大麻成分CBNが不眠症患者の睡眠を改善

大麻成分CBNが不眠症患者の睡眠を改善

- 睡眠におけるCBN初のランダム化比較試験

著名な大麻・CBD企業である「キャノピーグロース(Canopy Growth)社」と「シャーロッツ・ウェブ(Charlotte’s Web)社」は、不眠症に対するCBNの有効性を検証する初の臨床試験を実施。

その結果、日中の活動に影響を及ぼすことなく、不眠症患者の睡眠状況が有意に改善されたことが「Experimental and Clinical Psychopharmacology」にて報告されました

CBNは大麻に含まれる成分「カンナビノイド」の1つです。CBNは基本的に大麻に少量しか含まれていませんが、THCTHCA)が酸化することでも生成されるため、時間が経過した古い大麻では多くのCBNが含まれています。

CBNにはTHCのような精神活性作用はありませんが、CB1受容体を部分的に活性化する特性を持つことから、様々な医療効果が期待されています。特に、CBNは鎮静作用があることで知られており、「眠りのカンナビノイド」とも呼ばれています。

不眠に対するCBN初のランダム化比較試験

今回研究に参加したのは18〜55歳の男女で、過去1週間の睡眠の質が「非常に悪い」または「悪い」と自己評価した301名。

除外対象とされたのは、ナルコレプシー、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群の患者や、過去30日以内にCBDやTHCを含有した製品を使用した人、使用している処方薬や嗜好品(アルコール・タバコ等)の種類や量を変更した人など。

参加者は①プラセボ、②CBN20mg、③CBN20mg+CBD10mg、④CBN20mg+CBD20mg、⑤CBN20mg+CBD100mgのいずれかに、それぞれ同比率となるようにランダムに振り分けられました。

参加者は①〜⑤のいずれかが含まれたグミ2個を就寝90分前に摂取。できるだけ正確な評価を行うため、研究担当者と参加者は両方とも、誰がどのグミを摂取したか把握できないようにされました(二重盲検)。

治験の期間は10日間。始めの3日間はベースとなる睡眠状態を把握し、残り7日間でそれぞれ割り当てられたグミを摂取しました。

主要評価項目は7日間の投薬期間における睡眠の質であり、参加者は5段階で評価を実施(非常に悪い〜非常に良い)。

それ以外にも副次的評価項目として、参加者は寝る前に日中の疲労感を評価し、起床から1時間以内には睡眠日誌をつけ、入眠するまでの時間、夜間の覚醒回数、夜間の覚醒時間を記録。試験終了時には睡眠障害に対する主観的な評価も行いました。

なお、CBNの用量が20mgとされた理由については、過去の研究においてTHCが催眠作用をもたらした最低量が2.5mg/回であり、CBNはTHCと比べてCB1受容体への親和性が約1/8であるためとされています(2.5×8=20mg)。

CBNの単独摂取で部分的に睡眠が改善

主要評価項目である睡眠の質は、統計的に有意ではなかったものの、CBN群において改善が示されました。

一方、CBN20mgの服用はプラセボと比較して、夜間の覚醒回数を減少させ(1晩あたり0.5回減少)、睡眠障害に対する主観的な評価を改善(PROMIS Sleep Disturbance scaleで-1.4点)。これらは統計的に有意となりました。

興味深いことに、CBDを含んだ他のCBN投与群では、プラセボと比較して上記のような改善は認められませんでした。これについて研究者らは「CBDを併用すると、他のカンナビノイドの睡眠に対する効果を打ち消す可能性がある」と述べています。

日中の疲労感はいずれのグループでも認められず、昼間の活動に悪影響を及ぼさないことが示されました

入眠までの時間に関しては、どのグループでも改善がみられませんでした。

副作用の発現率はプラセボ群で27%、CBN群で19.6%、CBN+CBD10mg群で26.3%、CBN+CBD20mg群で26.3%、CBN+CBD100mg群で21.7%であり、グループ間で差がありませんでした。

参加者の5%以上で認められた副作用は、起床時の眠気(6.8%)、頭痛(4.8%)、睡眠障害(4.8%)、味覚障害(3.4%)。プラセボ群と比較して治療群でより一般的だったのは傾眠のみでした。

以上のことから、研究者らは「本研究は、CBN20mgの単独使用が夜間の覚醒や全般的な睡眠障害など、いくつかの睡眠障害を改善することを支持するエビデンスを提供している」と述べています。

