本社を置くルーシー・サイエンティフィックディスカバリー(Lucy Scientific Discovery)社は、偏頭痛、群発頭痛、三叉神経痛(顔面痛)、うつ病の治療を目的とし、CBDとシロシビンを独自に配合した医薬品の開発を進めています

3月に公開されたアメリカの調査では、米国民の半数以上が、MDMAやシロシビンなどのサイケデリクスによる治療やサイケデリクスの非犯罪化を支持していたことが報告されています。

GlobeNewswire「American Medical Association to Issue First New Code for Psychedelic Therapies」https://www.globenewswire.com/news-release/2023/05/02/2658960/0/en/American-Medical-Association-to-Issue-First-New-Code-for-Psychedelic-Therapies.html

Mugglehead Magazine「American Medical Association approves medical code for psychedelic therapies coverage」https://mugglehead.com/american-medical-association-approves-medical-code-for-psychedelic-therapies-coverage/

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

Recent Articles

カナダの大麻取締法見直し

2018年に施行され、大麻を禁止する事から規制するという方向に舵を切ったカナダの大麻法は3年ごとに見直しが義務付けられています。しかし、合法化から3年目となった2021年は世界中でcovid-1...

ドイツ、2024年4月1日から嗜好用大麻を合法化

現地時間3月21日、ドイツの連邦参議院は連邦議会が2月に可決した嗜好用大麻合法化法案を承認。これにより、ドイツでは2024年4月1日より嗜好用大麻が合法化されることが確定しました。 嗜好用大...