米国で嗜好用大麻販売店がオープンして以来、未成年の大麻使用率が減少

米国で嗜好用大麻販売店がオープン以降、未成年の大麻使用率が最低値に

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5月1日、連邦政府機関である米国疾病対策予防センター(CDC)は、全国青少年リスク行動調査(YRBS:Youth Risk Behavior Survey)における最新データを公開。これによれば、2021年におけるアメリカの高校生の大麻使用率は、米国内で初めて嗜好用大麻販売店がオープンした2014年以降で最も低い数値となっています。

全国青少年リスク行動調査とは、1991年以降、米国疾病対策予防センターがアメリカで2年ごとに実施している調査です。今年2月には、2011〜2021年の調査データの動向を要約したレポートが公開され、未成年の大麻使用が減少傾向であることが明らかにされました。

今回新たに公開されたのは、アメリカの高校生における2021年の詳細データ。2021年において、現在の大麻使用(過去30日以内の大麻使用)を報告した高校生は15.8%であり、この数値は1991年に調査が開始されて以来、2番目に低いものとなっています(最も低値だったのは1991年の14.7%)。

男女別でみると、2021年における男子高校生の大麻使用率は17.8%で過去12年間で最も低い値。女子高校生に関しては13.6%で過去最低値となりました。

アメリカでは、2012年にコロラド州とワシントン州が21歳以上の成人の嗜好用大麻を合法化。両州はともに2014年に嗜好用大麻の販売店をオープンしています。

大麻合法化の懸念事項として「未成年による大麻使用の増加」が挙げられます。しかし、この懸念と反し、嗜好用大麻が店舗で購入できるようになった2014年以降、アメリカの高校生の大麻使用は増加せず、減少傾向となっています(2013年の大麻使用率は23.4%。以降、全ての調査でこの数値を下回っている)。

むしろ、最新(2021年)のその数値は2014年以降、最も低い値となっていました。

アメリカ高校生の大麻使用率(2011-2021年)

なお、アルコール(22.7%)、タバコ(3.8%)、処方薬の誤用(6.0%)に関しても、過去10年間で全て直線的に減少しています。

今回公開された2021年のデータは、新型コロナウイルスの流行が影響している可能性があるとされています。しかし、大麻の合法化が未成年の大麻使用の増加に結びつかなかったことを示すデータは、これ以外にも存在します。

2021年には、連邦政府機関である米国保健福祉省の薬物乱用・精神衛生管理庁(SAMHSA)による調査と、「Monitoring the Future」の調査結果において、未成年の大麻使用が減少していたことが報告されています。

2022年にミシガン州立大学の研究者らは、2008〜2019年における薬物使用と健康に関する全米調査(NSDUH)の分析により、21歳以上の成人では大麻使用が増加していたものの、未成年では使用が増加してなかったことを明らかにしています

コロラド州公衆衛生環境局(CDPHE)の調査では、2019年から2021年にかけて、未成年の大麻使用が州内で35%減少していたことが報告されています。

アメリカだけではなく、嗜好用大麻を合法化したカナダ(2018年に合法化)やウルグアイ(2013年に合法化)においても、同様の報告がみられています。

カナダにおける2022年の国内大麻調査では、大麻の使用開始年齢は年々上昇傾向にあり、大麻の合法化により未成年の大麻使用が増加していないことが示されています。

2022年5月には、ウルグアイとチリの中・高校生約20万人を対象とした調査(2007~2018年のデータを使用)により、未成年の大麻使用が増加していなかったことが報告されています

Marijuana Moment「Teen Marijuana Use Has Been Declining Since Legal Dispensaries Started Opening, Federal CDC Study Shows」https://www.marijuanamoment.net/teen-marijuana-use-has-been-declining-since-legal-dispensaries-started-opening-federal-cdc-study-shows/

Centers for Disease Control and Prevention「Youth Risk Behavior Surveillance System (YRBSS)」https://www.cdc.gov/healthyyouth/data/yrbs/index.htm

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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