スイス、過去最大規模の嗜好用大麻試験販売プログラムを実施へ

スイス、過去最大規模の嗜好用大麻試験販売プログラムを実施へ

- プログラム実施中の都市は途中経過を報告

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3月18日、スイス政府はチューリッヒ州において過去最大規模の嗜好用大麻試験販売プログラムを実施することを発表。また、すでにプログラムを実施している一部の都市からはプログラムの途中経過も報告されました

スイスは2021年、嗜好用大麻の試験販売プログラムの実施に向けた改正法を施行。このプログラムは、規制された嗜好用大麻の販売が社会や公衆衛生にもたらす影響や大麻の消費パターンを探ることを目的としています。

2023年1月に国際都市バーゼルが口火を切って以降、すでにチューリッヒ(市)とローザンヌがこのプログラムを開始しています。また、ベルン州、ジュネーブ州バーゼル=ラント準州でも今後プログラムが実施される予定です。

スイス連邦公衆衛生局(FOPH)が7番目に承認した今回のチューリッヒ州のプログラムには、これまでのプログラムで最多の7,500名の大麻消費者が参加することができます。

これらの参加者は2,500名ずつの3グループに振り分けられます。このうち5,000名(2グループ)は合法的に嗜好用大麻を購入できますが、残りの2,500名(対照群)はこれまで通り違法大麻を入手することになります。

チューリッヒ州のプログラムはまず、ヴィンタートゥール、シュリーレン、ホルゲンにおいて2024年5月から開始されます。その後、アドリスヴィル、ヴェーデンスヴィル、ウスターでも販売が行われます。

同プログラムは2028年12月に終了となる予定です。

Cannabis Health Newsによれば、同プログラムには34の市町村に居住する大麻消費者が参加でき、すでに3,000名がキャンセル待ちの状態となっています。

なお、現在スイス連邦公衆衛生局から承認されている7つのプログラムが全て実施されれば、合法的に嗜好用大麻を購入できるスイス国民は約15,000名に達します。

プログラムの途中経過

新たなプログラムが承認される一方、すでに嗜好用大麻の合法販売を開始している2つの研究チームからはプログラムの途中経過が報告されています。

バーゼルの研究チームは、嗜好用大麻の試験販売を開始してから1年以上が経過したプログラム「Weed Care」の初めての報告書を発表。

このプログラムには378名の大麻消費者が参加。参加者はスイス国内で有機栽培された6種類の大麻製品を合法的に購入することが許可されました。

大麻の消費量は1年間を通してほとんど変化がなく、参加者は毎月20日間、平均1.2g/日の大麻を消費していました。

1年間で購入された大麻製品の量は合計8,176個(計41kg)。これらの大麻製品は薬局で販売されましたが、参加者の94%が購入場所について「満足している」と回答しました。

一方、製品の種類(57%)や品質(69%)に対する満足度は低く、49%が合法的な大麻製品だけでなく、違法な大麻製品も消費。

67%がフラワー製品とハッシュ製品以外の製品を望んでおり、より具体的にはエディブル製品(70%)、THCオイル製品(59%)、ベイプ製品(43%)の販売が求められていました。

これまでのところ、40名の参加者がプログラムから脱落。脱落の理由はオンライン調査に回答しなかった(15名)、製品への不満(5名)、州からの転居(3名)、大麻の使用中止(2名)などであり、健康被害や警察の介入による脱落は見られませんでした。

2023年8月にプログラムを開始したチューリッヒ市も途中経過を報告しています

最大2,100名の大麻消費者が参加できるチューリッヒ市のプログラム「Züri Can」には、現時点で1,928名(男性80.5%、平均年齢35歳)が参加。28〜32歳(23.2%)の参加者が多数を占めていますが、幅広い年齢がプログラムに参加しています。

同プログラムでは現在、THCとCBDの含有量が異なる5種類のフラワー製品と4種類のハッシュ製品を販売中。これらの製品は発表時点で約16,500個(5g入りの大麻製品が合計140kg)購入されています。

参加者の大半(58.5%)は週に4日以上大麻を消費。なお、参加者の24.7%はプログラム開始前から大麻使用障害の徴候がみられていました。

プログラムを主導しているチューリッヒ大学の研究チームによれば、規制された大麻の販売は低リスクな大麻の使用を促進し、特に大麻使用障害の人にとっては「カウンセリングや治療サービスにアクセスしやすくなる」と説明されています。

大麻の販売を行っているスタッフはカウンセリングと予防促進のための特別なトレーニングを受けており、個別に応じたカウンセリングが可能となっています。さらに、参加者は同じ場所で大麻を購入し続けることから信頼関係を築きやすく、話し合いや問題への対処が行いやすい環境となっています。

なお、「Züri Can」のデータは今後毎月更新される予定です。

スイスが嗜好用大麻の試験販売プログラムを進めている中、ヨーロッパでは大麻を合法的に供給する動きが広がりつつあります。

オランダは2023年12月より、国内で大麻の購入・使用が容認されている「コーヒーショップ」において合法大麻の試験販売を開始しました

2024年4月1日より嗜好用大麻の所持や栽培を合法化したドイツも、今後嗜好用大麻の試験販売を行う計画となっています。

ヨーロッパで初めて嗜好用大麻を合法化したマルタは、嗜好用大麻を合法的に購入することができる非営利の「大麻クラブ」を採用。2024年1月には国内初の大麻クラブがオープンしました

Business of Cannabis「Swiss Citizens With Access to Legal Adult-Use Cannabis Soon To Top 15,000, As Innaugural Trial Publishes Interim Results」https://businessofcannabis.com/swiss-citizens-with-access-to-legal-adult-use-cannabis-soon-to-top-15000-as-innaugural-trial-publishes-interim-results/

Cannabis Health News「Switzerland launches new adult-use cannabis pilot and largest to date」https://cannabishealthnews.co.uk/2024/03/20/switzerland-launches-largest-adult-use-cannabis-pilot/

Federal Office of Public Health FOPH「Cannabis Research Zürich」https://www.bag.admin.ch/bag/en/home/gesund-leben/sucht-und-gesundheit/cannabis/pilotprojekte/bewilligte-pilotversuche/cannabis-research.html

Kanton Basel-Stadt「Erste Zwischenergebnisse der Cannabisstudie «Weed Care»」https://www.bs.ch/nm/2024-erste-zwischenergebnisse-der-cannabisstudie-weed-care-gd.html

Universität Zürich「Züri Can – Aktueller Stand」https://www.zurican.uzh.ch/de/Aktuellerstand.html#Demografie

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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