オハイオ州、嗜好用大麻合法化法案を発効

オハイオ州、嗜好用大麻合法化法案を発効

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12月7日、米国オハイオ州は先月承認されたイニシアチブ(一定数以上の有権者によって提案された法案)に基づき、嗜好用大麻の所持・栽培を合法化。一方、州議会は同法の修正を検討しています。

11月7日、オハイオ州は嗜好用大麻合法化の是非を決定する住民投票を実施。その結果、57%の賛成を得て可決となりました。

これにより、オハイオ州では12月7日より、21歳以上の成人による2.5オンス(約71g)以下の乾燥大麻及び15gまでの濃縮大麻の所持が可能に。また、成人1人につき6株まで、1世帯につき12株までの大麻の自家栽培も認められるようになりました。

嗜好用大麻の販売に関しては、同法の施行から9ヶ月以内に、既存の医療用大麻小売店において開始される予定です。

一方、共和党が支配する州議会は、同法に修正を加えるために法案の審議を進めています

12月6日には、上院本会議において「HB86」が賛成多数で可決されました。

同法は当初、大麻の所持制限を1オンス(約28g)にまで引き下げ、大麻の自家栽培を禁止し、合法化の期日を先延ばすなど、”大幅な改悪”をもたらすものとなっていました。

しかし、上院委員会は突如としてこれを劇的に修正。1世帯あたりの自家栽培は6株にまで制限されたものの、個人による自家栽培は従来通り許可され、大麻の所持制限も2.5オンスのまま保たれることになりました。

注目すべき点は、修正法案の施行から90日以内に、既存の医療用大麻小売店において嗜好用大麻の販売が開始されることです。イニシアチブでは9ヶ月後とされているため、大幅な期間短縮となります。

さらに驚くべきことに、修正法案では2.5オンス以下の大麻所持による犯罪記録が抹消されます。イニシアチブにはこのような規定はないため、該当者にとっては朗報となります。

一方でこの修正法案は、イニシアチブにある”社会的公平性”や大麻支持者たちが求める”差別の撤廃”を排除しています。

イニシアチブでは大麻の販売にかかる物品税は10%とされていますが、修正法案では15%にまで引き上げられます。ロブ・マッコリー(Rob McColley)上院議員によれば、修正法案に基づいたプログラムが完全に運用されれば、年間で2億6,200万ドル(約380億円)の税収が得られる見込みです。

イニシアチブによれば、大麻による税収は社会的公平性及び雇用プログラム(36%)、嗜好用大麻事業を許可する地方自治体(36%)、教育と薬物乱用プログラム(25%)、制度を実施するための管理費(3%)に充てられる予定となっています。

しかし、修正法案では、社会的公平性及び雇用プログラムへの分配が削除されます。代わりに、大麻による税収の30%を法執行機関の訓練、15%を薬物乱用治療・防止基金、10%を安全運転訓練基金、45%を一般歳入基金に充てるとしています。

加えて、臓器移植や子供の親権において大麻使用者への差別を禁止する条項についても、修正法案では削除されています。

また、雇用主は従業員に対する薬物検査やゼロ・トレランスポリシーを維持することが可能。大麻の使用は解雇の”正当な理由”としてみなされます。

HB86ではこれら以外にも、以下のようなことが規定されています。

  • 乾燥大麻に含まれるTHCの許容量は35%のまま維持されるが、大麻抽出物に関しては90%から50%にまで引き下げられる。

  • 公共の場(車内も含む)での大麻の使用は禁止され、住居内でのみ許可される。ただし、家主は居住者に対し、大麻の使用を禁止することができる。

  • 成人間での大麻の共有は禁止。

  • 州内で許可される大麻小売店の上限は350店舗。

  • 地方自治体は管轄区域内において、大麻小売店の営業を禁止できる。

マイク・デワイン(Mike DeWine)州知事は嗜好用大麻の合法化に反対していましたが、この修正法案に関しては支持を表明。同法は闇市場へのアクセスを妨げるのに役立つと述べました。

「この法案がなければ、人々はフェンタニル入りのマリファナを買うことになるかもしれない。オハイオ州の過剰摂取による主な死因はフェンタニルによるものであり、死者の80%を占めています」

上院の修正法案に対し、何人かの下院議員は”有権者が承認した大麻政策とはかけ離れている”と批判し、反対を表明しています。

なお、下院では現在、もう1つの修正法案である「HB354」の審議が行われています。

州レベルでの嗜好用大麻合法化に伴い、オハイオ州のいくつかの自治体は大麻に関して様々な規制緩和を行っています。

例えば、ハーバービュー、ライジングサン、シュガーグローブは先月のイニシアチブの結果を受け、200gまでの乾燥大麻の所持を非犯罪化。この量は州の所持制限である2.5オンス(約71g)の倍以上となっています。

クリーブランド市は州の大麻合法化に伴い、安全に配慮が必要な職種(警察官、消防士、救急隊員、重機を扱う職種等)や連邦運輸省(DOT)に該当する職種を除き、雇用前に大麻検査を行わない方針を明らかにしています

Marijuana Moment「Ohio Senate Marijuana Bill Keeps Criminalization And Undermines Equity, Despite Expungements And Home Grow, Advocates Warn」https://www.marijuanamoment.net/ohio-senate-marijuana-bill-keeps-criminalization-and-undermines-equity-despite-expungements-and-home-grow-advocates-warn/

NBC4 WCMH-TV「Recreational marijuana is now legal in Ohio. What happens next?」https://www.nbc4i.com/news/local-news/columbus/recreational-marijuana-is-now-legal-in-ohio-what-happens-next/

MJBizDaily「Ohio lawmakers propose retail cap, higher taxes in cannabis law changes」https://mjbizdaily.com/ohio-lawmakers-propose-retail-cap-higher-taxes-in-marijuana-law-changes/

NORML「Ohio: Voter-Approved Legalization Measure Takes Effect」https://norml.org/blog/2023/12/07/ohio-voter-approved-legalization-measure-takes-effect/

Marijuana Moment「As Ohio Voters Approved Statewide Marijuana Legalization, Three More Cities Decriminalized Even Larger Amounts Of Cannabis」https://www.marijuanamoment.net/as-ohio-voters-approved-statewide-marijuana-legalization-three-more-cities-decriminalized-even-larger-amounts-of-cannabis/

Marijuana Moment「Cleveland Updates Pre-Employment Drug Testing Policies For Most City Workers As Ohio Marijuana Legalization Takes Effect」https://www.marijuanamoment.net/cleveland-updates-pre-employment-drug-testing-policies-for-most-city-workers-as-ohio-marijuana-legalization-takes-effect/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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