ただし、この研究には、CBNの服用量が20mgのみであったこと、研究参加者の人数が目標に達していなかったこと、検証期間が7日間と短期間であったことなどの限界があります。

また、THCの服用中止後に睡眠障害が認められた先行研究を考慮すると、CBNの服用中止後の影響についても今後検討することが重要とされています。

水溶性CBNではより高い効果が認められる可能性も

CBNを含め、大麻に含まれる成分「カンナビノイド」は脂溶性であり、経口摂取では吸収率が低いことで知られています。そのため、近年ではカンナビノイドの吸収率を高めるための技術開発が多く行われています。

その1つが「水溶性ナノ粒子」。カンナビノイドをナノサイズの粒子に搭載することで治療効果の向上や副作用の軽減を図り、なおかつ水溶性にすることでより安定した吸収を可能とします。

では、その効果はいかほどなのでしょうか。

2021年のアメリカの研究では、水溶性ナノ粒子にCBNを搭載した製剤(以下、水溶性CBNと表記)を用いることで、不眠症に対する有効性が検証されています。

研究に参加した不眠症患者60名(男性36名、女性24名)は、各自この製品を7日間摂取。推奨摂取量は男性3mg/日、女性2mg/日とされましたが、必要に応じて用量を調節することは可能とされました。

7日間の摂取の結果、参加者の水溶性CBNの1日最大摂取量は4mgであり、77.5%が1日に2mg以上を摂取。水溶性CBNの服用前後において、以下のような劇的な改善が報告されました。

7時間未満の睡眠:42%→13%に減少

入眠困難:43%→2%に減少

夜間覚醒後、再入眠までに1時間以上かかる:57%→22%に減少

希望よりも2時間以上前に目が覚める:43%→13%に減少

目覚めがすっきりしない:60%→13%に減少

睡眠障害を訴えた週あたり日数は、7時間未満の睡眠を報告していた人で平均5.72日から1.88日、入眠困難を報告していた人ではより変化が大きく、4.77日から0.38日へと減少していました。

さらに、研究開始以前に睡眠薬を服用していた14名のうち、8名が全ての睡眠薬を中止し、2名が減薬に成功。60名中59名が水溶性CBNの効果に満足しており、現在も服用を続けていると報告しました。

一方、13名の参加者が副作用を報告。最も多かったのは朝の眠気(5名)であり、他にも明晰夢(3名)、落ち着きの無さ(3名)、朝の頭痛(2名)が報告されましたが、ほとんどが水溶性CBNの服用量を減らすことで改善。1名のみが副作用を理由にCBNの服用を中断しました。

これらの結果から、水溶性CBNは不眠症患者に対し低用量で高い効果をもたらす可能性があると言えるでしょう。

キャノピーグロース社とシャーロッツ・ウェブ社の研究では、CBDがCBNの催眠作用を打ち消す可能性があることが示されましたが、2000名を対象とした米国の調査では、CBNとCBDを含有したオイルを使用することで多くの人が睡眠の改善を報告しています。

また、THCを含む大麻製品でも、睡眠において効果が期待されています。

2021年のアメリカの研究では、「寝付きが悪い」と報告した35名を対象に、THC10mgとCBN5mgを含んだ復効錠(胃と腸の両方で吸収されるよう加工された錠剤)の有効性を検証。その結果、睡眠時間が平均20分長くなり、熟睡感が22%増加し、睡眠の質に対する評価(100点満点)が平均57.4点から67.9点へと増加しました。

西オーストラリア大学の研究では、不眠症患者に2週間、THC20mg/ml、CBN2mg/ml、CBD1mg/ml、テルペンを含有するひまわり油を就寝1時間前に1.0mlずつ舌下投与してもらった結果、プラセボと比較して睡眠の量と質が改善されたことが報告されています。

オーストラリア統合医療国立研究所(NIIM)の研究者らは、不眠症患者29名に大麻オイルを2週間服用してもらった結果、夜間のメラトニン量が増加するとともに、65%が臨床的に不眠症と診断されない状態となり、プラセボと比較して有意に不眠が改善されたことを報告

オーストラリアの医療用大麻患者1600名を対象とした実態調査では、約8割が大麻の使用により睡眠を改善。ほとんどの人(94.5%/414名)がベンゾジアゼピン系薬(睡眠薬や抗不安薬など)を減薬し、アルコールに関しても514名中62.5%が摂取量の減少を報告しました。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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