大麻合法化が進むアメリカで未成年の大麻使用が減少傾向 連邦政府による最新調査

大麻合法化が進むアメリカで未成年の大麻使用が減少傾向 政府機関による最新調査

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2月13日、連邦政府機関である米国疾病対策予防センター(CDC)が2年おきに実施している全国青少年リスク行動調査(YRBS:Youth Risk Behavior Survey)の結果、未成年の大麻使用が減少傾向であることが明らかとなりました。

この調査は15〜18歳の未成年を対象とし、性的行動、薬物使用、自殺企図、暴力の経験など、健康行動や経験に関する様々なデータを収集したものです。調査は1991年から2年ごとに実施されており、今回発表されたのは、2011年から2021年におけるこれらのデータの動向になります。

最新の(2021年)のデータは、米国内152箇所の学校に在学する未成年17,232名のアンケート調査から得られました。

その結果、過去30日以内の大麻使用は、2011年で23%でしたが、2021年では16%にまで減少。この減少は特に男性(26%→14%)で認められ、女性ではあまり変化が認められていませんでした(20%→18%)。

それ以外の物質では、アルコール使用39%(2011年)→23%、ベイプ使用24%(2015年)→18%、違法薬物使用19%(2011年)→13%、オピオイド誤用経験14%(2017年)→12%、現在のオピオイド誤用7%(2019年)→6%となっており、全体として「減少」あるいは「変化なし」で推移していました。

※「使用」=過去30日以内の物質使用、「違法薬物」=コカイン、覚醒剤、吸入剤、ヘロイン、幻覚剤、MDMA(エクスタシー)と定義。

人種別では、アジア系、ヒスパニック系、白人よりも、黒人で大麻使用者が多いことが明らかに。その一方、黒人の学生は違法薬物を使用する割合が他の人種よりも少なくなっていました。

また、全ての物質において、LGBQ+(性的マイノリティを指す。調査通りに表記)の人はそれ以外の人と比べ、使用者が多くなっていました。

2021年は新型コロナウイルスによるパンデミックが生じた年でもあるため、今回の結果はそれによる影響を受けた可能性があるかもしれません。昨年末、米国国立薬物乱用研究所(NIDA)の出資で実施されている調査「Monitoring the Future」では、未成年の大麻使用は横ばいで経過していることが報告されています

今回のような報告は初めてではなく、これまでにも似たような結果がいくつか示されています。

2021年には、連邦政府機関である米国保健福祉省の薬物乱用・精神衛生管理庁(SAMHSA)による調査と、「Monitoring the Future」の調査結果において、未成年の大麻使用者が減少していたことが報告されています。

2022年にミシガン州立大学の研究者らは、2008〜2019年における薬物使用と健康に関する全米調査(NSDUH)の分析により、21歳以上の成人では大麻使用が増加していたものの、未成年では使用が増加してなかったことを明らかにしています

2012年に嗜好用大麻を合法化したコロラド州では、コロラド州公衆衛生環境局(CDPHE)の調査により、2019年から2021年にかけて未成年の大麻使用が35%減少したことが報告されています

なお、米国国立薬物乱用研究所(NIDA)のトップであるノラ・ボルコウ氏は2021年の時点において、大麻合法化が若者の大麻使用増加に結びつかないことを認めています

アメリカだけではなく、嗜好用大麻を合法化したカナダ(2018年に合法化)やウルグアイ(2013年に合法化)においても、同様の報告がみられています。

カナダにおける2022年の国内大麻調査では、大麻の使用開始年齢は年々上昇傾向にあり、大麻の合法化により未成年の大麻使用が増加していないことが示されています。

2022年5月には、ウルグアイとチリの中・高校生約20万人を対象とした調査(2007~2018年のデータを使用)により、未成年の大麻使用が増加していなかったことが報告されています

Marijuana Moment「Teen Marijuana Use Trends Downward As More States Legalize It For Adults, Federal Survey Finds」https://www.marijuanamoment.net/teen-marijuana-use-trends-downward-as-more-states-legalize-it-for-adults-federal-survey-finds/

Centers for Disease Control and Prevention「Youth Risk Behavior Survey Data Summary & Trends Report: 2011-2021」https://www.cdc.gov/healthyyouth/data/yrbs/pdf/YRBS_Data-Summary-Trends_Report2023_508.pdf

Marijuana Moment「Teen Marijuana Use Remained Stable In 2022, Despite More States Legalizing And Lifting Of Pandemic Restrictions」https://www.marijuanamoment.net/teen-marijuana-use-remained-stable-in-2022-despite-more-states-legalizing-and-lifting-of-pandemic-restrictions/

National Institute on Drug Abuse (NIDA)「Most reported substance use among adolescents held steady in 2022」https://nida.nih.gov/news-events/news-releases/2022/12/most-reported-substance-use-among-adolescents-held-steady-in-2022

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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