スイス最大都市チューリッヒが嗜好用大麻の試験販売を開始

スイス最大都市チューリッヒが嗜好用大麻の試験販売を開始

/

8月22日、スイス最大の都市チューリッヒは嗜好用大麻の試験販売プログラム「Züri Can – Cannabis with Responsibility」を開始しました

2021年、スイスは嗜好用大麻の試験販売を行うプログラムを可能にする改正法案を施行。このプログラムは、嗜好用大麻の合法化が大麻の消費パターンや健康に与える影響などを調査することを目的としています。

今年3月にスイス連邦公衆衛生局(FOPH)はチューリッヒの嗜好用大麻試験販売プログラムを承認しており、今回これが実現した形となりました。

現時点で研究参加者は約1,200名で、幅広い年齢層(18〜80歳)が参加していますが、80%が男性となっています。

大麻製品の販売は9軒の薬局と6軒のソーシャルクラブで行われています。大麻の消費は個人所有の個室や住宅で許可されていますが、ソーシャルクラブではその場で大麻を消費することも可能。現在、スイス国内で有機的に栽培された5種類の大麻製品が販売されていますが、秋にはさらに4種類追加される予定です。

プログラムは3年間行われる予定。大麻の販売場所は薬局やソーシャルクラブ、医薬品情報センターを含む最大21箇所まで拡大されます。1箇所につき50〜150人の参加者を受け入れることが可能となっており、参加者は最終的に2,100名を超える見込みです。

すでに今年1月には、スイスで3番目に大きな都市バーゼルが同様のプログラムを開始しており、チューリッヒがこれに続く形となりました。

なお、チューリッヒのプログラムではバーゼルと同様、スイス連邦公衆衛生局が大麻関連のソフトウェア企業Cannnavigia社と共同で開発したトレーサビリティーシステム「CDS(Cannabis Dispensary system)」が活用されています。

このシステムは大麻の栽培から消費までを監視・追跡することを可能にするものであり、研究報告書の作成に活用されるだけでなく、品質保証や未成年の使用予防にも役立てられます。

今後スイスでは、ローザンヌベルン、ジュネーブが同様のプログラムを年内に開始する予定。

なお、スイスの首都ベルンはコカインの試験販売プログラムの実施に向けた法案も可決しています。ただし、これを実施するには、スイス連邦政府においても同様の法案が承認される必要があります。

スイスと同じように、ヨーロッパでは嗜好用大麻の試験販売を実施しようとしている国が他にもあります。

ルクセンブルクは今年7月21日に嗜好用大麻を合法化。同国は現在、嗜好用大麻の試験販売に向けた規制の確立を目指しています。

ドイツは最近、大麻の所持・栽培及び非営利の大麻栽培クラブを合法化する法案を閣議決定しており、9月以降の連邦議会では正式に立法が行われます。さらに、嗜好用大麻の試験販売プログラムを実施するための法案も年内に発表される予定です。

ヨーロッパで初めて嗜好用大麻を合法化したマルタでは、嗜好用大麻の試験販売は行われないものの、嗜好用大麻を合法的に購入することができる「大麻クラブ」の利用が認められています。最近では大麻クラブの建設を認めるライセンスが初めて発行されており、早ければ2024年3月末までにマルタ初の大麻クラブが誕生する可能性があります。

チェコは今年4月に嗜好用大麻の合法化計画を公表しましたが、ここでは嗜好用大麻の試験販売について言及されませんでした。計画によれば、消費者は専用のデーターベースに登録することで、大麻専門の販売店で1日5gまでの大麻を購入し、消費できるようになります。

Cannabis Health News「Switzerland launches second cannabis pilot with support of Cannavigia software」https://cannabishealthnews.co.uk/2023/08/23/switzerland-launches-second-cannabis-pilot-with-support-of-cannavigia-software/

Newsweed「Zurich lance son projet-pilote de cannabis légal」https://www.newsweed.fr/zurich-lance-projet-pilote-cannabis-legal/

DayFR Euro「In pharmacies and other secure places: The sale of cannabis is launched but regulated in Zurich」https://euro.dayfr.com/local/721456.html

SWI swissinfo.ch「Zurich launches legal cannabis project」https://www.swissinfo.ch/eng/zurich-launches-legal-cannabis-project/48753160

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

Recent Articles

モロッコ、合法大麻製品の公式ロゴを発表

モロッコ政府は4月発行の官報において、合法大麻製品の公式ロゴを発表しました。 大麻のシンボルをモロッコ国旗と同様の赤色で縁取り、その下に「CANNABIS」と表記したこのロゴは、国外に輸出...

イギリス、ヘンプの栽培規制を緩和

4月9日、イギリス政府は経済的・環境的可能性を最大限に引き出すため、ヘンプの栽培規制を緩和することを発表。この新たな規制は2025年の栽培シーズンより施行されます。 イギリスにおいてヘン...