米、2023年も未成年の大麻使用が増加せず

米、2023年も未成年の大麻使用が増加せず

- 米国連邦政府の資金提供による最新調査

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米国連邦政府機関が資金提供を行った最新調査によれば、アメリカでは州レベルで大麻の合法化が進んでいるにも関わらず、新型コロナウイルスのパンデミックが過ぎ去った後の2023年においても未成年の大麻使用が増加していません。

この調査は「モニタリング・ザ・フューチャー(Monitoring the Future)」と呼ばれるもので、米国立薬物乱用研究所(NIDA)から支援を受け、ミシガン大学が毎年実施しています。

今年も例年通り、未成年の薬物使用状況について調査を実施。調査対象となったのは、米国内の公立及び私立学校235校に在学中の中学2年生(8th Grade)、高校1年生(10th grade)、高校3年生(12th Grade)であり、合計22,318件の回答が得られました。

2021年の調査結果では、過去1年以内の大麻使用を報告したのは中学2年生で7.1%、高校1年生で17.3%、高校3年生で30.5%と前年と比べて大幅に減少したことが報告されましたが、これには新型コロナウイルスによるパンデミックの影響が指摘されていました。

しかし、今回の調査結果でも中学2年生で8.3%(前年8.3%)、高校1年生で17.8%(前年19.5%)、高校3年生で29%(前年30.7%)であり、昨年と比べ横ばい〜減少で経過していました。

これについて、レポートでは「大麻を使用した若者の割合は、2023年になってもパンデミック前である2020年のレベルには戻っていない」「生涯の使用、過去12ヵ月間の使用、過去30日間の使用の全てが、パンデミック前の2020年からパンデミック中の2021年にかけて急激に減少し、それ以来新たな低い水準で推移している」と述べられています。

過去1年以内に大麻を使用した未成年の割合
Monitoring the Future「National Survey Results on Drug Use, 1975-2023: Secondary School Students」

また、大麻のベイピングについても同様に、中学2年生で6.5%(前年6%)、高校1年生で13.1%(前年15%)、高校3年生で19.6%(前年20.6%)であり、2021年と比べてもほとんど変化がありませんでした。

Monitoring the Future「National Survey Results on Drug Use, 1975-2023: Secondary School Students」

なお、今年から新たにデルタ8THCの使用についての調査も実施され、過去1年以内の使用は高校3年生で11.4%と報告されました(2024年からは中学2年生、高校1年生についても調査が行われる予定)。

アメリカでは2018年に農業法が改正されたことで、ヘンプデルタ9THCの含有量が0.3%以下の大麻)が合法化されました。これに伴い、精神活性作用のあるデルタ8THCが意図せず流行。最近の研究によれば、大麻が違法である州ほどデルタ8THCの使用率が高いことが明らかにされています。

米国立薬物乱用研究所の疫学研究部門の責任者であるマーシャ・ロペス(Marsha Lopez)氏はMarijuana Momentの取材に対し、未成年の大麻使用について「実質的な増加が全く見られない」「実際、入手可能という認識の増加も報告されていない」と返答。

「つまり、このデータによれば、全米で成人用(大麻の合法化)が起ころうとも、若年層にはあまり影響がない」と述べました。

成人の責任ある大麻使用の擁護を使命とするアメリカの非営利団体「NORML」のポール・アルメンターノ(Paul Armentano)副所長は、「これらの調査結果は、成人の大麻へのアクセスが安全で効果的で若者の消費習慣に大きな影響を与えない方法で合法的に規制できるということを、議員や国民に再確認させるものである」とコメントしました

嗜好用大麻合法化への反対意見としてしばしば挙げられる「未成年の大麻使用増加リスク」。しかし、大麻を合法化した地域や国では、大麻の購入時において消費者の年齢確認が徹底されています。

そして、今回の調査結果でも示されたように、このような”適切な規制”は未成年の大麻使用を増加させず、むしろ減少させる可能性すらあります。

アメリカで嗜好用大麻を合法化した最初の州の1つであるコロラド州の調査では、2019年から2021年にかけ、未成年の大麻使用が州内で35%減少したことが明らかにされています。

他にも、米国疾病対策予防センター(CDC)は今年5月、アメリカで嗜好用大麻の販売店がオープンして以降、未成年の大麻使用率が最低値となったことを報告

2018年に嗜好用大麻を合法化したカナダでも未成年による大麻使用は増加しておらず、大麻の使用開始年齢が年々上昇傾向にあることが報告されています。

一方、大麻の合法化により、成人の大麻使用率に関しては増加傾向となっています。

8月に公開された「モニタリング・ザ・フューチャー」の調査では、米国成人における大麻と幻覚剤の使用率が過去最高水準を記録。

さらに、ギャラップ社は8月、米国成人の半数が大麻経験者であったことを明らかにしました

National Institute on Drug Abuse(NIDA)「Reported drug use among adolescents continued to hold below pre-pandemic levels in 2023」https://nida.nih.gov/news-events/news-releases/2023/12/reported-drug-use-among-adolescents-continued-to-hold-below-pre-pandemic-levels-in-2023

National Institute on Drug Abuse(NIDA)「Most reported substance use among adolescents held steady in 2022」https://nida.nih.gov/news-events/news-releases/2022/12/most-reported-substance-use-among-adolescents-held-steady-in-2022

Marijuana Moment「State Marijuana Legalization Has ‘Not Really Impacted’ Teen Use, Federal Official Says As New Youth Survey Shows Stable Trends」https://www.marijuanamoment.net/state-marijuana-legalization-has-not-really-impacted-teen-use-federal-official-says-as-new-youth-survey-shows-stable-trends/

NORML「Federally Funded Survey: Marijuana Use By Teens Remains Below Pre-Pandemic Levels」https://norml.org/blog/2023/12/13/federally-funded-survey-marijuana-use-by-teens-remains-below-pre-pandemic-levels/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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