スイス首都ベルン、コカインを合法的に販売する試験プロジェクトに向けた法案を可決

スイス首都ベルン、コカインの合法販売に向けた法案を可決

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6月1日、スイスの首都ベルンの市議会は、コカインを合法的に販売するプロジェクト実施に向けた法案を可決。ただし、この試験プロジェクトの実施にはスイスの連邦政府においても同様の法案が承認される必要があります。

最近ベルンは、連邦政府機関より嗜好用大麻の試験販売プロジェクトが承認されたことを発表。左派政党「オルタナティブ・レフト(The Alternative Left)」によって提案された今回の法案は、コカインでも同様のプロジェクトを実施できるようにするものです。

スイスのコカイン消費量はヨーロッパ内で最も多く、ベルン市はその中でも18番目に消費量が多い都市となっています(スイスのその他の都市では、チューリッヒが5位、ジュネーブが6位、バーゼルが7位を占める)。

嗜好用大麻の試験販売プロジェクトは、自治体による大麻の流通管理が社会や健康に及ぼす影響を調べたり、闇市場の大麻使用による害を最小化することなどを目的としています。ベルンの市議会議員の多くは、コカインについても禁止するのではなく「ハームリダクション」に基づいたアプローチのもと、自治体が流通を管理するほうが望ましいと考えています。

オルタナティブ・レフトの市議会議員であるエヴァ・チェン(Eva Chen)氏は「現在、抑圧的な薬物政策が進められています。これにより、麻薬の取引や消費は地下に追いやられています。その結果、管理することもできず、予防措置の可能性もなくなっているのです」と発言。

同じような法案は2019年にも提案されましたが、僅差で否決。今回の法案は、その法案をより限定的な内容にしたものです。右派の政党議員らを中心に「コカインの販売は連邦政府で規定されるべき」とした反対意見もみられましたが、同法案は最終的に43対18の賛成多数で可決されました。

ベルンの教育・社会・スポーツ担当理事のフランツィスカ・トイシャー(Franziska Teuscher)氏は、上記の反対意見に対し「各都市からの圧力により、政府は大麻のパイロットプロジェクトに同意したに過ぎません」と説明。同法案は、ベルンがこのような薬物政策に関心を示しているというシグナルを、スイスの他の都市や連邦政府に向け発信するものとしています。

ベルン市の動きに対し、早くもスイスの最大都市チューリッヒの議員が反応。同市のスイス自由民主党党首であるペルパリム・アヴディリ(Përparim Avdili)氏は「確かに、私たちの街でのパイロットプロジェクトは想像できるものです。それは確実に、経験を積むための良い試みとなるでしょう」と述べました。

近年、世界は薬物を犯罪とした「麻薬戦争」が失敗であることを認め、ハームリダクションによるアプローチのもと、薬物の問題を「刑事上の問題」から「公衆衛生上の問題」へとシフトする動きを見せ始めています。

米国ミネソタ州知事は最近、医療従事者の監視下で安全に違法薬物を使用できる施設の設立を支援する法案に署名。これはいわゆる「過剰摂取防止センター」の設立を公式に認めるものです。同センターは、違法薬物の使用に伴う感染や過剰摂取による死亡・救急搬送を防止することに加え、希望者に対しては医療・福祉サービスへのアクセスを提供することで、薬物使用者の命や健康を守ることを目的としています。

カナダのブリティッシュコロンビア州は現在、コカイン、ヘロイン、モルヒネ、フェンタニル、メタンフェタミン、MDMAの少量所持を非犯罪化する3年間のトライアルを実施中

また、オーストラリア首都特別地域では2023年10月より、コカイン、ヘロイン、MDMA、メタンフェタミンなど9種類の薬物の少量所持が非犯罪化される予定です

Schweizer Radio und Fernsehen「Berner Stadtrat will Pilotprojekt für kontrollierte Kokainabgabe」https://www.srf.ch/news/schweiz/legaler-verkauf-von-drogen-berner-stadtrat-will-pilotprojekt-fuer-kontrollierte-kokainabgabe

Swissinfo「Swiss capital city wants to test controlled sale of cocaine」https://www.swissinfo.ch/eng/business/swiss-capital-city-wants-to-test-controlled-sale-of-cocaine/48560562

leafie「Swiss capital, Bern, votes to legalise cocaine sales」https://www.leafie.co.uk/news/bern-switzerland-legalise-cocaine/

IamExpat in Switzerland「Legal sale of cocaine to be trialled in Bern」https://www.iamexpat.ch/expat-info/swiss-expat-news/legal-sale-cocaine-be-trialled-bern

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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