カナダ大麻市場

カナダ大麻市場

- 税収の増加と未来への期待

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カナダの大麻市場は、2018年の合法化以来、大きく成長を遂げてきました。この産業の急速な成長の背後には多くの要因がありますが、消費者の行動変化、事業者の品質確保に対する継続的な努力、そしてアルコール市場との競争の激化など複数の要因によって推進されています。 

信頼と品質の透明性(トレーサビリティー) 

カナダ統計局の2024318日の報告によると、消費者は合法的な販売業者から大麻製品を購入することが一般的になっています。過去12カ月間に何らかの大麻製品を使用したカナダ人の72%が合法的な業者からのみ購入しており、これは消費者が商品選択において品質と安全性を非常に重視していることを示しています。合法化以降、市場は透明性と品質管理の面で大きく進化しており、製造業社は消費者に安全で信頼できる製品を提供することに注力しています。 

特にユーザーが気にしているのは「トレーサビリティー」です。例えば、サスカチュワン州にあるディスペンサリー「グリーンムーン」では、顧客に対して製品の仕入れ先についての詳細な情報を提供しています。同店の代表であるテリー氏は、顧客に直接どの製品がどの農家から来ているのかを説明できるだけでなく、実際に農家や加工工場を訪れ、農場での栽培方法を目の当たりにし、新鮮で高品質な製品を常にストックしていることをセールスポイントとしています。このような透明性は、消費者が自信を持って製品を選択できるようにするだけでなく、合法大麻市場への信頼を深める重要な要素となっています。 

合法化以降、カナダの大麻業界は消費者保護を最優先事項としており、業界全体での透明性と品質管理の基準を高めています。これにより、消費者は不純物が含まれていない、一貫した品質の製品を手に入れることができています。また、安全な製品の供給を保証するために、政府による厳格なテストと認証プロセスが設けられています。 

さらに、この信頼と透明性は、大麻製品に関する教育と情報提供においても寄与しています。合法業者は、消費者が製品の正しい使用方法、効果、リスクについて理解できるように、教育資料やトレーニングセッションを提供することがあります。これにより、消費者は自分自身のニーズに合った製品をより適切に選択できるようになり、安全な消費環境が促進されます。 

最終的に、この透明性と信頼は、カナダの大麻市場の持続可能な成長を支える基盤となっています。消費者が信頼できる製品を手に入れることができれば、それは市場全体の正当性と信頼性を高め、大麻の合法的な利用に対する社会全体の認識を改善することに繋がります。CBDを含めた合法大麻市場の発展には多くの挑戦が伴いますが、品質の透明性を確保し、消費者の信頼を得ることができれば、これらの挑戦を乗り越え、より健全で安全な市場を構築することが可能になるでしょう。 

アルコール市場との競争 

カナダの「大麻産業」と「アルコール産業」は、嗜好品のシェアの確保において競争関係にあります。カナダ統計局による最新のデータは、消費者の嗜好に顕著な変化をもたらしていることを示しています。具体的には、2022-2023年の会計年度において、アルコールの販売量が1.1%減少した一方で、嗜好用大麻の販売量は前年比で15.8%増加し、約47億ドル(約5,170億円)に達しました。このデータからは、カナダ人がアルコールよりも大麻を好み始めている傾向を見て取ることができます。特に2023年はビールの売上が記録を開始して以来歴史的な低水準に落ち込んだことは、アルコール消費に対するカナダ人の認識が変わりつつある強い指標であると考えられています。 

この変化は、大麻合法化がもたらした社会的受容の拡大と消費者ニーズの多様化が、この変化の背景にあると考えられます。合法化以降、カナダの消費者は従来の乾燥フラワーから抽出物、エディブルやドリンクといった大麻製品を幅広い選択肢の中から選ぶことが出来るようになりました。特定の効果や効能を求める消費者にとって、この選択肢の多様化は大きな魅力となっています。 

さらに、健康への意識の高まりも、アルコールから大麻へのシフトを促進している要因の一つです。カナダでは大麻の方がアルコールに比べて健康上のリスクが低いという考え方が一般的になっており、リラクゼーションやストレス軽減などの効果を求めて大麻製品を選択する人が増え続けています。この健康への関心は、特に若い世代の間ではさらに顕著で、アルコールの過剰摂取によるリスクへの意識が高まっています。最近は大学生のパーティーなどでもアルコールドリンクの代わりに大麻ドリンクが出てくることも珍しくはありません。 

経済的な面もこの競争の中で見ることができます。カナダ統計局の報告によると、アルコール業界が少しづつ縮小している一方で、大麻製品の販売増加は新しい経済的な機会を生み出し、新しい雇用を創出し、税収の増加に貢献しています。これは、カナダ経済にとって大麻がますます重要な役割を果たしていくことを示しています。 

このように、アルコール市場との競争関係は、カナダの大麻市場の成長に大きな影響を与えています。消費者の嗜好の変化、健康への意識の高まり、経済的な機会の拡大は、この競争が今後も続くことを暗に示しています。アルコール産業はこの変化に適応し、消費者のニーズに応える新しい戦略を模索する必要があるでしょう。同時に、大麻市場は、品質の高さ、安全性、そして責任ある消費を維持することで、持続可能な成長を目指す必要があります。 

