ドイツ患者ら、医療用大麻の使用で病状・幸福度・QOLを大幅に改善

ドイツ患者ら、医療用大麻の使用で病状・幸福度・QOLを大幅に改善

- ドイツの観察研究

重度な病状を抱えたドイツの患者が医療用大麻の使用により病状、幸福度、QOLの改善を実感していたことが同国の研究チームにより報告されました。論文は「Frontiers in Medicine」に掲載されています。

ドイツは2017年に医療用大麻を合法化。ドイツの医師は誰でも、THC0.2%以上の医療用大麻製品を医療用麻薬として処方することが可能です。

医療用大麻に明確な適応症はなく、標準治療で十分な治療効果が認められないなど、病状が重度と判断された場合に処方されます。また、一部の病状及び大麻製品では、公的健康保険から治療費の払い戻しを受けることができます。

ドイツは医療用大麻の合法化以降、公的健康保険で医療用大麻を処方している医師に公式調査への参加を義務付けています。

この調査によれば、2017〜2022年にかけて医療用大麻が最も処方された病状は痛み(76.4%)であり、次いでがん(14.5%)、痙縮(9.6%)、多発性硬化症(5.9%)、食欲不振・体重減少(5.1%)、うつ病(2.8%)、悪心・嘔吐(2.2%)、偏頭痛(2%)、ADHD(1%)となっていました。

ドイツの医療用大麻患者を対象とした実態調査

前述した公式調査は医師の視点で報告されるものとなります。しかし、ドイツの研究チームは今回、患者を主体とし、医療用大麻に関する体験と認識を調査しました。

対象となった参加者は、医療用大麻治療を12ヶ月間以上受けた患者216名(男性112名、平均年齢51.8歳)。調査は新型コロナウイルスが流行していた2021年5月から2022年6月にかけて行われました。

参加者は病状、使用した大麻製品、副作用などに加え、治療に対する満足度(TAQM-Ⅱ)、幸福度(WHO-5精神的健康状態表)、患者報告アウトカム(PROMIS-29)、痛み(フェイススケール、NRS)について回答。

また、各病状における自己評価尺度の記入も求められました(うつ病・不安、多発性硬化症、悪液質など)。

7割以上が公的健康保険の適用に

医療用大麻が処方された病状として多かったのは、慢性疼痛(72%)、痙縮(8%)、うつ病(4%)、ADHD(2%)であり、公式調査とほぼ一致していました。

81%が公的健康保険、16%が民間健康保険に加入。民間保険加入者では91%が医療用大麻の治療費の払い戻しを受けていましたが、公的保険加入者ではその割合が76%であり、残りの24%は自費負担で治療を受けていました。

処方された医療用大麻製品として多かったのは、大麻の花(45%)、大麻オイル(24%)、ドロナビノール(20%)、ナビキシモルス(13%)。

なお、公式調査ではドロナビノール(62.2%)が最も多く、大麻の花は比較的少数(16.5%)と報告されています。この差について研究者らは、公的健康保険の適用の有無や大麻へのスティグマが関連している可能性があると指摘しています。

参加者は平均して1〜2年間医療用大麻治療を受けており、ほとんどの人(64%)が医療用大麻製品の服用量や種類を1回以上変更していました。

服用量に関しては60%が増量し、15%が減量。製品の種類に関しては41%が大麻の品種を変更し、25%がナビキシモルスからドロナビノールへと医薬品を変更していました。

これらの変更理由として多く挙げられたのは、より望ましい効果があった(72%)、副作用(19%)、他の薬との相互作用(4%)など。

最も多く報告された医療用大麻の副作用は口渇(7%)で、次いで注意力低下(5%)、疲労(5%)、めまい(5%)、傾眠(4%)でした。

病状、幸福度、QOLが大幅に改善

治療に対する満足度(TSQM-Ⅱ:スコアが高いほど満足度が高い)の平均スコアは、有効性(30→71.4)、副作用(30.8→75.4)、総合満足度(31.9→79.8)、利便性(57.3→77)のカテゴリー全てにおいて有意に改善。Cohen’s Dはいずれも1を超えており、治療効果が大きいことが示されました。

※Cohen’s D

2つのグループ間における平均値の差を示す指標で、効果の程度を表す。具体的に、0.2を小さい効果、0.5を中等度の効果、0.8以上を大きい効果と判断する。ここでは、医療用大麻治療前後の平均値の差からCohen’s Dが算出されている。

以下、Cohen’s Dは「D」と表記。

これに伴い、幸福度(WHO-5:スコアが高いほど精神健康状態が良好)も大きな改善が示されました(6→13.8、D>1)。

患者報告アウトカム(PROMIS-29:スコアが低いほど状態が良好)の平均スコアは、身体機能(12.4→9.6、D=0.57)、不安(12.3→8.1、D>1)、抑うつ(12.6→8.1、D>1)、疲労(14.3→9.7、D>1)、社会的役割への満足度(14.7→11.2、D=0.8)、痛みによる妨げ(15.8→10.7、D>1)のカテゴリーでは有意な改善が認められましたが、睡眠障害(10.8→10.3、D=0.19)のカテゴリーではわずかな改善しか示されませんでした。

PROMIS29の変化

医療用大麻の使用目的が「鎮痛」と回答した人は155名。これらの患者の治療前のフェイススケール(6段階評価で、スコアが低いほど痛みが少ないことを示す)は平均2.9でしたが、治療後では1.0へと有意に減少(D>1)。

NRS(痛みの強さを0[なし]〜10[最悪]で評価)も、1日平均(7.45→4.28)、最も強い痛み(8.34→5.38)、最も弱い痛み(5.2→2.68)で大きな改善(全てD>1)が認められました。

不安や抑うつのために医療用大麻を使用していた参加者は8名。HADS(不安と抑うつの程度をそれぞれ21点満点で評価。スコアが低いほど重症度が低い)の平均スコアは、治療前では不安で13.4、抑うつで15でしたが、治療後にはそれぞれ7.3、8.4へと減少し、大きな効果が観察されました(ともにD>1)。

多発性硬化症の参加者(17名)では、MSSS-88(痙縮による影響を評価。スコアが低いほど重症度が低い)を用いた評価を実施。その結果、医療用大麻治療により痙縮(1.9→0.4、D>1)、歩行能力(2.9→2.3、D=0.46)、体の動き(2.7→1.9、D=0.64)のカテゴリーにおいて、有意な改善が認められました。

食欲不振を伴わない体重減少(悪液質)を抱えた患者32名は、MIDOS-2(スコアが低いほど重症度が低い)に回答。治療前の総スコアの平均は15.4でしたが、医療用大麻治療後には5.9(D>1)となり、臨床的に有意な改善が示されました。

MIDOS-2の変化

これらの結果から、研究者らは「調査対象者のほとんどは、カンナビノイドによる治療が医療用カンナビノイド処方前の治療と比較して効果的であると感じていた」と述べています。

ただし、この研究には、観察研究という性質から治療効果の因果関係を明確にできないこと、医療用大麻治療を行っている患者のみを対象としたことによるバイアス(偏り)リスク、新型コロナウイルスの流行により参加者が想定より少なくなってしまったことなど、いくつかの限界があります。

したがって、これらの研究結果は慎重に解釈される必要があり、医療用大麻の有効性を明確に評価するためには、今後もより質の高い研究が求められます。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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