嗜好用大麻合法化後のカナダで問題のある大麻使用は増加せず

嗜好用大麻合法化後のカナダで問題のある大麻使用は増加せず

- カナダの観察研究

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2018年に嗜好用大麻を合法化したカナダにおいて、その後問題のある大麻使用が増加していなかったことが同国の研究者らにより報告されました。論文は「Drug and Alcohol Review」に掲載されています。

「問題のある大麻使用」とは、大麻に依存し、生活に支障が生じている状態(大麻使用障害)のこと。大麻の使用により健康、仕事や学業、人間関係において問題が生じたとしても、大麻の使用をコントロールできない状態を指します。

2018年10月に嗜好用大麻を合法化したカナダでは、年々大麻の使用率が上昇傾向にあります。2022年の調査では、過去30日以内に大麻の使用を報告したのは19%で、2021年(17%)、2018年(15%)よりも増加。このように大麻を使用する人が増えた場合、問題のある大麻使用が増えるのかどうかを理解することは、公衆衛生上重要となります。

今回研究を行ったのは、ウォータールー大学トロント大学の研究チーム。大麻の合法化がもたらす影響や変化を毎年調査している「国際大麻政策研究(The International Cannabis Policy Study)」のうち、カナダの2018年9月〜10月、2019年、2020年のデータを用いて、問題のある大麻使用が増加しているのかが調べられました。

問題のある大麻使用の評価には、世界保健機構(WHO)のASSIST(The Alcohol, Smoking and Substance Involvement Screening Test)ツールが用いられました。このツールでは、過去3ヶ月間の大麻使用量に加え、渇望、健康、社会、法律、経済的問題、友人・家族からの心配などの質問項目を通して、大麻使用のコントロール状況が評価されます。スコアは39点満点で、0〜7点が低リスク、8〜26点が中リスク、26点以上が高リスクとなります。

集計の結果、過去12ヶ月以内に大麻の使用を報告していたのは、大麻合法化以前の2018年で27.4%であったのに対し、2019年では34.9%、2020年では33.8%となっており、大麻の合法化により、大麻の使用率が増加していることが改めて明らかに。

ASSISTツールによる分析の結果、高リスクと判定されたのは2018年で1.5%、2019年で1.5%、2020年で1.6%。どの年も中リスクと判定されたのは約10%で、ほとんどの人が低リスク。全体として、嗜好用大麻の合法化前後において、問題のある大麻使用に有意な変化は認められませんでした。

問題のある大麻使用のリスク
Source:Drug and Alcohol Review「Patterns of problematic cannabis use in Canada pre- and post-legalisation: Differences by neighbourhood deprivation, individual socioeconomic factors and race/ethnicity」

また、この研究では所得、学歴、人種などのサブグループ間においても、それぞれASSISTツールで分析が行われています。どのグループでも嗜好用大麻合法化前後で問題のある大麻使用の有意な変化は認められていませんでしたが、貧困層、低学歴、先住民においてリスクが高くなる緩やかな傾向が見出されました。

これについて研究者らは、生活や環境によるストレスが大麻使用の意思決定に影響している可能性、問題のある大麻使用が雇用や就労継続に悪影響を及ぼしている可能性、身体・精神疾患に起因する就労困難者による医療用大麻の使用が増加している可能性などが考えられるとしています。

全体として、この研究ではカナダにおいて嗜好用大麻の合法化後、大麻の使用率が上昇する一方で、問題のある大麻使用には有意な変化が認められなかったことが示されました

ただし、観察研究であることからバイアス(偏り)リスクがあること、大麻合法化から2年間分のデータしかないなどの制限があるため、結論を出すためには今後も継続的な研究が必要であるとされています。

嗜好用大麻の合法化に伴い、様々な面で問題が生じる可能性があることが指摘されています。これらの懸念を科学的に評価するために、これまで様々な研究が行われていますが、相反する結果が報告され、ほとんどが明確な結論に至っていません。

連邦政府機関である米国疾病対策予防センター(CDC)が最近発表したデータでは、アメリカで嗜好用大麻の販売店がオープンして以降、未成年の大麻使用率が最低値となっていたことが明らかとなっています。

スタンフォード大学やペンシルベニア大学の研究者らは、2003〜2017年における保険加入者6,300万人以上のデータを分析した結果、アメリカにおける州レベルの大麻合法化が精神病関連の診断や治療の割合に影響を及ぼしていなかったことを報告しています

ミネソタ大学とコロラド大学の研究者らは2018〜2021年の間、4,043名の双子を対象とした縦断的研究を行った結果、嗜好用大麻の合法化によって他の違法薬物の使用状況に変化が認められなかったことを報告。これは、大麻の使用がよりハードな薬物の使用のきっかけになるという「ゲートウェイ仮説」を否定するものとなります。

また、この研究では、嗜好用大麻の合法化により大麻使用障害や精神病の有病率にも有意な影響が認められず、研究者らはこれらの結果について、「嗜好用大麻の合法化が精神医学的・心理社会的側面に与える影響は最小であることを示している」と述べています。

全米経済研究所(NBER)は2022年末、嗜好用大麻の合法化が雇用や収入の低下と関連せず、むしろ部分的にこれらを増加させていたことを報告

大麻の使用は意欲ややる気を損なわせる「無動機症候群」を引き起こす可能性があるという指摘もありますが、ロンドン大学とケンブリッジ大学による研究では、週4日程度の大麻使用が無動機症候群の発症と関連しなかったことが報告されています。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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