このような状況の中、ブリティッシュコロンビア州に本社を置くカナダの大手大麻企業Pure Sunfarms社が、地元のビール醸造企業Four Winds Brewing社とのコラボレーションで「Pink Kush Hazy IPA」の販売を開始したのは非常に興味深いニュースとなっています。このビールにはTHCなどのカンナビノイドは一切含まれておらず、大麻のPink Kushという品種から抽出したテルペンという匂いや味の元となる成分が使用されています。 

https://fourwindsbrewing.ca/products/pink-kush

大麻市場の成長と経済への貢献 

カナダの大麻市場は、経済面においてますます重要な役割を果たしています。特に、大麻の合法化は新たな経済的機会の創出という点で、顕著な影響をもたらしています。2022年-2023年会計年度における嗜好用大麻の売上が前年比15.8%増の約47億ドルに達したことは、この業界が急速に成長していることの明確な証拠です (さらに2023年度の売り上げは50億ドルを超えた)。この成長は、大麻業界がカナダ経済に与える影響を示すものであり、雇用創出および地方自治体の収益向上に大きく寄与しています。 

栽培、加工、販売、研究開発から教育に至るまで、大麻産業は多岐にわたる職種で働く人々を必要としています。これにより、特に地方や農村部での雇用機会が増加し、地域経済の活性化に貢献しています。さらに、大麻産業は高度な専門知識を持つ人たちにとっても魅力的な分野となっており、農学、生物学、薬学、法律、経営管理など、多様な分野の専門家が大麻業界の発展に貢献しています。 

税収の面では、合法大麻市場からの収益は政府の大きな財源となっています。2022年-2023年会計年度におけるアルコールと嗜好用大麻の販売から得られた155億ドルの収益のうち、19億ドルが嗜好用大麻によるもので、前年比で24.2%の増加を示しています。これらの収益は直接、公共サービス、教育、医療、インフラの改善といった国民の福祉向上に再投資されています。 

大麻業界の成長は関連産業にも好い影響を与えています。例えば、大麻製品の包装、マーケティング、セキュリティサービス、法律コンサルティング、財務会計・金融サービスなど、大麻産業と密接に連携するビジネスが利益を享受しています。これらの産業の成長においても、さらなる雇用機会の創出と経済活動の活性化を促しています。 

さらに、大麻市場の成長は、研究開発への投資を促進し、科学的知見の進歩に貢献しています。大麻の医療用途に関する研究は、新しい治療法の開発に繋がり得る重要な知見となります。これらの研究により、大麻成分が医療においてどのような効果があるのかという理解が深まり、より効果的で安全な製品の開発が進んでいます。 

以上の様な事からも、カナダの大麻市場の成長は、経済的な利益だけにはとどまらず、社会全体の福祉の向上に寄与していると言えます。雇用創出、税収増加、産業の多様化、科学的研究への投資など、この産業がもたらす影響は多くの人々の想像を超えており、その価値は今後もさらに増大していくと考えられます。 

将来の展望 

カナダの大麻産業は、2018年の合法化以来顕著な成長軌道にあり、その将来性は非常に明るいものが見込まれます。この業界の進化は、消費者の動向、技術革新、規制の進化という三つの主要な要因によって牽引されてきました。これらがカナダの大麻産業が直面する課題と好機の要因となり、今後の成長戦略における鍵となります。 

技術進歩は、製品ラインの多様化と品質の向上を促進し、産業全体の効率と競争力を高めるでしょう。消費者ニーズの進化に応じ、非燃焼型製品やウェルネス志向の製品への需要が増大することが予想されます。これらのトレンドは、製品開発と市場戦略への新たな指針を提供します。 

規制フレームワークの適応能力は、産業の持続可能な成長を保証するために不可欠です。カナダ政府は、公衆の安全を確保しながら大麻市場の可能性を最大化するために、柔軟で前進的な規制環境を維持する必要があります。これにより、非合法市場の縮小と合法市場の拡大を促進し、経済全体への貢献をさらに拡大することが期待されます。 

国際展開が、カナダ大麻産業に顕著な成長機会をもたらします。世界的に大麻規制の緩和が進む中で、カナダの大麻企業は国際ビジネスのチャンスを追求し、グローバルブランドとしての地位を築くことが可能です。 

現在は成長を続けているカナダの大麻市場ですが、そこには高い税率があり、参入している企業とっては利益を上げることは簡単なことではありません。そのような事態を受けカナダのHouse of Commons(庶民院:日本の参議院にあたる)ではすでに税率の変更を推奨するrecommendation 329が提出されています。この改正案が現実となればカナダの大麻市場に参入する事業者の利益は大幅に増加すると想定されています。 

以上のことから、カナダの大麻市場は国内外の機会を戦略的に捉え、技術革新と消費者の嗜好変化に柔軟に適応することにより、持続的な成長を実現する見込みです。市場の発展には挑戦が伴いますが、これらの課題を克服することで、大麻産業はカナダ経済において重要性を一層高めていくでしょう。カナダ大麻産業の未来は、戦略的な洞察とそれらを実行することによって、さらなる発展の可能性を秘めています。 

Statistique Canada「Control and sale of alcoholic beverages and cannabis, April 1, 2022, to March 31, 2023」https://www150.statcan.gc.ca/n1/daily-quotidien/240306/dq240306a-eng.htm 

Statistique Canada「National Cannabis Survey, 2023」https://www150.statcan.gc.ca/n1/daily-quotidien/240318/dq240318e-eng.htm 

Ourcommons「FINA COMMITTEE REPORT」https://www.ourcommons.ca/documentviewer/en/44-1/FINA/report-16/page-18 

Forbes「Nearly 72% Of Canada’s Cannabis Users Buy From Legal Market, Survey Finds」https://www.forbes.com/sites/dariosabaghi/2024/03/19/nearly-72-of-canadas-cannabis-users-buy-from-legal-market-survey-finds/

Shinji

カナダ在住。大麻メディア兼大麻関連事業コンサルティングCJC Advisory Networkの創設者。同社は日本を拠点とするCBD企業と国際的なパートナーや投資家のネットワークとしても機能する。

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