薬物に対する違法性の雰囲気をなくす時期に来ている

- 米国連邦政府薬物研究所のトップが語る

米国連邦政府の管轄である国立薬物乱用研究所(NIDA:National Institute on Drug Abuse)のノラ・ボルコウ(Nora Volkow)所長が薬物依存症に対するスティグマ(偏見)が蔓延し、治療の妨げとなっている現状には政府に一定の責任があり、薬物に対する違法性の雰囲気を無くす時期に来ていると述べています。

米国医科大学協会(AAMC:Association of American Medical College)が公開したボルコウ所長の論説の中で自身の考えを語っています。

ボルコウ所長は、「恥や偏見が薬物依存症を助長し、治療を妨げることがあまりにも多い」と指摘し、それを「思いやりに変えることで、命を救うことができる」と述べています。

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米国国立薬物乱用研究所 ノラ・ボルコウ所長

ボルコウ所長の個人的な体験

私が6歳のとき、母と3人の姉妹と一緒に夕食をとっていると、母に電報が届きました。母はその電報を読みながら泣き崩れました。母の父(私の祖父)が亡くなったのです。母は悲しみのあまり自分の部屋に閉じこもり、私に慰めさせようとしませんでした。母の苦しみを癒すことができなかったことが、今でも私の心に残っています。

私たち姉妹は、祖父が心臓発作で亡くなったと聞き、信じていました。祖父がアルコール依存症だったことを母が明かしたのは、数十年後、私が依存症の研究者になって数年が経ち、母自身が死期を悟ったときでした。祖父はアルコール依存症だったのです。アルコールをやめられず、そして恥ずかしさのあまり、無駄に自ら命を絶ったのです。

この事実に圧倒された私は、母に「なぜ今まで言わなかったの?」と尋ねました。母の答えは、私が彼への敬意を失ったり、彼への愛情が薄れたりしないようにとのことでした。

私たちの社会では、依存症は医学的な問題ではなく、人格の欠如や意志の弱さ、不正行為を示す恥ずべきものとして、いまだに扱っています。

母は、私が薬物使用の神経生物学的影響を解明するために人生を捧げてきたことを知っていました。

母は、私が依存症は性格の問題ではなく、脳の病気であると話すのを見ていました。母にとって私は、どのようにして亡くなったのかを率直に話すことができるはずの人間だったはずです。

しかし、母にとっては、私が医学界にもたらそうとしている科学的理解よりも、依存症や自殺の汚名のほうが強かったのです。

社会の状況は、今でもあまり変わっていません。私たちはいまだに依存症を影に追いやり、人格の欠如や意志の弱さ、不正行為をした恥ずべきものと考え、思いやりのある医療を必要とする医学的問題ではないとしています。残念ながら、医療関係者の多くもこのような考え方を持っています。

薬物・アルコール依存症がもたらす直接的・間接的な健康被害は非常に多く、壊滅的であるため、我が国の平均寿命低下の根本原因と考えられています。

 

科学が教えてくれること

科学は依存症に多くの光を当てています。現在では、自己調整に必要な脳内ネットワークの変化により、物質の使用を減らそう、止めようと努力しても、強迫観念に駆られてしまう人がいることが分かっています。また、依存症の原因となる脳の変化を引き起こす遺伝的、発達的、環境的な要因についても解明が進んでいます。

例えば、米国国立薬物乱用研究所(NIDA)が米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)と緊密に連携して継続的に実施した大規模な青少年の研究から得られたデータからは、貧困や逆境が発達中の脳に及ぼす悪影響について多くのことが分かりました。

予防に関する研究では、低所得で社会的支援を受けていない家庭に介入をすることで、依存症の原因となる神経生物学的変化を回避、あるいは逆転させることができることが分かっています。

さらに、脳内シグナル伝達システムに関する数十年に渡る研究により、一度依存症になっても元に戻すことができ、回復が可能であることが実証されています。

しかし、残念なことにスティグマ(偏見)によってこのような知識やツールの利用が制限されています。

スティグマの役割

スティグマは、医療、政策、そして地域社会に浸透しています。

最近まで医学部では、物質使用障害のスクリーニングや治療に関する研修はほとんど行われていませんでした。長年にわたり、依存症は医学的な問題として扱われていなかったからです。

