米国初 麻薬取締局がマジックマッシュルーム栽培ライセンスをオハイオ州立大学に付与

米国初 麻薬取締局がマジックマッシュルーム栽培ライセンスをオハイオ州立大学に付与

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5月12日、様々な分野で世界トップレベルの研究実績を有するオハイオ州立大学とサイケデリクス(幻覚剤)に特化したウェルネス企業「インナーステート(Inner State)社」は、米国麻薬取締局(DEA)から研究目的でマジックマッシュルームを栽培できる米国初のライセンスを取得したことをプレスリリースで発表しました。

メンタルヘルスの問題は世界で増加傾向にあり、アメリカでも2,000万人もの人々がうつ病を患っているとされています。このような中、シロシビンはうつ病、PTSD、依存症など、様々な精神疾患で有効性が期待されており、米国食品医薬品局(FDA)からも画期的治療薬(Breakthrough Therapy)に指定されています。しかし、アメリカの連邦法でシロシビン(マジックマッシュルームに含有する幻覚成分)はスケジュールⅠ(乱用の危険があり、医療的価値が低い)の規制物質に分類されているため、その研究は厳しく制限されており、合成のシロシビン製剤しか使用できませんでした。

しかし、今回米国麻薬取締局がライセンスを承認したことにより、オハイオ州立大学とインナーステート社は研究目的に限り、マジックマッシュルームそのものを栽培することが可能となりました。なお、研究は全て、米国麻薬取締局の厳格な規制とガイドラインに従って実施されます。

インナーステート社のアスリー・ウォルシュ(Ashley Walsh)氏は「このライセンスはインナーステートとオハイオ州立大学だけでなく、サイケデリクス研究分野全体にとって大きな節目となるものです」と述べています。

マジックマッシュルームにはシロシビンをはじめとした様々な成分が含まれているため、それらの成分が相乗作用すること(アントラージュ効果)により、シロシビン単体よりも高い治療効果がもたらされる可能性があると考えられてます。

これについて、ウォルシュ氏は「マジックマッシュルームにはシロシビン以外にも発見があると、私たちは信じています。キノコ全体が多次元的な治癒特性を持つことが報告されており、精神的な問題の治癒、痛みの緩和だけでなく、がんの緩和ケアの質を向上させる可能性があります」とコメント。

オハイオ州立大学の研究者であるジェイソン・スロット(Jason Slot)博士とコウサン・ジュ(Kou-San Ju)博士は「ゲノミクスとメタボロミクスという最先端の技術を組み合わせることで、数十年間研究が困難だったキノコの化学的多様性を高解像度の画像で獲得する機会を得ました」と述べています。

なお、オハイオ州立大学は昨年、ソーシャルワーク学部において「サイケデリックドラッグ研究教育センター(Center for Psychedelic Drug Research & Education)」を創設。同センターはサイケデリクス教育のために25単位のオンライン継続教育プログラムを立ち上げており、さらに、今年1月からはPTSDと診断された退役軍人に対し、シロシビンを用いた臨床試験を開始しています。

マジックマッシュルームの成分であるシロシビンを使用した治療に向け、他の地域でも動きがあります。

米オレゴン州はサービスセンターにおけるシロシビンの使用を合法化し、今年3月にはシロシビン生産ライセンスを発行。これまで研究目的のシロシビン生産は米国麻薬取締局から認められてきましたが、合法的に使用できる施設であるサービスセンターで使用するためのシロシビン生産が認められたのは、全米で初めてのこととなりました。

それ以降、オレゴン州はシロシビンの投与を行うファシリテーター、シロシビンの検査ラボにおけるライセンスを承認し、5月5日にはシロシビンセンターの運営ライセンスを「ユージーンサイケデリック統合センター(EPIC Healing Eugene)」に承認。これにより、サービスセンター運用に向けて設けられた4つの事業(生産者、ファシリテーター、ラボ、サービスセンター)全てにおいて、少なくとも1つのライセンスが州内で承認されたことになります。

5月2日、米国医師会(AMA)はシロシビン製剤とMDMA補助療法に対し、医療コード(CPTコード)を承認。コードは5年間有効であり、この間に米国食品医薬品局(FDA)から承認されれば、今後これらのサイケデリクス治療が医療従事者に広く使用され、保険適用となる可能性があります。

5月9日、ワシントン州知事はシロシビンの研究促進に加え、シロシビンの治療を行う試験プログラムを可能にする法案に署名。この法案では、ワシントン大学が退役軍人やファーストレスポンダー(事故や災害が生じた際、最初に現場に駆けつける緊急対応要員。警察官、消防士、救急隊など)を対象とし、PTSDや気分障害、物質使用障害などの治療のために、シロシビンの提供を可能にする試験プログラムを創設することが規定されています。

なお、オーストラリアでは2023年7月1日より、医療機関による厳格な管理のもと、治療目的でシロシビンとMDMAの使用が可能となる予定。蓄積された既存のエビデンスに基づき、MDMAはPTSDに、シロシビンは難治性のうつ病に処方が許可されます。

Inner State「DEA Awards First Ever License to Grow Whole Psilocybin Mushrooms for Research at an American University」https://innerstate.me/dea-awards-first-ever-license-to-grow-whole-psilocybin-mushrooms-for-research-at-an-american-university-2/

High Times Magazine「Ohio State University Gets DEA License To Grow Psilocybin」https://hightimes.com/news/ohio-state-university-gets-dea-license-to-grow-psilocybin/

Oregon Health Authority「Oregon Health Authority issues first psilocybin service center license, psilocybin services to become available soon」https://content.govdelivery.com/accounts/ORDHS/bulletins/358c1c6

Marijuana Moment「Washington Governor Signs Bill To Create Psilocybin Therapy Pilot Program, Along With Partial Veto」https://www.marijuanamoment.net/washington-governor-signs-bill-to-create-psilocybin-therapy-pilot-program-along-with-partial-veto/

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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