2016年に医療用大麻を合法化したオーストラリアで、医療従事者を対象に教育研修や情報提供などを行うオンライン教育プログラム「TEACH-Hub(Training and Education About Cannabis in Healthcare)」が開設されました。
このプログラムは、医療用大麻擁護団体であるUnited in Compassion(UIC)、オーストラリア医療用大麻協会(AMCA)、大麻臨床医師会オーストラリア支部(SCCAC)によって立ち上げられたもの。医師、看護師、薬剤師など様々な医療従事者を対象に、包括的な対話式のオンラインプログラムが提供されます。
教育プログラム自体は2022年5月、UIC主催のシンポジウムにおいて、医師と薬剤師を対象に初めて実施されています。これが今回オンライン化されたことにより、より幅広く多くの医療従事者がプログラムに参加することができます。また、以前実施したシンポジウムの動画コンテンツなどの閲覧も可能となる予定です。
なお、オフラインのシンポジウムは2023年8月にも、医師と薬剤師を対象に実施される予定となっています。
医師向けのコースでは、大麻の歴史的な使用方法から臨床的適応、製品の選択、SASポータル(Special Access Scheme:医療管理局から承認を受け、未承認の医薬品を処方する制度)の使用方法など、様々なトピックが扱われます。このコースには、オーストラリアで初めて医療用大麻を処方したヴィッキー・コスティリロス(Vicki Kostirilos)医師も講師として参加しています。
薬剤師向けのコースでは、医療用大麻の治療用途、供給管理、調剤に関する規制要件に関する教育を受けることができます。
看護師向けのコースはこれから追加される予定です。
TEACH-Hubは市場の影響を受けず独立した性質を持つため、利益を求める企業による情報に対し警戒心を持つ医師や専門家、そして医療用大麻を処方され得る新たな患者を惹きつけることが期待されています。
また、TEACH-Hubはダン・ハスラム記念助成金の活用により開設されています。ダン・ハスラム氏はUICの創設者ルーシー・ハスラム氏の息子で、大腸がんによりわずか25歳(2015年2月)で亡くなるまでの間、親子で医療用大麻の合法化を訴え続けていました。
ダン・ハスラム記念助成金とは、UICやSCCACによる医療用大麻の教育プログラム開設のために充てられた支援金のこと。支援者にはオーストラリア自然医療グループ(ANTG)やCannatrekなどの医療用大麻企業を始め、俳優、歌手、そして2022年8月8日に乳がんで亡くなったオリビア・ニュートン・ジョン氏も含まれています。
また、以前TEACH-Hubの詳細について発表した際、UICはさらなる支援を求めましたが、これに対しても多くの医療用大麻企業やオリビア・ニュートン・ジョン氏が出資しています。
UICによれば、これらの資金は、エンドカンナビノイドシステムと医療用大麻の有効性にスポットライトを当てるためのプロジェクトにのみ活用されると述べられています。
オーストラリアでは2023年2月20日〜26日の間、オーストラリア医療用大麻協会の主催により、国内初となる医療用大麻啓発週間(Medicinal Cannabis Awareness Week)が実施されています。これは、医療用大麻に対する偏見をなくし、患者へのアクセスを向上させることを目的とした啓発運動です。
この啓発運動に伴い、看護師への医療用大麻の教育やピアサポートの提供などを目的とした「オーストラリア大麻看護協会(ACNA)」が新たに発足されています。
Cannabiz「New online training hub to bring ‘integrity’ to cannabis education」https://www.cannabiz.com.au/new-online-training-hub-to-bring-integrity-to-cannabis-education/
Cannabiz「Industry gets behind Dan Haslam memorial educational grant」https://www.cannabiz.com.au/industry-gets-behind-dan-haslam-memorial-educational-grant/