11月21日、大麻成分THCとCBNが胆管がん細胞株及び胆管がん移植マウスに対し抗がん作用を示したことがタイの研究者らにより報告されました。
胆管がんに対する抗がん作用は、今年6月に同じく大麻成分であるCBDとCBGにおいても報告され、当メディアでも記事にしています。
THCにおいては、実はすでに2010年の研究で胆管がん細胞株に対する有効性が示されています。ですが、THCの精神作用は臨床の現場において不利益となる場合があるため、今回はTHCよりも精神作用の少ないカンナビノイドであるCBNにおいても検証が行われました。
THCとCBNは用量依存的にヒト胆管がん細胞株(HuCCT1)の増殖を有意に抑制。さらにがん細胞の遊走を抑制することも明らかとなりました。
THCとCBNの胆管がん細胞の増殖抑制はアポトーシス(細胞死)の誘導と関連し、このアポトーシスの誘導にはAKT及びERK1、ERK2といったリン酸化酵素の阻害によりもたらされることが示されました。
※AKTとは?
セリンやスレオニンといったアミノ酸をリン酸化する酵素。細胞の代謝や増殖、生存、転写などの制御に関与。AKTシグナルの制御不全はがん、心血管疾患、糖尿病、神経疾患に関連する。
※ERK1、ERK2(ERK1/2)とは?
AKTと同じようにセリンやスレオニンをリン酸化する酵素。細胞周期に対する直接的な役割を持ち、細胞の成長や増殖を制御する。がん細胞におけるERK1/2の阻害はアポトーシスを誘導するとされる。
続いてがん細胞を移植したマウスにおいて、THCとCBNの抗がん作用を対照群(乳化剤・界面活性剤であるポリソルベート80)と比較することで検証。
その結果、対照群と比べTHC使用群(15mg/kg、30mg/kg)では有意に腫瘍の体積が小さく、進行が遅いことが明らかに。一方でCBN使用群(20mg/kg、40mg/kg)でも腫瘍体積の減少が認められましたが、これは統計的に有意ではありませんでした。
ですが、その後改めて腫瘍組織を顕微鏡で調べてみると、THC群とCBN群両方においてAKT及びERK1、ERK2によるリン酸化が減少していることが分かりました。
CBNはマウスの検証においてはTHCよりも作用が劣っていることが示されましたが、研究者らはTHCもCBNも胆管がんの治療の選択肢となる可能性があり、今後はTHCとCBNの相乗作用についても調べる必要があると述べています。
なお、CBNの抗がん作用が明確に示されたのは今回の研究が初となります。