現在でも、医療機関が治療を提供していても内容は限られたものであったり、不十分であったりします。

米国科学・工学・医学アカデミーの報告書によると、依存症治療に特化したプログラムのうち、投薬治療を行っているのは半数にも満たず、これは適切な医療を受けられないことに等しいとされています。

保険会社は、オピオイド使用障害の治療薬を含む依存症治療をカバーすることに消極的な場合が多く、カバーされたとしても限定的です。保険が適用されないことで、命を救う治療を必要とする多くの人々にとって手の届かないものとなっています。

また、米国の受刑者の少なくとも半数は物質使用障害(多くはオピオイド使用障害)を患っているにもかかわらず、スティグマのためにほとんどの司法の場で薬を使用することができません。

スティグマは、2019年に違法薬物使用障害のある人のうち治療を受けた人が13%未満という悲劇的な現実につながっています。

さらに、多くの地域では、注射器提供プログラムなどのハームリダクションの考えによる治療を提供できません。これは、そのような行為が違法薬物の使用を助長するという道徳的な考え(事実に反する考えも含む)からです。

治療やサポートが受けられる場合でも、依存症患者は周囲の目など日常的に経験する差別を恐れて、それらを求めないことがあります。また、患者は自分が薬物を使用していることを医師に打ち明けることをためらいがちです。

このことが、2019年に違法薬物使用障害のある人のうち治療を受けた人が13%未満であり、オピオイド使用障害のある人のうち回復を促すことができる安全で効果的な命を救う可能性のある薬を受けとった人が18%しかいないという悲劇的な現実につながっています。アルコール依存症の人が薬を受け取った割合はさらに低く、3%です。

刑事司法措置を含む政府の政策は、スティグマを作り出す原因となっています。

薬物を使用した人を罰することは、薬物使用が医学的な疾患ではなく、性格的な欠陥であることを示唆しています。

薬物中毒者を投獄すると治療を受ける機会が減り、薬物使用による個人的・社会的な影響を悪化させることになります。さらに、麻薬の取り締まりは有色人種に対して不均衡に適用され、社会的・健康的な格差をもたらしています。

違法性の雰囲気は、依存症患者の治療にも影響を与えます。例えば、一部の治療プログラムでは、尿検体が陽性であることを理由に患者を除名処分にしています。まるで、再発は単に症状であり治療方法を調整するための臨床的なシグナルではなく、不正行為を働いたような扱いです。

同じ物質を状況が異なれば、痛みの緩和に薬として処方することもあります。しかし、依存症患者は治療として同じ薬を受け取る患者には適用されない強い制限を受けます。

 

助けと癒し

スティグマの悪影響は、ケアやケアを求めることを妨げるだけではありません。拒絶されたり、孤立したり、恥をかいたりといった社会的・感情的な影響、つまり内在化したスティグマが苦しみを和らげるために薬物摂取をするという悪循環に陥らせてしまうのです。私の祖父が人生を終わらせたのは、内在化したスティグマでした。

私が家族の中で身をもって学んだことは、研究によって裏付けられています。それは、病気の科学的根拠を人々に教えるだけでは、スティグマは解消されないということです。

現在の薬物乱用の危機を終わらせるためには、新しい予防法や治療法の開発・導入と同様に、スティグマとの闘いも重要視しなければなりません。

私たちは、依存症とその患者に対する社会の考え方を変えるために、大規模な社会的介入を行う必要があります。

物質使用障害の患者さんを支援するための適切なトレーニングと必要なリソースを確保するだけでなく、法律、医療機関やその他の環境における規制や慣行など、薬物使用を悪いこととみなすような政策を真剣に見直す必要があります。そして、患者さんやご家族が安心して依存症について話し合えるようにし、治療の妨げとなる羞恥心を取り除かなければなりません。

私たちの使命
大麻に関する誤って植え付けられた知識を正し、救われるべき人が救われる社会にする

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私たちのビジョン
日本国内で公共的な大麻メディアサイトとなる

石井 竜馬

海外の大麻企業(栽培・加工・販売免許を保持して6年目)に投資家として関わる。コロナ騒動を機に日本で山暮らし開始。標高1,000mの地で井戸を掘り、湧き水と共に農的暮らし。珈琲焙煎士でもある。ヨガ歴19年。

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